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.経済  投稿日:2024/4/21

あなたは大阪・関西万博の本当の意義・意味を知っているか?【日本経済をターンアラウンドする!】その23


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・大阪・関西万博、テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」 。

・意義は、日本経済復活のきっかけになること、SDGsの意義再確認、世界への日本の価値の発信。

・万博は日本経済復活を世界に打ち出すチャンスにもなる。

 

会場からメタン・・

経費増大・・・

交通渋滞・・・・

様々な方面から批判を受けている2025年日本国際博覧会、通称「大阪関西万博」。開催まであと1年。メディアの報道を受け、皆さん「いい」「悪い」を自分の価値観から言い、それぞれがそれぞれの立場で自分の理解している範囲、知っている範囲で批評する。

建設的な対話には程遠い、この種の議論であるが、来年になれば盛り上がるだろうとの意見もある。

歴史的意義はあるのか?そもそも社会的に意味があるのか?地域経済や日本経済に取って意味があるのか?という疑問も出てくるだろう。

答えはイエスだ。

■ テーマ「Designing Future Society for Our Lives」

テーマとは、この万博の目的のこと。HPではテーマ 「いのち輝く未来社会のデザイン」 (Designing Future Society for Our Lives) とされている。

▲写真 出典:万博HPより

いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマは、ふわっとしているけれども、「人間一人一人が、自らの望む生き方を考え、それぞれの可能性を最大限に発揮できるようにするとともに、こうした生き方を支える持続可能な社会を、 国際社会が共創していくことを推し進めるものである」ということを意味するらしい。簡単に言えば、持続可能な未来社会を共に創造していこうということ。

具体的には、

・健康・医療をはじめ、カーボンニュートラルやデジタル化といった取組を体現

・世界の叡智とベストプラクティスを大阪・関西地域に集約

・多様な価値観を踏まえた上での諸課題の解決策を提示していく

ということらしい。これらは、時代性を持っているし、とても良いものだと評価できる。

■ 現代における意義・意味

▲写真 万博会場の夢洲(筆者撮影)

現代における意義は3つ。

第一に、 日本経済を復活させるきっかけになる可能性である。労働生産性、1人当たりGDP、平均賃金、企業の共創ランキングなどなど各指標が示す、圧倒的な存在感低下は著しい。近年の岸田政権の経済政策で、賃上げ、人的資本経営、新しい資本主義などで光が見えているが、万博は経済の失われた30年を変えるきっかけになる。世界においてまだ競争力のある先端技術がお披露目できる。その意味で、日本企業による世界市場への日本のアピール、関係性構築などで大きな意味がある。

第二に、SDGsの意義の再確認になる。開催の意義として「SDGs 達成・SDGs+beyondへの飛躍の機会」と明記されている。「大阪・関西万博が開催される2025年は、SDGs の目標年である2030年の5年前であり、SDGs達成に向けたこれまでの進捗状況を確認し、その達成に向けた取組を加速させる絶好の機会となる」と基本計画に謳われている。その通りなのだ。

地球環境は待ったなしであり、地球温暖化のリスクは実感レベルでも共有されている。「スイスの気候変動対策は人権侵害」として欧州人権裁判所が異例の判決をしているし、気候変動対策への期待も世界レベルが広がっている。地球温暖化や二酸化炭素の排出についての問題に対して、世界はどのようにしていくべきなのか、市民はどう行動していくべきか、を再度提起できるであろう。

第三に、世界への日本の価値の発信である。日本社会は色々問題があるものの、それなりの信頼を世界から得ていることも確かだ。資本主義経済をもとにした西側諸国の中心国で、外交は対米追従外交一辺倒ではある。しかし、中東情勢に見るような二枚舌外交はしていないし、平和の価値の発信や独自性の強い文化やその「感性」には評価が高い。世界のブランドランキングも非常に高い。日本人自身が明るい未来を描けなくなり、「オワコン」として見てはいるが、世界は、整然としたところ、清潔なところ、治安の良さ、皆で我慢し合って協力し合って生きている日本の独自のスタイルを評価しているのだ。自然の恵み、美味しい料理、独創的な文化資源、こうした素晴らしい価値を持っている。

特に、大阪というと「商人道」である。「商売は正直と倹約の心を持って行い、得た利益は、最終的に世の中のために役立てる」という考え方で、持続可能な経営の理念の世界的な発祥地みたいなものである。

SDGsの価値は既に、大阪、関西商人の生きるべき道であったわけだ。石田梅岩が江戸時代中期に「道徳と経済の両立」の理念を全国に広め、江戸時代以来の日本経済の精神的基礎になっている。「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の「三方よし」という近江商人の心得もその発展形と言っても過言ではない。

▲写真 石田梅岩像、亀岡駅にて(筆者撮影)

■ 万博はチャンス!

▲写真 万博会場の夢洲(筆者撮影)

テーマの下部に位置するサブテーマとして3つが挙げられている。

Saving Lives(いのちを救う):公衆衛生の改善による感染症対策、防災・減災の取組による安全 の確保、自然との共生

Empowering Lives(いのちに力を与える):「生活」を豊かにする、可能性を広げる

Connecting Lives(いのちをつなぐ):情報通信技術(ICT)を活 用した質の高い遠隔教育の提供、スポーツや食を通じた健康寿命の延伸、AIやロボティクスの活用による人間の 可能性の拡張

さらに、基本計画によると、Society5.0実現に向けた実証の機会としての意義も記載されているように、万博は諸課題の解決策を提示していくチャンスなのだ。日本経済復活を世界に打ち出すチャンスにもなる。岸田政権と万博事務局に期待したい。

トップ写真:万博会場の夢洲(筆者撮影)




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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