[安倍宏行]<解放食堂 in 名古屋>「お上頼み」ではない、若者たちの新しい震災復興支援のカタチ
Japan In-Depth編集長
安倍宏行(ジャーナリスト)
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映像ディレクター笠井千晶さんが福島の被災農業従事者に密着したドキュメンタリーが流れ、食い入るように映像を見つめる眼差し。福島出身のアーティストsista akiさんの歌声が響きわたる中、キャンドルの灯りと共に揺れる身体。
去年春、東日本大震災の被災地を元気付けよう!と自然発生的に始まった「解放食堂」の今年第1回目が名古屋で22日に開催された。
今回もまたいい意味で予想を裏切る大盛況となった。前回大阪での開催を企画した時、関西ではあまり関心が高くないし、そういった被災地支援のイベントに5000円も出して参加する人はいない、とまで地元の人に言われたが、蓋を開けてみれば180名以上の若者が集まった。
今回も3連休の中日という不利な条件ながら、募集当初こそ、出足が鈍かったものの、当日は120名をゆうに超す人が集まった。そして、今回も若者がほとんどだった。 よく、若者はしらけている、とか、やるべき事が見つからないモラトリアムだ、との声を聞くが、決してそんなことはないと実感している。
連続起業家・家入一真氏と、コンテクストデザイナー・高木新平氏が、風評や風化に悩む被災地を、東北の食と酒を楽しむことで元気付けよう、という趣旨で始めた「解放食堂」。それが今、各地の若者のボランティアの手で、次から次へと開催されているからだ。今回も20代のボランティアが名乗りを上げ、ゼロからこのイベントを立ち上げ運営した。自らスポンサー探しに奔走し、寄付の相手先として被災地の支援団体を探してきた。福島県南相馬市で、菜の花を植えて土中の放射性物質の除去に取り組んでいる団体(注1)だ。収穫された菜の花の種から菜種油が取れるだけでなく、燃料などにも再利用できる。
こうした地道な活動は大手メディアでは中々報道されないが、今回このイベントに来た人は新たな気付きがあったのではないだろうか。
会場で知り合った若者の中には、自分の町や市で、こうした支援活動を開催したい、と言ってくる人が少なくなかった。震災から3年、熱い思いを持っている人は想像していた以上に多い。
小さな活動が共感を呼び、出会った人と人が有機的に結びつき、新たな活動が生まれ、そして自律的に育っていく。決して「お上頼み」ではない、新しい支援のカタチが更に広まって行く事を確信した夜だった。
(注1) 特定非営利活動団体 チェルノブイリ救援・中部 HP
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