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.国際  投稿日:2025/12/24

高市政権にとってのアメリカ、そして中国(上) トランプ政権との強固な連帯


古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)

古森義久の内外透視

【まとめ】

・今後の対中関係では両国間の政策の相違が明確になるが、それは日本の安全保障上の立場を鮮明にするものであり、必ずしも不安定化を意味しない。

・高市早苗首相の下で日本は、アメリカとの同盟をかつてない水準まで強化し、中国とは安全保障上の対立が表面化していく。

・トランプ大統領との首脳会談では、保守主義と「力による平和」という共通理念を背景に、日米同盟の深化が強く打ち出された。

 

高市早苗新首相の下での日本はアメリカ、そして中国という両大国と、今後どんな関わりを保っていくのか。さらに米中両大国の関係はどうなるのか――

ワシントンと東京からの考察でその眺望を測ってみたい。

当然ながら、その展望は複雑な要因がからみ、簡単な予測は難しいが、根幹の動きだけを判断すれば、日本にとってはアメリカとの同盟関係のかつてないほど強固な深化、他方、中国とは安全保障面での利害の衝突の顕在化だといえよう。

とくに日本の対中関係ではこれまで両国間で潜在しながら表面での断層をみせなかった政策の相違が明白になる。だがこの相違の顕在化は日本にとって国家安全保障上の立ち位置をより明確にすることであり、危険とか不安定を意味するわけではないといえる。

まずトランプ大統領の10月下旬の来日による高市首相との日米首脳会談ではかつてない鮮明さで日米同盟の強化がうたわれた。トランプ大統領自身の日本重視は今回の首脳会談での「日米同盟はいまや世界最高レベルの高みにある」、「日米関係はいまや黄金時代を迎えた」という言葉で明白だった。

その種の礼賛の言葉から外交辞令的な要素を除いても、高市首相に直接に向けた「いかなる疑問でも、懐疑でも課題でも私に伝えてほしい。日本を支援するためにはなんでも実行する」という首脳会談での発言は従来の枠を超えていた。トランプ氏自身の高市首相への熱い信頼や支援の意を明示していたといえる。

トランプ氏は首相に就任したばかりの高市氏に対して以下の賞讃の言葉を送っていた。

「高市早苗氏は偉大な知恵と強さを持つ非常に高く尊敬される人物だ。私は彼女について安倍晋三氏からもかねがね高い評価を聞いていた」

 

高市首相も日米同盟の改めての強化への意欲を明確に示した。「日米同盟を新たな高みへと引き上げる」という言明だった。同時に日本の防衛費を国内総生産(GDP)の2%へと早めに増額する方針を宣言した。

日米両首脳が横須賀のアメリカ海軍の空母「ジョージ・ワシントン」の巨大な艦上で日米共同防衛の強化を誓いあった光景も、内外に強烈な印象を与えた。1万数千の乗組員を前にトランプ大統領が高市首相を「この女性こそが勝者なのだ!」と紹介し、防衛協力の増強を強調したのだ。

トランプ政権で外交を担うマルコ・ルビオ国務長官も歩調を合わせていた。

「高市政権は日米同盟を増強し、経済的な繁栄を築き、地域の安全保障を強化するだろう」

その背景にはトランプ政権が2017年1月の1期目から国際安全保障では日米同盟を最重視し、インド太平洋でのアメリカ側の態勢の「礎石」(コーナーストーン)とするという政策表明が存在していた。

今回は連邦議会でも共和党の重鎮ウィリアム・ハガティ上院議員が「高市氏はトランプ大統領とでは保守主義の信奉という点でも緊密な信頼関係を築くだろう」と述べた。

この両首脳の「保守主義の信奉」という指摘はとくに重要である。トランプ氏も高市氏も自国のあり方については保守主義という共通の理念を信奉してきたのだ。この思想の共有は日米同盟の根幹での強化にもつながるといえよう。

この場合の保守主義とはまず自国の主権、国益、安全保障の最優先重視、そのための「力による平和」策の推進という支柱で構成される。「力による平和」とは軍事力を基礎とする戦争や侵略の抑止である。トランプ氏のこうした戦略の推進は同政権1期目の国家防衛戦略などから明白となってきた。高市氏も日本側の憲法による防衛努力への制約を踏まえながらも、抑止の必要性、重要性は折にふれて強調してきた。

トランプ大統領がイデオロギー面での高市氏との共同歩調を十二分に意識している状況は、大統領のボディランゲージ(身体言語)からも明確だった。高市氏と並び、歩むトランプ氏の肩の力がふだんワシントンの公的舞台でみるよりも、ずっとゆるみ、リラックスして快適そうだったのである。

トランプ氏は自分自身の保守主義のモデルとしてロナルド・レーガン大統領をよく実例にあげる。レーガン氏は近年のアメリカ政治史では最も大きな成果をあげた保守政治指導者だった。国内的には個人や企業の自由、政府規制の削減という「小さな政府」を唱え、対外的には共産主義独裁への強固な反対、そして「力による平和」だった。

実は高市氏もこのレーガン政権時代の後半にワシントンの連邦議会で研修を続け、この保守主義の成果から学んだところが大だと述べるのを聞いた。高市氏が最も尊敬する政治家として名をあげるイギリスのマーガレット・サッチャー首相はその時期にレーガン氏と密接な協力を重ね、同様の保守主義を実践していた。

このあたりにも高市、トランプ両氏の保守志向の歴史的な共通出自があるわけだ。その協調が今後の日米同盟の深化へのさらなる強固な推進力となる展望が強いのである。

(中につづく)

※この記事は雑誌「月刊 正論」2026年1月号に掲載された古森義久氏の論文の転載です。

トップ写真)ドナルド・トランプ大統領、日本の高市早苗首相との二国間会談に参加

出典)The WHITE HOUSE




この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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