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.国際  投稿日:2026/2/27

オーストラリアのサンゴ礁は元気いっぱいで気候危機には程遠かった


杉山大志(キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹)

 

【まとめ】

・気候変動によって消滅すると言われてきたオーストラリアのグレートバリア―リーフは、いま観測史上最高の状態にある。

・そのサンゴを見に行った。少し深いとサンゴは青く沈んだ色になってしまう。カラフルな映像は照明や加工などによる人為的なものである場合も多い。

・グレートバリアリーフに関する海洋科学は気候危機説によって歪められている。

 

オーストラリアへ行く機会を得た。東北部の都市であるケアンズに入り、グレートバリアリーフのサンゴ礁を見てきた。その前日に、かねてから尊敬していた専門家のピーター・リッド氏が空港に迎えに来てくれて、半日に渡って話し込んだ。

 

ピーター・リッド氏は、グレートバリアリーフが気候変動によって危機にさらされているという「気候危機説」が誤りであることを指摘し、著書や動画などで情報を発信してきた。下記動画は氏のユーチューブチャンネルのものだ。

「Great Hope for The Barrier Reef」 -Reef Rebels

https://www.youtube.com/watch?v=1vzV_IuIAlA&t=100s

 

グレートバリアリーフが地球温暖化によって危機にあるという研究は幾度となく報道されてきた。例えば、2020 年に英国の公共放送局 BBC はこう報じた。

 

「オーストラリア東海岸にある世界最大のサンゴ礁『グレートバリアリーフ』で、サンゴが1995年と比べて半分消滅していることが、最新の研究で明らかになった。気候変動の影響とみられる」。

 

これは2010年代前半のデータに基づいた報道のようだが、ではその後、これはどうなったか? 図に示すようにV字回復したのだ。今やグレートバリアリーフのサンゴは過去最高水準の状態にある。気候変動によってサンゴが死滅したという見解は見当違いだった。

図:拙著「データが語る気候変動問題のホントとウソ」より

 

この図の縦軸は「サンゴ被覆」である。これは、調査対象となる海域の海底内でサンゴが覆っている比率のことである。これが観測史上での最高記録を更新した。

 

サンゴ被覆について補足しよう。サンゴ礁の海底というのは、すべての面積が生きたサンゴで覆われているわけではない。砂地になっていたり、岩になっていたり、海藻が生えていたりする。あるいは死んだサンゴ、白化したサンゴもある。サンゴ被覆は、サンゴ礁がどれだけ繁栄しているかの指標となる。

 

この調査の標準的な方法は、ダイバーが海に潜り、船からロープでけん引してもらい、目で見てサンゴ被覆の割合を判断するというもの。

 

図の元データは、オーストラリア海洋科学研究所(AIMS)のものだ。しかし、この図は、研究者であるピーター・リッド氏が作成したものだ。なぜ、AIMS の図表ではないのだろうか?

 

データは確かに AIMS によるもので、サンゴ礁の上を何千 km も船でダイバーを引きずり、調査して集めたデータである。ところが、AIMSはそのデータを集計して発表しない。そこで、そのデータをピーター・リッド氏がまとめて作成し公表した。

 

実は、サンゴ礁の状態が悪かった 2012 年ごろまでは、AIMS はこのような図を発表し、サンゴ礁が衰退しているとしきりに嘆いていた。だが、その後トレンドが逆転すると、AIMSはこのような図を出さなくなった。気候危機説に都合の悪い図を隠しているのだ。

 

ピーター・リッドは、それはフェアではないとして、このような図を毎年作成し公表してきた。だがそのせいで、環境運動家に目の敵にされ、勤めていたジェームズ・クック大学の職も追われる羽目になった。

 

サンゴ礁については、海水温が上昇すると白化しやがて死滅するとか、あるいは大気中の CO2 濃度が高くなって海洋が酸性化すると死滅するといった意見もあり、しばしば報道されている。しかし、グレートバリアリーフを見ると、白化したことがあっても回復し、CO2濃度上昇と全く関係なく繁栄している。

 

図では、過去に大きくサンゴ被覆が減少した時期があった。その理由は、白化もあったが、サイクロンによる破壊やヒトデによる食害もあった。だが、そのたびにサンゴはたくましく、短期間で回復してしまった。

 

筆者は、ケアンズを出発してグレートバリアリーフを見に行った。アウターリーフといって、ケアンズの沖合に、高速なクルーズ船で1時間半ほどかけて行くところである。午前中に停泊した箇所は、やや深いところで、サンゴの色は青く沈んでいた。残念ながらそれほど綺麗なものではない。 船の揺れもひどくて、船酔いの人が続出し、ムードは下がる一方であった。 

 

だがその後移動して、午後に停泊した場所は、浅くて波も静かであり、大きくて立派な、目の覚めるようなカラフルなサンゴをたくさん見ることができた。たちまち船の人々は一気に盛り上がり、大喜びだった。このような風景が南北2000キロメートルにもわたって続いているということは、全く奇跡的なことだ。

 

ケアンズに戻ると、ピーター・リッドからメールが来ていた。サンゴ礁が思ったほど綺麗ではなく、がっかりして、気候変動のせいだと思い込む人がいる、という。だがこれは、映像のマジックによるところが大であるとのこと。つまりテレビの映像では、強い光を懐中電灯で当てたり、色の修正をしたりする。 そうするとサンゴはカラフルに映る。ところが、実際のサンゴ礁では、赤い光は浅いところで吸収されてしまうから、ちょっと深いところでは青く沈んだ色にしかならない。

 

また浅いところであっても、本当に綺麗な色になるのは、実は白化した直後なのだという。サンゴが白化した後、その回復期には、蛍光色も伴った、色とりどりのサンゴが発生するという。 ちょうどこの話が、午前に見たサンゴの青く沈んだ色と、午後のカラフルな色の経験と一致しているように思えた。

写真:少し水深があるとサンゴは青く沈んだ色になってしまう。(筆者撮影)

 

ピーター・リッド氏はいま、半分は引退しているが、独立の研究所で「科学の健全性」を高める活動をしている。オーストラリアの海洋科学については、グレートバリアリーフが気候変動のせいで危機にあるというナラティブ(物語)が支配的であり、それに沿った研究が多く発表されるが、研究者はそのような発表をすることで予算や昇進などの利益を得る構造になっている。またグレートバリアリーフへの個人的愛着も強い。このために、研究における科学的な健全さが犠牲になっているという。改善案の一つとして、「最新の発見をする研究」だけではなく、「追試研究」にこそ多くの予算を割いて、研究の再現性を高めるべきだ、などの提言活動をしている。

「データが語る気候変動問題のホントとウソ」

 

トップ写真:2024年10月21日-オーストラリアのグレートバリアリーフで撮影されたサンゴの全体

出典:Getty Images for Sheba




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