.社会,ビジネス  投稿日:2015/3/17

[七尾藍佳]【完全民間保育サービスに公的資金を】~「仕事か子供か」二者択一迫らぬ社会 1~

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七尾藍佳 ジャーナリスト・国際メディアコンサルタント)

「七尾藍佳の“The Perspectives”」

プロフィール執筆記事

待機児童問題を解決する一番の近道は、完全に独立採算で運営されている民間の保育サービスに公的資金を投入することだと思います。このテーマに関して山ほど情報が発信されていますが、その多くが問題の指摘に終始し、解決策の提示にはなかなか出会えません。だからこそ「現実的な解決策」を提言したいと思います。

保育園増設の遅れに関しては「建設作業員が足りない」「地価が高くて用地確保が難しい」といった原因が指摘されますが、東北復興に加えアベノミクスによる不動産開発バブルで人手不足が加速する中、円安で輸入建築資材が高騰し、保育士の雇用環境も厳しく…といった形で、問題の構図はどんどん大きくなります。

問題が山積みなのは痛いほど分かります。今、日本はいろんな意味で大変な時期です。長期的に、みんなで考えて、話し合って取り組んでいくべきです。ママたちももちろんそう思っています。でも「だから、保育園が作れない」と言われても「座して待つ」ことはママにはできません。

多くのママは公的サービスに頼らず、起業したり、AsMamaなどの企業が提供するママネットワークを使って子供の面倒を見る時間を工面しあったり、収入のほとんどをベビーシッター代につぎ込むなどして、なんとか対処しています。

そんなママたちが注目するニュースが3月初旬に流れました。政府が国家戦略特区における保育分野の規制緩和の内容を固めたのです。その目玉は二つ:

①公立公園内における保育施設設置の許可と②政令指定都市が「地域限定保育士」の試験を実施できるようにすること。

もちろんどちらも大歓迎ではありますが「特区での規制緩和!」と大々的に喧伝するには、ママたちからすればあまりに肩すかしの内容でした。せっかくの国家戦略特区なのですから、もっと思い切って欲しいのです。そこで、今困っている人に直接手を差し伸べる効果的かつ現実的な二つの規制緩和を提言します。

 

1 すでに設立されている民間の保育サービス付きシェアオフィスなどの安全検査などを速やかに実施し、一定の基準を満たす施設は自治体が定める保育料・ないし一時保育利用料に準じた価格で利用できるように助成する。

2 すでに一定期間活動実績のある資格認定団体(たとえば公益社団法人全国保育サービス協会やNPO法人日本チャイルドマインダー協会)の資格を取得し、現在稼働しているベビーシッターやチャイルドマインダーなどの保育従事者に対して、簡潔な手続き・試験で取得できる「准保育士」の資格を付与し、公的制度を適用する。

 

この二つが実現すれば、子供が待機児童となってしまった親のみならず、収入・仕事の形態・家庭環境など様々な理由から民間の保育サービスを利用したくても利用できない子育て中の女性達の「潜在的労働力」を活用することができます。政府が示している規制緩和策は、実際的な効果を発揮するまでに時間がかかります。

今すでに営業している民間保育サービスの多くは、「保育園」という公的制度がカバーしない「保育ニーズ」に対応しているからこそ「独立採算」でやり繰りしているのであって、行政のサポートに頼っていないからといって「保育園」より質的に劣るわけではありません。

むしろその逆で、長時間労働・フルタイム就労を前提とし「復職=ストレス」となってしまうような現在の認証・認可保育園制度よりも、より幸せなワーキングマザー生活を送れるという理由から、あえて公的補助を一切受けていない割高の民間保育サービスを選択するママだっているのです。そういった民間サービスに資金を投じた方が、より効率的・生産的に女性の労働力を活用できるでしょう。

また、所属団体の基準を守り、きちんと安全と衛生管理を行い、能力のある多くの保育従事者が今すでに稼働しています。彼、彼女たちを活用すれば、保育士不足は一気に解決します。必要なのは、行政が柔軟になることです。

次稿では①の例として、毎年のように待機児童数全国ワースト1になってしまう世田谷区に昨年12月オープンした“保育つきシェアオフィス”を取り上げます。公的援助がエアポケットのように抜け落ちてしまっている分野で、女性たちが「仕事」と「子供」のどちらも犠牲にせずに「幸せなワーキングマザー」という生き方を実現させようと創意工夫を凝らしている姿をご紹介します。

(このシリーズ、2 に続く)

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