為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
努力、モチベーション、などの話をすると、大体ズレてくるのが、モチベーションの源は「怒り」なのか「遊び」なのかという事ではないかと思う。
前者は不満や嫉妬や野心で構成され、後者は楽しさや内発的動機や好奇心で構成される。
私の考えでは、怒り型エネルギーは激しく燃えて力が強く持続力がないのが特徴。反対に遊び型エネルギーは、激しくは燃えないけれど継続的に続くのが特徴。私は前者で人生の前半を突っ走り、終盤から実は後者が内在していたのに気づいたという感じ。
自分の人生の前半は、自らが世に認められていない事への不満、他者への嫉妬、野心で突き進んだように思う。そして初めてメダルを取った時、ふとどうすればいいのかわからなくなった。怒り型エネルギーは目的を達するまでは強いけれど、達してから弱い。
僕はさほど野心が強くなくだからメダルを取った時ふと我に返ってしまった。さあ、ここからどうしようと2年くらい彷徨って、ふと元々無邪気に走っていた事もあるのを思い出した。それからは遊び、無邪気さで走るようになった。内省はそこから始まった。
怒り型エネルギーが恐れるのは、内省、許し、客観視のように思う。自分が目指しているものが大したものではないと思うと、怒りはぶつける先を失ってしまう。遊び型エネルギーはやっている事に意味があるかどうかには頓着せず、楽しいかどうかが大事。
怒りはゴールが目的、遊びは今が目的。どちらのエネルギーでのぼる事もあると思う。ただ怒りの問題は、外に出る傾向がある為に、他人に同じエネルギーを求めたり、または成功しなかった怒り型の人がこじらせて、嫉妬の固まりになってしまう事のように思う。
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