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スポーツ  投稿日:2014/7/2

[瀬尾温知]<2014FIFAワールドカップ>オランダの楽隊とブラジル軍隊吹奏楽部の感動の演奏


瀬尾温知(スポーツライター)|執筆記事プロフィール

 

試合前日に27歳の誕生日を迎えたメッシが、鮮やかな直接FKを含む2得点と活躍し、アルゼンチンがナイジェリアに3対2で競り勝って、3連勝でグループFの1位通過を決めた。その試合が行われたのはブラジル南部の都市ポルトアレグレだった。

ポルトアレグレでは、フランスのエース、ベンゼマが2ゴール、アルジェリアは韓国を破って32年ぶりとなる歓喜の勝利をあげ、オーストラリア対オランダでは、時速37キロと計測されたロッベンの高速ドリブルからの得点や、ケーヒルが後ろからのロングボールをボレーシュートで決めたスーパーゴール、そしてメッシの2得点と、ワールドカップならではの名場面が多く見られた。

決勝トーナメントでは、ドイツ対アルジェリアの試合も組まれているので、クローゼが歴代通算最多得点でロナウドを抜く歴史的ゴールも目に出来るかもしれない。

日本代表が試合を行った北東部のレシーフェやナタウ、中西部のクイアバは冬でも暑い。しかし、アルゼンチンやウルグアイと国を接するリオグランデドスル州の州都・ポルトアレグレの冬の平均気温は約10度、冷えるときには氷点下まで下がり、去年は積雪も見られた。

サッカーをするには今大会の開催地の中で最適な気候だったことが、観衆を唸らせるスーパープレーにつながったと言える。 前述したアルゼンチンの試合には、白と水色のストライプを着たサポーターが大挙して応援に駆けつけた。国境、空港、すでに他の州にいた者どもが南下し、その総数は8万を超えていた。

ブラジルとアルゼンチンのサポーターは、互いを宿敵とみなし、ライバル意識が非常に強い。この日も歓楽街にあるバールでアルゼンチンのサポーターがブラジル人と口論になった末、銃で脚を撃たれるという事件があったが、市民の概ねは敵意を抱かずに歓待した。

旅費、宿泊費、娯楽費を払って大会を楽しむ人がいる一方、その大会に恩恵を授かって日々を食いつないでいる者もいる。31歳のセザールは、ワールドカップの期間中、特別な時を生きている。彼は住む家のない路上生活者で、ポルトアレグレの街の中心にある高架橋の下が寝床だが、FIFAから委託された会社に雇われ、試合会場の清掃員として働いている。

応募の条件は1つだけだったそうで、犯罪歴がないことだった。トイレ、窓、スタジアム内外の掃除が仕事で、夜中を含め1日12時間、週7日働き、月給にして800ヘアル(日本円で約3万7000円)。FIFA認証のIDは大層な貴重品で、紛失すると200ドルの罰金が科されるので、寝るときにも首からぶらさげている。

期間労働者のセザールは「何の特権もないよ。試合を観ることは出来ないし、チケットも手に入らない」と愚痴をこぼすが、世界最大のイベントに参加しているのに違いはない。

オーストラリア対オランダの試合前のスタジアム近くでは、オランダから来たブラスバンドとブラジル軍隊の吹奏楽部による即興の演奏で盛り上がった。上下オレンジ色のスーツで揃えた12人の楽隊は、トランペットとトロンボーンで合奏。ブラジル軍隊のタクトにメロディーをのせて奏でた「Aquarela do Brasil(邦題:ブラジルの水彩画)」は胸に沁み入った。

ワールドカップが訪れる度に思い出すことだろう。異国の者が息を合わせて1つになる光景に感動した。友人のルーラは、知人が録画した動画をメールで送ってきて「これぞワールドカップだ!」と興奮。その動画をご覧になりたい方は以下にアクセス。

https://www.facebook.com/photo.php?v=761123127243205

 

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【執筆者紹介】

seo_photo瀬尾温知(せお みつとも)

1972年東京生まれ。スポーツライター。

テレビ局で各種スポーツ原稿を書いている。著書に「ブラジ流」。 日本代表が強化するには、ジェイチーニョ(臨機応変な解決策)を身につけ、国民ひとりひとりがラテン気質になること。情熱的に感情のままに。

タグ瀬尾温知

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