三木絵未奈(立命館大学・カナダ留学中)
みなさんは、2011年3月の震災で流された瓦礫がカナダの西海岸に漂着していることをご存知だろうか。一部報道では、約150万トンもの瓦礫が太平洋を漂流していると言われている。
科学者によると、潮流の関係で漂流物の多くが北米西海岸に到達するという。 実際に震災漂着物とみられるものが、アラスカやカナダの海岸などで発見された。そして、その漂流物が去年から本格的に北米海岸に漂着し始めている。1年前、日本政府は海岸清掃資金として約1億円をカナダに寄付した。
カナダには、震災直後に募金に協力してくれたカナダの人々へ恩返しがしたい、と去年から海岸清掃ボランティアを開始した日本人団体(Japan Love Project 以下JLP)が存在する。
「愛つなぐプロジェクト」と題された今回のプロジェクトへは日本全国から約200万円以上もの資金援助と応援の声が寄せられた。
今回は分別作業を除く作業期間2日間で約10トンもの漂着物が回収されたという。その中には破損した漁船の一部と見られるものや漁村センターと書かれたスリッパなどがあり、被災地から流れ着いたものだと予測できる物が多くあった。
また、津波の被害を受けた宮城県山元町と記載された杭も発見され、日本人学生たちの手によって大事に日本に持ち帰られた。 今後、被災地に返還する予定だそうだ。
このように、この清掃活動はカナダの海岸をきれいにするだけでなく、漂着物の中から発見された被災地の方の大切なものを手元に返すという目的もある。今回行動を起こした学生と現地スタッフの熱い思いとその姿は、多くの日本人の心を打ったに違いない。
しかし、この現場は交通アクセスが大変悪く、国有地となっているため一般の人は現地の人の力を借りなければなかなか足を踏み入れる事が出来ない。また、舗装されていない足場の悪い海岸で清掃活動を行う危険性も懸念されるなど、今後の課題は多い。
そんな活動に追い風が吹いたのは今年3月の活動直前。カナダのブリティッシュコロンビア州政府は、ユークレット地域が海岸清掃活動のために約800万円の寄付を受け取ることを発表した。それによって今後、清掃活動への参加者の安全が確保できる環境整備が進み、この活動が大規模になることを期待したい。
震災の影響が3年の時を経て今なお、海外にまで及んでいることを私たち日本人は知っておかなければならない。日本人は今こそ、震災時に世界中からの受けた支援への恩返しをする時ではないだろうか。
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