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.国際  投稿日:2026/10/9

《『高市外交の一年を診る』》その3 アメリカでの超党派の支援


執筆:古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授) 
「古森義久の内外透視」1111回

【本稿のポイント】

・トランプ政権は第1期からの対中強硬姿勢の裏づけとして在日米軍と日米同盟の強化を重視し、トランプ大統領自身も日本への親近感と拉致問題への協力姿勢を示し続けてきた。

・アメリカでは民主党もトランプ政権のほぼ全政策に反対しながら、日米同盟の堅持という一点では共和党と一致しており、高市首相はその超党派の支持を受けている。

・高市首相は就任1年で、訪問先を同盟国・同志国に絞り、「力による平和」という原則の共有を通じてアメリカとの同盟強化を大幅に進めた。

私はトランプ政権の第1期目の2017年からワシントンの国政の場での対日政策の潮流を目撃してきた。2025年からの第2期目でもトランプ政権は一貫して日本との安全保障面での強い連帯を旗印に掲げてきた。トランプ大統領自身が日本への友好姿勢を堅持してきたともいえる。

 

トランプ大統領の日本重視はトランプ政権の第1期目からの中国に対する強固な姿勢とも密接な関連があった。トランプ政権は第1期目にそれまでの長年の歴代政権の対中関与政策の失敗を宣言したのだ。そして中国をアメリカに対するグローバルな脅威だと断じて軍事、外交、政治、経済などの多分野での強硬な対抗手段をとると発表した。

 

その新たな中国抑止戦略では在日米軍の存在、そしてその基盤となる日米同盟の強化が欠かせないという判断が明確だった。

 

トランプ大統領の個人的次元での日本への親近感も明白だった。同大統領はいまもって公開の場で日本について語るとき、必ずといえるほどまず「私は日本が大好きなのだが」という言葉を発している。たとえ外交辞令だとしても、他の諸国に対してはまず口にしない表現である。

 

トランプ大統領の日本へのそんな温かさは安倍晋三首相との親密な絆の結果だとも推測できる。その展開の一つはトランプ大統領の北朝鮮による日本人拉致事件の解決への協力である。トランプ氏はまず1期目の初期に国連総会での演説で「北朝鮮工作員による日本人の13歳の優しい少女の誘拐」を指摘して、北朝鮮を非難した。

 

以来十年近く、同大統領は金正恩朝鮮労働党総書記との2回の首脳会談でも日本人拉致事件を提起して、金総書記に拉致被害者の解放を求めた。被害者家族の横田早紀江さん、故人となった有本明弘さんらともトランプ大統領は文字通り膝を交えて苦しい心境に耳を傾けた。昨年10月の日本への訪問の際も過密な日程の中で被害者家族たちと対面した。

 

トランプ大統領のこうした親日の言動は日本側のトランプ批判の「識者」たちはまず触れない。そして「トランプ氏は自分のことしか考えない」というような粗っぽい断を下すだけなのだ。だがトランプ氏の高市首相への前向きな態度はこうした日本への友好姿勢も基盤となっていることは確実である。

 

高市首相にとって幸運だったのはいまのアメリカでは共和党も民主党も日米同盟の堅持という基本政策には賛成だという事実だともいえる。近年のアメリカ国政では野党の民主党はトランプ大統領の背策にはすべて反対するといえる。ただし数の少ない例外がある。その一つが日本への政策なのだ。民主党も日本との共同防衛を決める同盟の保持と強化には賛成している。

 

私自身、高市首相が訪米する直前の3月中旬、アメリカ議会の議事堂内で開かれた日米関係にからむパーティーに出て、民主党の議員たちが高市首相への賞讃の言葉を述べるのを聞いた。たとえば民主党リベラル派のマーク・タカノ下院議員は日ごろはトランプ政権への非難の発言ばかりだが、この場ではトランプ大統領との会談を主目的に来訪する高市首相を歓迎すると明言した。しかも「日本初の女性首相への敬意を表する」とも述べたのだった。

 

一方、共和党議員の高市評はさらに前向きだった。同じパーティーでトランプ政権にもきわめて近い下院外交委員会の重鎮ジョー・ウィルソン議員に高市訪米への対応を尋ねると、ためらわずに答えた。

 

「私はまず高市首相にサンキューと伝えたい。中国に対して毅然たる態度を示したことに対する謝意だ。この態度はアメリカにとっても有益となる」

 

ウィルソン議員は日本の国会での高市発言と中国政府の反発について詳しく知っていて、そんな言葉を述べるのだった。

 

このように高市首相はアメリカ側の政権からも議会からも支持されているのだ。とくにトランプ政権は日本に対して防衛面で欧州の同盟諸国に対するような批判は一切、述べていない。防衛負担を増せというような圧力もかけていない。高市政権の自主的な防衛費増や防衛三文書の政策的な実現での同盟強化策を高く評価しているからだ。

 

実際にいまの日米両国間では制服間、つまり自衛隊とアメリカ軍との防衛協力が着実かつ大幅に前進している。その基盤には高市首相自身の米側の「力による平和」の原則や抑止力の実効への支持がある。トランプ、高市両首脳の安全保障に関する基本の概念や政策が一致しているということである。この点でも高市首相がアメリカとの同盟をより強化したといえるのだ。

 

こうしてみてくると高市首相はこの一年で中国との関係を現実的にする一方、その中国との関係からの脅威を抑えるアメリカとの同盟の強化を大幅に果たしたともいえる。

 

高市首相は就任以来の1年ほどで合計11ヵ国の諸外国を訪問したとされる。先任の岸田首相の同時期の外国訪問が計14ヵ国、安倍首相が20ヵ国という記録に比べれば少ないが、直前の石破首相よりはずっと多い。

 

当然ながら訪問した外国の数で外交の成否が決まるわけではない。高市首相の場合、訪問先は国際会議への出席先を除いて、アメリカ、イギリス、イタリア、オーストラリア、インド、韓国、ベトナムの7ヵ国だった。みな中国とは明確な一線を画す同盟国、同志国ばかりだった。この選択にも高市首相の自由民主主義陣営への連帯と中国やロシアという専制国家への距離が明白となっている。

(その4につづく。その2)

 

#この記事は日本戦略研究フォーラムの2026年10月発行の季報に掲載された古森義久氏の論文の転載です。

 

(本稿のポイントの文責:Japan In-depth編集部)

 

トップ写真:日米首脳会談 2026年3月19日

出典:首相官邸




この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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