.社会 投稿日:2014/6/28
[為末大]<「老い」を感じることの意義>時間がないことを悟ってはじめて無駄を痛感する
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
アスリートは比較的「老い」を感じるのが早く、僕は25歳くらいの時に始めて自分が老い始めているのを感じた。ある朝いつもは回復しているはずの体が少し重たく感じられた。最初は気のせいだと思っていたけれど、段々と気のせいではないとわかりはじめた。
具体的には「10練習」したら「10回復」していたものが、9ぐらいしか回復しない。そのままのペースで続けるといつのまにか5くらい疲れがたまった状態になっていて、そうするとどこかに痛みが出るようになった。それでも意地で練習していた。
それでも明らかに若いアスリートと回復が違うのを感じて、徐々に自分は老いていっているから、若い彼らとは違うやり方、もっと賢くそして効率の良い方法を求めなければならないと考えるようになった。それからは「足す」よりも「引く事」に意識を置いた。
高校生から体操やフィギュアスケートを始めてオリンピアンになるのは極めて難しい。心持ちとして「可能性はある」というのはいいけれど、現実には人間の幅は生まれた直後から狭まり続けている。変わりに特化されていっている。
本当は「老い」が始まっていても、日常生活で実感するのは30代も半ばを過ぎてから。僕は「老い」を感じた時に、出来ない事がこれから増えていっていずれ死ぬんだと思った。そう感じてはじめて無駄な練習をやめる事ができた。時間がないと悟ってはじめて無駄を痛感する。
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