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.国際  投稿日:2016/4/7

束縛脱した三船美佳が娘を縛る皮肉(中)「パパといっしょ」と「パパが怖い」


岩田太郎(在米ジャーナリスト)

「岩田太郎のアメリカどんつき通信」

前夫である歌手・高橋ジョージ(57)との「円満」離婚に成功したタレント・三船美佳(33)は、離婚条件として、ひとり娘の蓮音(れんおん)ちゃん(11)の人生から父・高橋を完全に排除する単独親権を主張し、それを手に入れた。

離婚会見で三船は、蓮音ちゃんが歌手になると言い出したら、「精いっぱい応援します」と述べ、「(歌手である)お父さんが先生になってもか」と聞かれ、「いいんじゃないですか。選ぶのは娘ですから」と言い切った。

しかし実際、父の高橋は蓮音ちゃんに会うことを許されず、年2回のみ、三船が送る娘のカラー写真で満足しなければならないという、極めて残酷な条件を受け入れている。三船側は、「和解成立後から1年間を目安に娘との面会交流ができるように互いに努力をする」という、拘束性の弱い条項に縛られるだけだ。

三船の代理人を務めた日本弁護士連合会(日弁連)元副会長・東京弁護士会元会長の辣腕弁護士、若旅一夫氏(66)が主張し、裁判所が承認したこの「合意」により、三船は娘の対人関係の全面的な支配権を手中にした。

高橋の「モラハラ」による自由の束縛を裁判の争点にした三船その人が、これから思春期・自立期を迎える11歳の娘の家族内の対人関係を、完全束縛している。三船が与える世界以外の価値観を蓮音ちゃんが知ることに怖れを抱き、娘が自分で正しい解釈や判断ができる一個の人格として信頼していない。

インターネット上に、蓮音ちゃんが6歳の時に描いた仲の良い父娘の絵、「パパといっしょ」の画像が出回っている。とても6歳の子供の作品とは思えない写実的で立派な絵だ。蓮音ちゃんが高橋のひざの上に乗っているのか、彼女の顔のすぐ後ろにいつものリーゼントを決めた父の満足そうな顔があり、父娘の信頼関係の強さと、この題材を選んだ娘の父親に対する愛情の深みを示している。

この作品の中で、蓮音ちゃんはイタズラそうな表情を浮かべ、何かのお菓子を舐めようとして、舌を突き出している。6歳当時の自画像に描かれた彼女はすでに、美男美女の父母の特徴を受け継いだ、おませな感じのべっぴんさんであり、信頼するパパと「いっしょ」である安心した表情が印象的だ。

ところが、離婚「勝利宣言」を出した会見で裁判当事者の三船は、「(蓮音ちゃんに)『離婚が終わったよ』と伝えたら『良かったね』って。『おめでとう』って。すごく喜んでいると伝えてくれました。母親として申し訳ないなと。娘をしっかりと守っていこうとあらためて思った」と、娘の言葉の伝聞を記者に語った。

また、三船側によるリークと思われる一部の報道では、三船側が提出した録音あるいは録画による裁判証拠で、蓮音ちゃんが、「高橋には二度と会いたくない」と、母親の主張を裏付ける証言をし、「怖かった」と訴えていたという。

しかし、あの微笑ましい「パパといっしょ」から、一体何が起こって「パパが怖い」「二度と会いたくない」「離婚、おめでとう」になったのだろうか。そのあまりに極端な変化に、娘の依存を利用する裁判当事者の母親や、「120%依頼者の方に喜んでもらえるよう、納得してもらうことを心がけている」ことを公言する老獪な若旅一夫弁護士の法廷戦略が絡んでいないだろうか。

依存する対象である親に見捨てられることを何より怖れる子供は、その依存対象を喜ばせようとする言動をすることは、広く知られている。

筆者の母親は、筆者が小中学生であった頃、離婚しようとして、筆者が愛する父親の悪口を散々吹き込んだ。筆者は、本心では両親に別れてほしくなかったのだが、母親を喜ばせたい一心で、父親の面前で、父親が悪魔のような人物だと言うようになった。根拠はなかった。人生で、悔やんでも悔やみ切れない罪悪感と無力感の残る時期であった。

父か母か、どちらかを選ばなければならない究極の選択を、愛する母の三船に迫られた蓮音ちゃん。彼女がどれほど、現在の依存対象である三船の気持ちを忖度し、それによって行動しているのか、第三者や専門家による検証が必要だ。

束縛脱した三船美佳が娘を縛る皮肉(下)娘はやがて母の束縛を破る に続く。束縛脱した三船美佳が娘を縛る皮肉(上)高橋の「支配」と三船の「支配」 の続き。全3回)

 


この記事を書いた人
岩田太郎在米ジャーナリスト

京都市出身の在米ジャーナリスト。米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の訓練を受ける。現在、米国の経済・司法・政治・社会を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』誌などの紙媒体に発表する一方、ウェブメディアにも進出中。研究者としての別の顔も持ち、ハワイの米イースト・ウェスト・センターで連邦奨学生として太平洋諸島研究学を学んだ後、オレゴン大学歴史学部博士課程修了。先住ハワイ人と日本人移民・二世の関係など、「何がネイティブなのか」を法律やメディアの切り口を使い、一次史料で読み解くプロジェクトに取り組んでいる。金融などあらゆる分野の翻訳も手掛ける。昭和38年生まれ。

岩田太郎

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