《『高市外交の一年を診る』》その2 中国の本音を引き出した
執筆者:古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」1110回
【本稿のポイント】
・筆者は、中国の対日敵性政策として、日本の求める国際秩序の否定、日米同盟への反対、尖閣諸島など日本の領土の奪取の構え、共産党一党独裁による日本の主権在民・複数政党制の否定、「抗日」の名の下での反日政策の5点を挙げる。
・中国がこうした敵性を実際の言動によって露わにしたことで、「日中疑似友好」の時代は閉幕して日中関係は新時代に入ったとし、筆者はこれを招いたのは高市首相の外交の成果だと評価する。
・高市政権は、関税政策やホルムズ海峡防衛協力要請などでトランプ政権と意見の差異はあるものの、日米同盟の堅持と強化には成功してきたと筆者は評価する。
では中国の日本に対する敵性政策とは具体的になんなのか。
第1には日本の求める国際秩序の否定である。
日本はアメリカ主導の自由民主主義、人権尊重、法の支配という原則の世界の保持を求める。だが中国は社会主義的な中国的な世界を求める。いまの国際秩序の打破である。
第2には中国は日本の国家安全保障の基礎となる日米同盟に反対する。
日本を含む東アジアにアメリカ軍が駐留することにも反対である。日本が日米同盟を強化するような措置をとることにはとくに激しく反発し、否定する。日米共同のミサイル防衛網の構築はその典型例だった。
第3に中国は日本の領土を奪取しようとする。
日本固有の領土の尖閣諸島を統治の歴史が皆無なのにかかわらず、中国は自国領土だと主張する。尖閣周辺に海底油田の存在が指摘された直後からの唐突な領有権主張だった。中国はしかも武装艦艇を日本の領海や接続水域に常時、侵入させ、武力奪取の構えを崩さない。さらには沖縄の日本の主権をも認めない。
第4には中国は共産党一党独裁の政治体制を保ち、日本の主権在民、複数政党制を否定する。
中国は競合する複数政党の存在を許さない。行政、立法、司法という自由民主主義の根幹たる三権分立も認めない。中国側には立法機関と称する「全国人民代表大会」という組織があるが、日本の国会とは根本が異なる。そのメンバーは国民の選挙ではなく、共産党の指名で選ばれるからだ。
そして第5には中国共産党の年来の「抗日」の名の下での反日政策である。
同共産党は日本の軍国主義勢力を倒して、中国人民を初めて解放したことこそ自分たちの最大の実績だと誇示する。だからこそ永遠に一党独裁の統治を続ける正当性があるのだと主張する。そのためには若い世代にも日本の残虐行為だけを強調する教育を続ける。全土の各地に日本の惨酷な殺戮を誇大に示す展示を築く。毎年9月始めに天安門で開く「抗日勝利」の大集会もその反日のシンボルである。
中国のこうした日本敵視の現実はいまこそ陽光の下にさらけ出された。中国政権が敵性にあふれた実際の言動によって、多くは水面下に隠されてきた対日政策の根幹を明示したのだ。だから日中関係の新時代の幕開けとさえ呼べる。
この新展開は日本にとって隣の大国の真実を知る好機である。現実を多様な美辞麗句を使ってまで覆ってきた「日中疑似友好」の時代の閉幕だともいえる。こうした中国の現実の姿を日本国民に正面から認識させる展開を招いたのは高市早苗首相の外交の成果だといえよう。
次にアメリカとの関係をみよう。
いまの日本国内では主要メディアとそこに登場する「識者」とされる人たちの多くはトランプ大統領を批判する。悪口雑言とも呼べるような粗雑な攻撃も珍しくない。だがそんな流れの中で高市首相自身はトランプ大統領とその政権との強い連帯を強調している。孤高とも孤立ともいえる少数派である。
もちろん高市政権とトランプ政権との間に政策や意見の差異はある。見解の衝突もある。トランプ大統領の一連の関税政策の日本への実施には高市政権も事実上の反対を表明した。イラン戦争の関連ではトランプ大統領からのホルムズ海峡の防衛の協力要請にも高市首相は首を横に振った。最近ではさらにトランプ政権による国際刑事裁判所(ICC)の糾弾にも高市政権は同調していない。
しかしその一方、日米同盟の堅持という日本側にとっては致命的に重要なアメリカとの絆の保持と強化には高市政権は成功してきた。高市首相自身が日本でもアメリカでもトランプ大統領と文字通り、手を握り、肩を並べあって日米両国の年来の結びつき、とくに安全保障の連帯を誓いあった。
高市首相はトランプ大統領からは「日米同盟はアメリカのインド太平洋での安全保障の礎石(コーナーストーン)だ」という言葉や「日米同盟はいまや黄金時代を迎えた」という発言までも引き出した。
日本側では高市首相のこうした対米姿勢、とくにトランプ大統領への接近を批判する声もある。「すり寄る」という表現があてはまるような高市首相の熱をこめたトランプ大統領との連帯の誇示は確かに演出過多と皮肉られても仕方のない側面もあった。
しかし日本側では反高市、反トランプの「識者」をも含めて、日米同盟への疑義を正面から述べる人はいない。政党でも日米同盟に反対するのは国政の場での超少数派の日本共産党だけである。
中国、北朝鮮、ロシアなど現実の軍事力で日本への圧力をかけてくる反日の武装勢力に対して、なお自衛のための防衛力の保持さえも抑えつける異端の憲法を抱えた日本にとってはアメリカどの同盟による強大な抑止力の取り組みは欠かせない。この認識は日本国民の絶対多数派の間にも浸透したからこその日本全体としての防衛策重視志向だといえよう。
日本にとって戦後でもいまや自国防衛の抑止力が最も必要な時期にアメリカの強大な軍医抑止力を最も顕著に取り組む結果となったのは、やはり高市首相、そして高市政権の安全保障策の対アメリカ政策の成果であろう。その政策の核心はアメリカとの同盟の強化、そしてそのアメリカを統治するトランプ大統領との連携の深化なのである。
(その3につづく。その1)
#この記事は日本戦略研究フォーラムの2026年10月発行の季報に掲載された古森義久氏の論文の転載です。
(本稿のポイントの文責:Japan In-depth編集部)
トップ写真:日米首脳電話会談後記者会見する高市早苗首相 2026年9月26日
出典:首相官邸
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この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授
産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

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