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.国際,.政治,.社会  投稿日:2026/10/21

日中関係悪化の中、日本に根をおろす中国人


        執筆:福澤善文(コンサルタント/元早稲田大学講師)

【本稿のポイント】

・2025年末の在留中国人は93万428人、渡航自粛勧告で観光客が激減する中、永住者、ホワイトカラー層、留学生、家族の在留者は減っていない。

・政府の統制をくぐる私費留学生は増加し、志望先も国公立の大学院や有名美大へシフトしている。

・中国政府が今年9月に出国規定を厳格化し、10月に国家動員法を改定したことで、日本への私費留学は困難になる。

 

日中関係が冷え込み、渡航自粛や交換留学の停止が広がるなかでも、日本を目指す中国人の足波は止まらない。なぜ彼らは日本に根をおろし続けるのか。変容する私費留学生の実態と、中国政府の規制強化が日本の大学経営に投げかける影について、元早稲田大学講師の福澤善文氏が読み解く。

 

◆在留中国人93万人、観光客は激減

2025年末の在留中国人の数は93万428人(対前年比+5万7000人)を記録した。

2000年の数字33万人と比べると驚異的な増加だ。2025年、中国政府による日本への渡航自粛勧告で訪日観光客は激減した。事実、銀座や新宿へ行くと中国人観光客がめっきり減っている。しかしながら、日本に在留する中国人数は減っていない。もっとも、資本金の増額や常勤職員の雇用義務化などが厳格化されたため、経営管理ビザでの在留者は減少したが、①永住者:10年以上定住、②ホワイトカラー層:日本の大学、大学院卒業後、日本企業に就職、③留学生:大学、大学院、予備校生、④家族:日本で働く中国人が中国から呼び寄せた配偶者、子供、などは減っていないようだ。

◆中国からの人口流出と「潤(ルン)」

中国からの人口純流出は2017年以降、増加傾向にあった。しかし中国政府のゼロコロナ政策により一時は落ち込んだ。2022年末にゼロコロナ政策が撤廃されると、中国からの脱出者が急増し、2024年には純流出者の数は約31.8万人を記録した。その後、中国政府の資産流出防止策や各国の中国人向けビザ規制もあり、2025年には26.8万人へと減少したものの、まだその数字は高水準だ。中国政府は、同国人の出国の厳格化により、外国への脱出にブレーキをかけてきたが、それでも中国からの脱出者はかなりの数いた。因みに、中国から海外への脱出は中国のネットスラングで潤(ルンrùn)と呼ばれている。

◆私費留学生は増加、志望先は大学院・美大へ

中国政府は自国民の脱出者を監視し、出入国管理を厳格化してきた。特に、2025年11月の中国政府による自国民に対する日本への渡航自粛勧告では、観光客がいち早く反応し、日本への渡航を敬遠し始めた。また、北京大学や復旦大学など中国の主要大学は日本の大学との交換留学制度を停止し、国費での日本への留学にはブレーキがかかった。ところが、政府からのブレーキを逃れた私費留学生は減るどころか、増加の一途を辿っているようだ。

これまでの、中国から日本への典型的な留学パターンでは日本語学校を併設した中国人向け予備校が重要な役割を果たしてきた。入国管理局から適正校に指定されたこの日本語学校併設の予備校が中国からの学生の代理として入管関連の書類を準備して当局へ提出することで、留学生に在留資格認定書を取得させるという仕組みになっていた。この予備校で留学生は日本語と大学入学の準備をするわけだ。

予備校では、日本の大学院をめざす留学生、日本の学部をめざす留学生に2分されており、これまでは、早稲田や有名国立大学をめざし、失敗したら、ほぼ無試験で入学できた大学へ流れて行くパターンだった。ところが近年、大学を卒業してから中国であれ、日本であれ、仕事を探す上で、有名トップ校、特に大学院かITやデザインの技術を習得できる美大を出たほうがいいという意識変化から、中国人留学生の日本の大学への志望先は、これまでの「とりあえず私大の学部」から「地方も含めた国公立の大学院、有名美大」へとシフトしてきている。学部に4年費やすのではなく、2~3年で大学院を終えて箔付けをして、中国の就職難を突破しようと目論む留学生や、アニメ、デザインの専門性をつけるために美大へ志願する留学生が増えているのだ。日本の大学で4年間過ごさせる余裕のある富裕層の子息は、この予備校を経て、どこの大学でもよいというわけではなく、早慶の看板学部への進学を希望する傾向が強い。

◆出国規制の強化と日本の大学への影響

ところが、中国政府は今年9月には出入国管理規定を改定し、自国民の出国規定を更に厳格化した。そして、同10月には国家動員法を改定し、その中で、有事の際には国内のヒト(自国民)を動員できるとしている。これらの政策により、中国人が自国から脱出する道はかなり閉ざされることになるといわれている。これで、日本への私費留学もかなり困難になることが予想される。

この煽りを受けそうなのが、予備校で準備をしたものの、希望の大学に入学できなかった中国人留学生を、高校卒業証明書などの書類選考と形式的な面接といったほぼ無試験状態で大量に受け入れてきた日本の大学だ。中には、中国人留学生数が減った分、東南アジアからの留学生の募集強化へと切り替えて、経営を維持しようと画策する大学もあるようだ。もっとも、留学生によってしか経営が成り立たないような大学を生きながらえさせる必要性があるのかどうか疑問は残る。    
以上

【よくある質問(FAQ)】

Q1:「潤(ルン)」とはどのような言葉ですか?
A:中国のネットスラングで、中国から海外へ脱出・移住することを指します。

Q2:「国家動員法」とはどのような法律ですか?
A:有事の際に、国が人的・物的資源を戦争遂行などのために動員できるようにする法律です。

Q3:「経営管理ビザ」とはどのような在留資格ですか?
A:外国人が日本で事業の経営や管理に従事するための在留資格です。

Q4:「在留資格認定証明書」とはどのようなものですか?
A:外国人が日本に入国して一定の活動を行う際、事前に出入国在留管理庁が交付する書類で、ビザ(査証)申請を円滑に行うために用いられます。

(本稿のポイント、リード、FAQの文責:Japan In-depth編集部)

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 出典:hxyume / gattyimages




この記事を書いた人
福澤善文コンサルタント/元早稲田大学講師

1976 年 慶應義塾大学卒、MBA取得(米国コロンビア大学院)。日本興業銀行ではニューヨーク支店、プロジェクトエンジニアリング部、中南米駐在員事務所などを経て、米州開発銀行に出向。その後、日本興業銀行外国為替部参事や三井物産戦略研究所海外情報室長、ロッテホールディングス戦略開発部長、ロッテ免税店JAPAN取締役などを歴任。現在はコンサルタント/アナリストとして活躍中。


過去に東京都立短期大学講師、米国ボストン大学客員教授、早稲田大学政治経済学部講師なども務める。著書は『重要性を増すパナマ運河』、『エンロン問題とアメリカ経済』をはじめ英文著書『Japanese Peculiarity depicted in‘Lost in Translation’』、『Looking Ahead』など多数。

福澤善文

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