[三木絵未奈]【男女平等社会へ近づかぬ日本】~まず、ジェンダー教育の充実が必要~
三木絵未奈 「三木絵未奈の異国の地で日々、奮闘中!」
先月20日、ハリーポッターの映画でおなじみの女優エマ・ワトソンがニューヨークで行われた国連の会議で男女平等への働きかけを訴えるスピーチを行った。また、同月23日にも安倍昭恵夫人がワシントン市内での講演で女性の活用について述べるなど、男女平等社会への動きに注目が集まっている。
しかし、エマ・ワトソンのスピーチが日本で初めて取り上げられたのはその3日後。遅すぎるというより、海外で話題になっているから日本でも取り上げた、といったところだろうか。世界を感動させたスピーチだったにも関わらず、日本ではあまり話題にもならなかったという。もっとも、彼女が強調しているフェミニストという言葉自体が日本人にとってあまりなじみのない言葉のように思う。
“フェミニストとは男女平等の社会を目指す意思のある人を意味する言葉であり、決して男性を嫌っている女性の事ではない”と彼女は強調する。以前の記事でも述べたように、2013年に発表されたジェンダーギャップ指数ランキングで105位の日本に対しカナダは20位。日本は「経済活動への参加と機会」、「政治への関与」の2つの項目でカナダを大きく下回り、特に「政治への関与」に関してはカナダの数値の3分の1であった。私はこの数値の根本にあるのはジェンダー教育の差だと考える。
カナダでジェンダー学や女性学の授業が開講されている大学の割合はカナダの短期大学、4年制大学を含めた71校のうち約9割。一方日本は1000校以上の短期・4年制大学数を誇りながら約5割にとどまった。(※1)
私は現在留学先の大学でジェンダー学を受講している。内容は、書物や映像、ニュースなどを通して性・ジェンダー・人種といった様々な側面からそれらを分析し、社会的構造や歴史的背景によって生まれ、現在も存在する差別やその問題点を議論し合うといったものだ。全ては問題に「気付く」事から始まる。
授業はそれぞれ分野・レベルごとに分けられており、開講授業数はジェンダー学だけで30クラス以上にもなる。受講しているのは約8〜9割が女子生徒、1〜2割は男子生徒だ。授業中は教授や学生同士で熱い議論が交わされる。
このようにカナダにはジェンダーについて学ぶ環境が整っており、学生の頃から男女の社会的性差別や歴史的背景について考え、議論する機会が設けられている。
一方日本では、ジェンダーについて学びたいと思っても、授業を開講している大学探しから始めなければならないのが現状だ。また、ジェンダー学を性教育だと勘違いしている学生もいると聞く。「ジェンダー」とは社会的に構築された性別や性差を意味し、生物学的性別を意味する「性」とは異なる。私は実際にカナダで受講し、ジェンダー学がいかに男女平等社会の構築に必要であるかを感じた。
今日本に必要なのは、ジェンダーについて学べる環境だ。ジェンダー教育を充実させることができなければ、女性リーダーを増やすことはもちろん、今後日本に男女平等社会が来る日は遠いだろう。
※1 資料 Women’s and gender studies、女性と男性に関する統計データベースより
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