[Japan In-depth 編集部]【「原発ゼロ」はやればできる】~福島県で小泉元首相、語る~
Japan In-depth 編集部 (Mika)
小泉元首相が雪国で吠えた。東日本大震災・福島原子力発電所事故から4年を迎えた2015年3月11日、福島県喜多方市で、元内閣総理大臣、一般社団法人自然エネルギー推進会議の発起人代表小泉純一郎氏の講演会が開かれた。
原子力に依存せず、再生可能な自然エネルギーを「地域内で資金を循環させ、地域の自立を実現する」という理念の元に2013年に設立された会津電力株式会社が講演会を主催した。題して「日本の歩むべき道」。
言わずもがなだが小泉氏は、東日本大震災後に、同じく元首相細川護熙氏と共に一般社団法人自然エネルギー推進会議を立ち上げ、原発ゼロの日本の実現を訴え続けている。
大吹雪に見舞われた講演会当日、交通機関のダイヤが乱れる中、会場にはおよそ950人が詰めかけほぼ満席となった。冒頭行われたパネルディスカッションでは、再生可能エネルギー先進国である欧州の現状とその可能性について活発な議論が交わされた。
続いて行われた講演で小泉氏は、「総理在任中は原発を推進していながら、今度はゼロにするとはあまりにも無責任じゃないか、と批判もされる」としながら、「当時、専門家から原子力はなくてはならないと教えられ、真に受け、経済成長も考慮して推進してきた。しかし、専門家達が言っていたその必要性とは全部うそだった」と述べた。
その上で小泉氏は、この「うそ」は大きく分けて3点である、と指摘した。それらは、原発は 1)安全 2)コストが最も安い 3)クリーンエネルギーである、というものだ。
日本だけではなく、過去50年間の間に世界で3つもの原発事故による取り返しが付かない大惨事が起こっているにも関わらず、(日本が)安全とはどうゆう意味なのか明確でない、と小泉氏は指摘した。
又、小泉氏は、「日本は世界でも原発安全基準が一番厳しいと言われているが、その基準は国民に十分に説明されているとは言えない」と述べると共に、「日本の原発は一番テロ攻撃にも狙われやすいと世界中も言っている」と日本の原子力発電所のセキュリティーにも疑問を呈した。
さらに、「(原発ゼロを)やればできるのにやろうとしない」、「判断力が落ちている」と安倍政権を批判した。一国の指導者である安倍首相が、「(原子力発電について)やっぱり状況は変わっていない、安全ではない、コストも安くない、クリーンでもない、やっぱゼロにしよう、といえば、自民党も、野党も(原発ゼロ推進に)協力するよ。」と小泉氏は述べた。
また、日本は再生可能エネルギーというものを活用できる環境がととのっているのに十分に活用できていないのが「勿体ないし、惜しい」と残念そうにつぶやいた。
「日本はいつもピンチをチャンスに変えてきた。敗戦後、東京大空襲、広島、長崎に原爆が落とされても、300万人以上が戦争で尊い命を落としても、屈しなかった」と述べ、日本の底力を強調すると共に、今後も原発ゼロへ邁進して行く決意を表明した。
会津電力は昨年太陽光発電所の運用を開始、市民ファンドや地場の金融機関の融資などを得て設立された。代表の佐藤彌右衛門氏は福島県は原発に頼らずとも再生可能エネルギーによる電力で十分需要を賄えると主張している。2月には飯館電力が同じく太陽光発電を開始した。
こうした中、政府は再生可能エネルギー固定価格買取制度の見直しを進め、太陽光発電の買い取り価格が引き下げられた。その為、福島で進んでいるエネルギー地産池消の動きにブレーキがかかる可能性も否定できない。震災から丸四年。政府は福島県含め被災地の事情を十分考慮して、新たなエネルギー政策を立てるべきだろう。