[関口威人]【「西日本大震災」へ備えよ】~過去の災害の教訓、課題を忘れるな~
関口威人(記者)「関口威人のグローカリズム」
この年末に長野県をめぐった。名古屋周辺のライターやカメラマンらと。そのうちの1人は、親戚が御嶽山の噴火に巻き込まれ、今も行方が分からない。発生当初、「取材でなく関係者として来るなんて…」と落ち込みながら現地に詰めていた。それから3カ月、いまだに噴煙を上げる山を見上げる献花台で手を合わせ、控えめにカメラのシャッターを切っていた。やるせない気持ちが垣間見えた。
一緒に連れてきた私の小学生の息子と娘は「ここがテレビに出てた山?」と驚く。でも、献花台の前で手を合わせるやいなや、目の前に広がる白銀の世界に駆けだして雪遊びに興じていた。残酷で美しい、自然そのものの姿だった。
長野県は7月に南木曽町の土砂災害、9月に御嶽山噴火、11月に白馬村など北部がM6.7の地震に見舞われた、災害続きの1年だった。特に11月の長野県北部地震は、規模こそ小さかったものの、列島東西の中心軸である糸魚川-静岡構造線断層帯の一部が局所的に強く動いた。
活断層の専門家である名古屋大学の鈴木康弘教授は「これまで考えられていなかった断層の動き」とした上で、「東日本大震災以降、日本列島の地震活動が東日本から中部、そして西日本へと移っている」と断言した。「原発震災」を指摘していた神戸大学の石橋克彦名誉教授が警告する、南海トラフ巨大地震によって引き起こされる「西日本大震災」が現実に近づいてきているとも言えるだろう。
災害は常に社会の弱いところ、盲点を突いてくる。8月の広島土砂災害でもそれは如実に現れた。遅れがちだった土砂災害の警戒区域や特別警戒区域指定を早急に進めるため、国は土砂災害防止法を改正せざるを得なかった。
6月に閣議決定された国土強靱化基本計画では「ハード対策とソフト対策の適切な組み合わせ」「既存社会資本の有効活用等による費用の縮減」などの項目が並ぶ。だが現状では、「強靱化」という言葉のイメージ通り、ハード面の整備以上にソフト面の具体的な方向性や成果が見えてこない。
2015年は、ハードとソフトのバランスをいかに取るかを国全体で考え、両輪で進める年にするべきだろう。
阪神・淡路大震災から20年の年でもある。震災をきっかけに孤立化、高齢化した人々をどうケアし続けるか。多様で重層的なNPO、ボランティアをさらに育てられるか。海外との連携は-。20年で見えてきた課題は多い。その教訓を見つけに、また神戸に行くつもりだ。
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