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.社会  投稿日:2024/3/28

日本女性起業家の国際進出


古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

・経済産業省の起業家・海外派遣プログラム「J-StarX」の女性第一陣がワシントンを訪れた。

・「国際女性デー」までの約2週間、米実業家や専門家と交流を深めた。

・参加した日本の女性起業家達は、アメリカの女性の活動の実例が参考になったと口をそろえた。

 

日本は女性が社会にあまり進出していない国だ、という批判をよく聞く。そんな批判は日本の内部でも外部でも頻繁に聞く。女性の社会進出度といえば、たとえば、国会議員のなかで女性が占める比率、既婚女性の就業比率、さらには女性全体の就業率など、指針は多々ある。

その種の統計をみれば、日本は確かに女性の活動の後進国となりそうだ。一方、国家としての日本は経済面では全世界第3位――最近はドイツに追いつかれ、第4位ともされるがーー

G7の一員なのだから、女性の社会関与でも、先進国の水準を走っていても、よいはずだともいえよう。

アメリカの首都ワシントンで記者として暮らしていると、取材先をみても、女性の存在はごく自然に映る。連邦議会の議員、連邦政府の高官、民間研究機関の主要学者、そして民間一般の医師や弁護士と、どこをみても、女性は多い。男性より多い、というところまではいかないが、日本と比べると、はるかに多い。やはり女性にとって日本は先進諸国のなかでも、社会への進出、職業面での活動が難しい国なのだろうか。

もしそうであっても、日本女性のより拡大した活動は女性自身にとっても、好ましく、望まれる現象だろう。日本の社会全般にとっても女性がこれまでよりは多く、活動することは経済全体の活性を増すことにもなる。

そんなことを考えていたら、いやいや日本の女性も社会での活動ははなばなしいと思わされる経験をした。日本から多様な職業分野での活動を続け、一定の成功を得たと思える現役の女性たち8人がワシントンを訪れ、私も取材を兼ねて、その人たちの話を聞く機会を得たのだ。

この女性たちはみな日本での起業家だった、その女性起業家たちがワシントンでアメリカや海外一般への事業拡大についての特別の研修会にのぞんだのである。日本政府の経済産業省が昨年から開始した起業家・海外派遣プログラム「J-StarX」の女性第一陣だった。

2月下旬にワシントン入りした一行は「国際女性デー」の3月8日までの約2週間、アメリカ側の各職業分野の実業家や専門家からの講義を聴き、具体例を学び、交流を進めた。

経産省からの委託でワシントンでのプログラムを実際に組み立てたのはカリフォルニア州で女性起業育成の企業「ウィーメンズ・スタートアップ・ラボ」を10年以上、経営してきた堀江愛利さんだった。

参加者は日本の母親への職業紹介の企業「MAMA55」代表の藤原祥子さん、抹茶体験を外国人向けに供する観光企業「抹茶ツーリズム」社長の新条正恵さん、性の問題の相談に乗る機関「UNWIND」代表の萩原佳音さん、など、いずれも日本ですでに起業を果たした女性ばかりだった。

20代から50代まで多彩な企業女性たちは「やはりアメリカでの女性の職業活動の実例は貴重な参考になる」と口をそろえていた。一行は最終日は「国際女性デー」を記念する形で米側の強力な女性団体「バイタル・ボイセス」との交流研修会にのぞんだ。

この女性たちは前述の3人に加えて、以下の5人だった。

ミヨオーガニック」という会社の社長の山本美代さんは歯ブラシなどの日用品からプラスチックを排して、自然な竹を導入する商業活動を続けている。

株式会社RIN」の代表の河島春佳さんは廃棄直前の活き花をドライフラワーにして、室内装飾や服装にまで活用する活動を展開している。

SHIFT80」という企業を代表する坂田ミギーさんはアフリカのケニアの民芸や服飾を日本での製品にする作業を進めている。

株式会社andu amet」社長の鮫島弘子さんはエチオピアの伝統的な皮革品を自前のデザインや技術で仕立て、日本で販売している。

RICCI EVERYDAY」という会社の創業者の仲本千津さんは日本向けの服飾品をアフリカのウガンダで製造するという活動を続けている。

このように豊かな発想にあふれた多様な活動をすでに展開し、成功をおさめた日本の女性起業家たちだが、これまでの活動をさらにアメリカに広げるという目標を抱いての今回のワシントン来訪だったようだ。

▲写真 「Matcha Tourism」代表取締役 新条正恵

▲写真 「MAMA55」代表 藤原祥子

▲写真 「株式会社Unwind」代表取締役CEO 萩原佳音

▲写真 「株式会社ミヨオーガニック」代表取締役 山本美代

▲写真 「株式会社RIN」代表取締役 河島春佳

▲写真 「SHIFT 80」代表 坂田ミギー

▲写真 「株式会社andu amet」代表取締役 鮫島弘子

▲写真 「株式会社RICCI EVERYDAY」代表取締役 仲本千津

トップ写真:イメージ(本文とは関係ありません)出典:Yoshiyoshi Hirokawa/GettyImages




この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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