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.国際  投稿日:2016/4/7

束縛脱した三船美佳が娘を縛る皮肉(下)娘はやがて母の束縛を破る


岩田太郎(在米ジャーナリスト)

「岩田太郎のアメリカどんつき通信」

前夫であるロック歌手・高橋ジョージ(57)と離婚し、さらに長女の完全な単独親権を勝ち取ることに成功したタレント・三船美佳(33)は、現在、人生の絶頂にいるように見える。すべては、彼女のコントロール下にあるように映る。

高橋の束縛を破るため、ひとり娘の蓮音(れんおん)ちゃん(11)の高橋との関係を束縛し、コントロール感に浸っているのだ。その他者への支配を追究する生き様は、米国人の歌手マドンナ(57)のライフスタイルと深く重なる。

マドンナは、英国人の前夫で映画監督のガイ・リッチー(47)と結婚する際、書面の婚前契約で、夫の行動を細かく規定して縛り、「コントロールされた結婚生活」を強いた。

離婚後も、親権を得て米国に居住していた息子のロッコ君(15)を完全なる自己のコントロール下に置こうとして、世界ツアーに常に帯同させ続けた。四六時中、監視せねば気が済まないのである。そこには、愛息への信頼感や人格の尊重がない。子を完全に支配する親は、自分を信頼できていない。

そうした生活に耐えられなくなったロッコ君は、英国に住む父親の許に逃げ、母親の元に戻ることを拒否している。米英両国が加盟する国際間の子供連れ去りを防止するハーグ条約では、ロッコ君を元の居住国である米国に戻さねばならない。だが、そのような米裁判所の命令が昨年12月に出ても、彼はマドンナの許に戻ることを拒否した。英国では15歳の子供の意志は尊重されるため、ロッコ君は母のコントロールから解放される18歳まで、英国に住み続けるだろう。

母の三船と住む蓮音ちゃんは、聡明で才能豊かなお嬢さんであると聞く。テレビやネットニュースなど、メディアで伝えられる自身の両親の離婚騒動や、双方の主張を知らないことはないだろう。そこで三船側から繰り返し刷り込まれる「モラハラの高橋」像を、真実とは関係なく恥ずかしく思い、今は父親との距離をとりたいと考えても不思議ではない。

だが、高橋が三船をコントロール出来なくなったように、三船も蓮音ちゃんをコントロール出来なくなる日が遠からずやってくる。蓮音ちゃんは、一個の人格だからだ。ロッコ君のように、子には、親の都合のために利用されることへの怒りが思春期・自立期に湧き上がることが多い。親が自分の価値観を絶対化するあまり、別個の人格として子を信頼せず、年相応に独立させないことへの憤りが、抑えられなくなる。

高橋は、自身を「怖がっている」とされる娘に対し、「『パパに会いたい』と思ってもらえるようなパパになるのが、今の目標」だと語った。その日は、案外早くやってくるかも知れない。

三船の母である女優・喜多川美佳(67)が、三船の父の大俳優・故三船敏郎の認知症介護を、正妻である女優・故吉峰幸子に投げ返した如く、思春期・自立期になった蓮音ちゃんが手に負えなくなった時、三船が音を上げ、高橋に投げ返す可能性は高い。必ず高橋が必要とされる日が来る。

高橋は離婚後、再婚の可能性に触れ、「子供がもう一人ほしい」と語ったが、愚かである。高橋に今必要なのは、会えなくなった蓮音ちゃんへの絶対的な忠誠と、自身の三船に対する束縛への反省と、娘の受け入れ準備だ。

大阪に住む蓮音ちゃんが、「やっぱし、パパがええ」と、東京の自宅に転がり込んでくる日に備えなければならない。その時、娘の人格を尊重し、無条件に信じてやれるのは、高橋しかいない。

折しも、千葉家庭裁判所松戸支部の庄司芳男裁判官が3月下旬、母親によって約6年間、父親から引き離されていた小学2年生の女児に関し、「月1回、2時間程度、監視付きで父と子の面会を認める」と提案した母親の主張を退け、「隔週末の48時間を基本に、ゴールデンウィークや年末、夏休みには1~2週間連続での交流を認め、年365日のうち、100日を母親に与える」寛容なプランを立てた父親に、親権者を変更した。

子の最大の利益は、両親が争うことではなく、子を信頼し、子のため心を合わせて協力することだ。それが、高橋・三船離婚騒動の最大の教訓である。

(了。束縛脱した三船美佳が娘を縛る皮肉(上)高橋の「支配」と三船の「支配」束縛脱した三船美佳が娘を縛る皮肉(中)「パパといっしょ」と「パパが怖い」 の続き。全3回)


この記事を書いた人
岩田太郎在米ジャーナリスト

京都市出身の在米ジャーナリスト。米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の訓練を受ける。現在、米国の経済・司法・政治・社会を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』誌などの紙媒体に発表する一方、ウェブメディアにも進出中。研究者としての別の顔も持ち、ハワイの米イースト・ウェスト・センターで連邦奨学生として太平洋諸島研究学を学んだ後、オレゴン大学歴史学部博士課程修了。先住ハワイ人と日本人移民・二世の関係など、「何がネイティブなのか」を法律やメディアの切り口を使い、一次史料で読み解くプロジェクトに取り組んでいる。金融などあらゆる分野の翻訳も手掛ける。昭和38年生まれ。

岩田太郎

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