[安倍宏行]【体験リポート】しょうゆ博士に会ってきた!〜その味の秘密とは?
Japan In-Depth編集長
安倍宏行(ジャーナリスト)
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日本人だったら当たり前のようにお世話になってるしょうゆ。でもその調理効果は?なーんて言われてもピンとこないが、キッコーマンさんが、「しょうゆおもしろゼミナール」なるものに招待してくれたので行ってみた。その名も「しょうゆの調理効果を科学する」!
講師はキッコーマンの「しょうゆ博士」小幡明雄先生。研究開発本部基礎研究第2部長という長ーい肩書きの、農学博士だ。彼のお話は、目からウロコの連続だった!
まず耳を疑ったのは、しょうゆのうま味は含まれる窒素の量で決まる、ということ。窒素?? ちっとも旨そうじゃないが、実はしょうゆのうま味成分のグルタミン酸などのアミノ酸類は窒素化合物だったんです。知らなかったなー。
次は、いよいよしょうゆの調理効果を体験だ。キーワードは「アミノカルボニル反応」。小幡博士曰く、「これは覚えて帰ってください」。それ程重要なのか。。。どういう化学反応かというと、しょうゆを加熱すると、しょうゆに含まれる旨味の素のアミノ酸と甘みの素のブドウ糖が結合する、というもの。それにより香ばしい香りが生まれるという。
早速、生しょうゆと火入れしょうゆ(生と明記されてない、普通に売られているしょうゆ)の香りの違いを体験した。そもそも料理好きの私ではあるが、不覚にもしょうゆを「生」かどうか意識して買ってはいなかった。私たちに提供されたのは、生しょうゆと火入れしょうゆを用いて調理した「豚肉の生姜焼き」を試食してみた。
事前の消費者テストの結果は、生しょうゆを用いた方が、火入れしょうゆを用いたものより好まれたという。(女性37名対象)確かに生しょうゆを用いた方が上品な甘みがある。しかし、私には少し物足りなく感じた。火入れしょうゆを用いた方がガツンとした味で好みだった。男と女で味の好みが違うのだろうか?性差よりも年齢差の方が大きいのかもしれない。。。
【まとめ】
- 生しょうゆは火入れしょうゆよりも甘く香ばしい香気成分が多い。
- 加熱により、生しょうゆは香気成分が増加するが、火入れしょうゆでは減少する。
- 「豚肉の生姜焼き」の加熱調理試験では、生しょうゆの方が好まれる。→みなさん、試してみてください。
お次は、しょうゆ・みりん・砂糖調味液の調理効果を体験!
しょうゆ・みりん・砂糖を、3:2:1で調合したものが「てりやきタレ」このタレと、しょうゆだけで焼いた鳥肉を試食して見た。
さて、セミナー参加者の反応はいかに?
・・・結果は、私を含め圧倒的に「てりやきタレ」に軍配が上がった。もうこれは比較にならないくらい「てりやきタレ」の勝ち。旨さが全然違います。何故なのか?秘密はみりんにあるらしい。みりんは甘み成分のブドウ糖を多く含んでいる。ショ糖でできている砂糖とは違う甘みであり、料理にコクと旨みを与えるそう。そのみりんと砂糖をしょうゆに加えることにより、例の「アミノカルボニル反応」が促進されるのです。
【まとめ】
しょうゆ・みりん・砂糖を3:2:1でタレを作り調理加熱すると・・・
- 甘い香りや香ばしい香りが増え、香りが豊かになる。
- アミノカルボニル反応物であるカラメルのような香りが寄与する。
つまり、みりんを加えることで香りが一段とよくなる、ということですね。納得。それ以外にも、しょうゆには牛肉の不快なにおいを低減させる効果や、微生物の殺菌効果があったりするという。
いやー、しょうゆ、想像以上にスゴス!実際、海外におけるしょうゆの生産量は年々増え続け、平成22年には189,000Kl 。日本からの輸出17,682Klを足すと、206,682Klとなっている。
国内出荷量は健康ブームからか、年々減少し、平成22年には850,000Kl。海外で国内のほぼ四分の一が消費されているのかと思うと、かなりのものだ。
和食はユネスコの無形文化遺産に間も無く指定される見込みだ。
その和食の旨味の秘密を握るしょうゆが、世界の胃袋を席巻し続けるのかと思うとなんだか小気味いいではないか。 和食バンザイ!
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