[安倍宏行]東京ハーヴェスト〜生産者と消費者の心が通じ合う日
Japan In-Depth編集長
安倍宏行(ジャーナリスト)
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食品偽装ニュースが未だかまびすしいが、私達は本質を忘れている。
自分の口に入れるモノは自分で責任を持つと言う事だ。私が子供の頃は冷蔵庫すらなかった。冷氷庫がエレキになったのは小学校に入って少し経ってからだったと思う。ましていわんやフリーザーなんてあるわけない。夏場、作り置きなんぞは母親に「臭いを嗅ぎなさい」と言われなくても自分で嗅いで酸っぱい臭いがしないかどうか、確かめたもんだ。要は自分の舌を信じなさい、と言う事に尽きる。
さて、先週末、六本木ヒルズアリーナで行われた「東京ハーヴェスト」なるイベントに行ってきた。ミシュランガイドで3つ星レストランが世界で一番多い街、TOKYO しかし、私達は普段、食べ物を作っている生産者の事を考える事はほとんど無い。食の都のど真ん中の六本木で、改めて作り手への感謝の気持ちを思い起こそう、というイベントだ。
我がJapan In-depth副編集長の安藤美冬氏が登壇したトークショー「本当の野菜の味って?~土地が育み、子供を育てる食文化~」を聞きに行った。ゲストは、イタリア野菜の代表「ルッコラ」などの西洋野菜を本場モノを凌ぐ味で生産する浅野悦男氏と、25歳でニースにフランス料理レストラン「Kei’s Passion」を開店し、翌年にはミシュランガイドで「1つ星」を獲得した、料理家松嶋啓介氏。
浅野氏が言う。
「自分は農業してると思ってない。食べてくれる人こそ、農業をしてるという意識を持ってもらいたい。食べて(美味い、不味いという)感想をどんどん生産者にぶつけてもらいたい。」
消費者こそが生産者を育てるんだ、というメッセージを発信した。確かに私達はブランド信仰だけで食材を選んではいないか?肉でも野菜でも穀物でも、真摯に向かい合う事が大事なんだと思えた。三陸の漁業従事者のトークセッションあり、マルシェあり、プチ運動会「みのりんぴっく」あり、ライブあり、と東京の「収穫祭」の名にふさわしい、楽しく刺激的な空間だった。
今回のイベントの実行委員長で、オイシックス株式会社代表取締役社長の高島宏平氏に聞いた。
「生産者に思いを馳せる日があってもいい、と思って始めた。東京に収穫祭ないし、誰もやらないなら、じゃあ、やろう、と。できれば(これからも)やりたいと思うが、将来は11月初めには自然とみんなが(収穫祭を)やろう、という風になればいい。誰かの経済合理性の為にやってるわけではないし。色々な協力や参画の形がある。一緒に楽しみたいという人や企業がいたら是非!」
と夢を語ってくれた。
私達一人一人が食事をしている時、生産者の事を思い出し、感謝の気持ちを持つと同時に厳しい目も忘れないことが大切なんだと気づかされた。
都会の人間もたまには子連れで畑に行き、どうやって野菜や穀物が作られているのか、生産者さんと話したり、農業体験してみたらいい。みんなが食の大切さを実感できたら、世界一食べ物を廃棄している国の農業が変わるきっかけになるだろう。
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