[宮家邦彦]【中国最大の安全保障と防衛フォーラム開催】~アメリカ排除したアジア安全保障の枠組みに注目~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー(11月17-23日)
先週の原稿を書いた段階では、正直なところ、衆議院解散について書くことを躊躇した。当時何人かの政治評論家に話を聞く機会があったが、あの時点で現状を予測する向きは誰一人いなかったと記憶する。だから政治は怖いのか、面白いのか。
とにかく、日本は今週から総選挙一色となる。沖縄では現職知事が敗北し、7-9月のGDP速報値が悪いとなれば、かなりの激戦となるかもしれない。このカレンダーは外交・安保関連だから、総選挙の結果についての予測は行わない。
海外での今週の注目は18日からウィーンで再開されるイラン核協議だろう。これまで何度も書いているように、この協議に出口はない。あるのは失敗か、期限延長か、という非生産的な選択肢だけだ。しかも、この協議は永遠に延長出来るとも思えない。
恐らく今回は「数カ月程度の延長」に終わるのだろうが、仮に延長された場合でも、イランは「その次の延長はない」と思うべきだ。さもなければ、対イラン制裁は最低維持され、最悪の場合、強化される。どちらに転んでもイランに明日はないだろう。
20-22日に中国軍事科学学会主催で第5回香山フォーラムが開かれる。日本ではあまり注目されていないが、中国報道によれば、中国で開かれる最大の安全保障と防衛に関するフォーラムであり、日韓朝を含む57か国の防衛大臣が招待されるという。
同フォーラムはこれまであまり話題にならなかった。しかし、中国が米国を排除する形でのアジアの安全保障枠組を模索する意図が明らかになってから初めての会合だけにそれなりの意味があるかもしれない。
それにしても、日本の防衛大臣は本当に行くのだろうか。「香山フォーラム・防衛大臣」で検索したがヒットはなかった。2年前には「第4回香山フォーラムが11月16日、北京で開幕した」という記事が中国官製メディアにあった程度で、大した話ではない。
同記事によれば、「中国、ロシア、米国、フランス、ドイツ、日本など21カ国の安全保障、防衛関連の研究機関の代表、専門家と学者60人あまりがフォーラムに出席した」とあるから、閣僚級の参加はなかったということだろう。無視されているということか。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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