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.社会  投稿日:2024/2/24

【ファクトチェック】気象庁「今年は4月から去年の夏ぐらいの猛暑が始まります」→ミスリード


Japan In-depth編集部

【まとめ】

気象庁「今年は4月から去年の夏ぐらいの猛暑が始まります。覚悟してください」とXにポストされた。

・気象庁のHPからは4月から去年並の猛暑になるとの予報は記述無し。

・気象庁の会見で、4月から高温になることと条件が重なれば去年並の猛暑もありうるとの発言があった可能性高く、本Xポストはミスリードと判定。

 

2月20日に以下のポストがXに投稿された。

■ 疑義言説

気象庁「今年は4月から去年の夏ぐらいの猛暑が始まります。」

このツイートには2月23日時点で66.5万件表示され、2870いいね!がついており、1963リポストされている。

この投稿には既に以下のコミュニティノートがついている。

「気象庁の発表とは異なります。気象庁は今年の夏の天候の見通しとして全国的に気温が高くなり、猛暑日が増えると予想しており、その上で、『4月ごろから暑くなる可能性があり、十分な熱中症対策をしてほしい』と呼びかけています。」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE208840Q4A220C2000000/

「『今年は4月から去年の夏ぐらいの猛暑が始まります。覚悟してください』は転載元の5chのスレッドタイトルです。」

https://hayabusa9.5ch.net/test/read.cgi/news/1708424219/

■ ファクトチェック

以上を踏まえた上で、この言説をファクトチェックする

まず気象庁が2月20日に発表した夏の天候の見通し」全国 (06月~08月)を見てみる。

それによると、「暖かい空気に覆われやすいため、気温は全国的に高い」とある。

そのうえで、今年の夏(06月〜08月)の平均気温が「平年並み」より「高い」見込みが、北日本で50%、東日本で60%、西日本で60%、沖縄・奄美で70%、としている。

しかし気象庁は、2023年の夏は「北・東・西日本で記録的な高温」と表現、かつ、気温の平年差も北日本で平年に比べ+ 3℃となるなど、「かなり高い」に分類されていた。

これを見る限り、今年の6~8月は平年より気温が「高く」なる見込みではあるが、去年並に高くなるとは予報していない。

▲図 平均気温・(06月~08月)予想出現確率(%)出典:気象庁

では、直近の3カ月予報はどうだろうか。気象庁の「向こう3か月の天候の見通し」(3月~5月)を見てみる。

それによると、北日本および東日本においては、平年とほとんど気温は変わらないという予測がされており、西日本においては平年並みかそれよりも少し高いという見解がなされている。ただし、沖縄・奄美地方においては平年よりも気温が高くなる見込みがあると予報している。

検証対象である当該ポストの見出しの「4月から去年の夏ぐらいの猛暑が始まる」というほどではない。

▲表 向こう3か月の月別の平均気温 出典:気象庁

一方、新聞各紙の報道をみると、

日本経済新聞(2月20日)は、24年の夏も全国的に猛暑 気象庁「熱中症対策を」の記事の中で、(気象庁の)担当者は「4月ごろから暑くなる可能性があり、十分な熱中症対策をしてほしい」と呼びかけた、と書いている。また、「今年が昨年ほど高温となるか不明だが、偏西風の蛇行など、さらに複数の要因が重なれば記録的な暑さも否定できないという」との記述もある。この記事は共同通信の引用だ。

また、朝日新聞(2月20日)も、「今夏も昨年並み猛暑か、気象庁「早めの対策を」 関東で今年初の夏日」の記事の中で、「同庁(気象庁)異常気象情報センターの楳田貴郁所長は「4~5月から暑さが増していく可能性もあり、家の冷房を試運転しておくなど早めの熱中症対策をしてほしい」と呼びかけた」、と報じた。また、「高温をもたらす条件が重なった場合、観測史上最も暑くなった昨夏並みか、それ以上になる可能性もあるという」と報じている。こちらは署名記事だった。

気象庁のホームページには、「4月から去年並の猛暑」になるという予報は記載されていないが、複数の新聞報道などを見る限り、記者会見で同庁の担当者が、「4月頃から暑くなる可能性がある」として、「熱中症対策」を呼びかけたものと思われる。

また共同と朝日の書きぶりから、「条件が重なれば、去年並かそれ以上の暑さもありうる」とのニュアンスの発言もあったと推測される。ただ、気象庁が会見で、「4月から去年の夏ぐらいの猛暑が始まる」と明言したかどうかは不明だ。

以上のことから、今年の夏が平年より暑くなるとの気象庁の予報は間違いないが、「去年の夏ぐらい」の気温になるかどうかは断定できない。あくまで複数の要因が重なった場合に、という条件付きだと思われる。

 判定

気象庁の「夏の天候の見通し」や、複数メディアの報道などから、当該ポストは、「一軒事実と異なることは言っていない」が、「4月から去年と同じくらいの猛暑が始まる」と気象庁が予報しているとまではいえず、「誤解の余地が大きい」。よって「ミスリード」と判定する。

【Japan In-depthファクトチェックポリシー】

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トップ写真:日傘をさして歩く人々(イメージ ※本文とは関係ありません)2018年7月21日兵庫県・神戸 出典:Buddhika Weerasinghe /GettyImages




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