<集団的自衛権と焼身自殺未遂>政治的決定を阻害するための「自爆テロ的手法」を学習してはならない
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
先日、新宿駅で男性が焼身自殺を図った。無事を祈るばかりだけれど、現段階ではまだ容態はわからないらしい。
それにしてもSNSはこういう時早い。事件の恐らくは最中から各所から映像が集められまとめられたサイトまでアップされていた。テレビにも新聞にもこれはできない。
男性が主張した内容が集団的自衛権だったから、メディアが報道しなかったんだと言っている人がいるけれど、違う理由の方が大きいと私は思う。まず、あまりに衝撃的な映像は東日本大震災でも避けていたから、今回も仮に撮れていてもそのまま流す事は難しかったのだと思う。
それにしてもこれで随分と集団的自衛権に反対する人達は難しい状況に置かれるように思う。彼の死を肯定するか、否定するか、それとも触れないか。同じ主張をしている人達の中で意見の違いから分かれていってしまう可能性がある。
もし男性の死を無駄にしないように活動が活発化して、本当に集団的自衛権を止められるような事があれば、私達は「自爆テロ的手法」を学習してしまう。つまり何か大きな政治的決定を阻害したければ、誰かが衝撃的な手法で死ぬのが効率的という学習。
なんらかの主張を持った自殺に意味を与える事は、今後、自殺をする動機を社会に残してしまうという事なのだと思う。何かを主張する為に誰かが犠牲になるしかないとなってもおかしくない。
人が犠牲を払っていく強い絵は心に残る。だけれどそれはやはり禁断の手法で、僕は認めない立場を取りたい。面倒くさくて時間もかかり腹立たしいかもしれないけれど、それでも対話して決めていく手法の方がましだと思う。
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