宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー(12月1-7日)
12月に入り、欧州ではEU関係の会合が目白押しだ。
今月後半はクリスマス休暇で忙しいからだろうか。 EUだけではない。実に判り易い人々だとつくづく思う。 労働組合だって EU官僚と同様だ。12月3日にはドイツの鉄道労働者が、 5日にはイタリアの労組がそれぞれストライキを決行する。毎度のことだが、西欧は労働者の天国だ。 その点、ロシアはしっかり働いている。1日にはプーチン大統領が
トルコを訪問する。 2010年に設置された「露土ハイレベル協力委員会」の第五回会合がアンカラで開かれ、 2020 年までに両国間貿易量を1000億ドルに拡大する案が議論されるという。しかし、貿易量よりも気になるのが、 中東情勢とロシアの関係だ。 トルコも大したものだ。
ウクライナ問題でロシアがあれだけ孤立する中、 アンカラはプーチンを堂々と歓迎する。 これも広い意味でのトルコの独自外交の一環なのだろう。 ちょうどその頃、ベルギー、スイス、 英国を訪問する米国の国務長官など眼中にないということなのか。 極めて興味深いタイミングではある。 1日に中国の国家統計局が発表した11月の製造業PMIは50.
3 となり、10月の50.8から更に低下したらしい。市場の予想は 50.6だったというから、それをも下回ったことになり、結果的には 8カ月ぶりの低水準だそうだ。新規輸出受注も 50を下回り、外需は伸びていない。中国経済の先行きに関する懸念は深まっているようにも見える。 他方、キヤノングローバル戦略研究所の同僚によれば、
中国経済の現状は、 不動産投資の伸び鈍化を中心に景気下押し圧力が存在しているもの の、物価が安定しているほか、財政・ 金融政策両面において景気刺激策発動余地が大きいことから、「 コントロール可能な範囲内」にある、のだという。 一体どちらが正しいのだろうか。 日本では2日に衆議院選挙が公示されるが、
一部議員については直前まで出馬する選挙区などの詳細について調 整が続いた。 住み慣れた地方選挙区から突然比例区に回ることになった議員はさ ぞ大変だろう。他人事ながら、同情を禁じ得ない。今週はこのくら いにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。 【あわせて読みたい】
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