[遠藤功治]【ZMP上場前夜、自動運転元年 その1】~特集「2016年を占う!」自動車業界~
遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)
「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」
−2020年7月 東京今日は2020年7月28日、先週から始まった東京オリンピック、その陸上競技を観戦するため、お台場の高層マンションから新国立競技場に向かう。先日買ったi-Phone 9に向かって“Uber呼んで!行き先は新国立競技場”と囁く。携帯はもう大半がウェアラブル、音声認識・顔認証になっている。携帯が本人の音声を認識した後、UberXと呼ばれる完全自動タクシーを呼ぶ。
発信地は自動登録され、携帯画面に車が到着するまで1分30秒、千駄ヶ谷までの所要15分28秒、到着予定時刻は午前10時21分35秒、推定料金353円と提示される。まもなく車が予定時刻ちょうどに到着、携帯を車のドアに近づけると自動的に開く。中に乗りこむ。ハンドルもアクセルもブレーキぺダルも無い、勿論、運転手もいない、完全無人の車内。夏風邪を引いたのか、乗車時の体温が平熱よりやや高い37.6度と、前方のヘッドアップディスプレイに表示されるが、風邪薬の成分を含んだ風がIOTで繋がれたAIによる指示で、エアコンから自動的に吹いてきて、外苑に着くころには平熱に戻っている。
台場から外苑までの首都高は、1車線がタクシー専用レーンの設定、周辺を見渡すと未だに人間様が運転しているLevel-2までの旧世代車も多いが、ステアリングから手を離して人が乗っているLevel-3の半自動運転的な車が大半だ。想定時刻から3秒遅れて外苑の新国立競技場に到着、料金は事前表示通りの353円、タクシー料金も昔に比べて価格破壊的に安くなった。料金は当然クレジットカード自動引き落とし、最近は現金を持ち歩くことも少なくなった。3時間後に同じ場所に戻ってくるようにと車に囁く。自動的にドアが開いて下車、車はそのままどこかに走って行った。
競技場まで約500mの道のりだが、個人間シェアリングのセグウェイスタンドから、昔に比べれば2回りも小さくなった新型セグウェイに乗って競技場に向かう。これもi-Phone 9で予約・課金・解錠のシステム。5年前のドッタンバッタンでこの新国立競技場に屋根は無いが、やはり5年前のVWディーゼル排ガス不正問題後に制定された新排ガス規制により、東京の空は5年前に比べPM2.5の濃度が100分の一以下に激減、良く晴れて絶好のオリンピック観戦日和となった。
ここからあと20年後、2040年に構想が持たれている初の月面オリンピックが開催される頃には、所謂“Singularity”を迎えている筈。その時点で、AIは人類の知能を超え、車の運転は全て完全自動のLevel-4となり、運転免許証なるものが廃止となる・・・かも?
−2016年1月 東京
2016年第一弾の投稿が、2020年7月の架空話で始まり大変失礼しました。ただ、この話の大筋は、その時期は別にして、将来ほぼ確実に現実化していると考えます。その実現に向けた第1歩が、この2016年初頭に、ZMPの上場という形で始まると思われます。“自動運転”という言葉、最近よく耳にする言葉です。信じる人、信じない人、様々だと思います。何を隠そう、筆者は大の車好き、東京23区内に居住しているにも拘わらず、車を所有していない生活など考えられません。スマホを持っている、ということと、車を持っている、ということは、完全に同義語(?)だと思っている人種です。
よって、車を運転すること、車を操ること、マツダのCMではありませんが、“車は単なる道具ではない”、“Be a driver!”には完全に共感するタイプの人間です。2015年10月に東京モーターショーが開催されましたが、筆者は4日間ほど参りました。よってそのモーターショーに行かなかった、などと言う人と会うと、さも珍しい宇宙人にでも会ったような気持ちになります(失礼)、そんなタイプの人間です。やや前置きが長くなりましたが、“貴方は完全自動運転などというものを信じますか?”という問いに対し、皆さんはどうお答えになりますか?
車大好き人間の筆者の答えはこうです。“100%信じます。それも皆さんが思っているよりも、相当早いペースで実現します。最終的には、自動車は全て自動運転になります、人間が操っては行けない品物になります”と。車好きの筆者さえそう思う、ましてや、車の運転などあまり興味が無い、車など持ってない、持つ必要も無い、と考える人にとって、自動運転というのは、当然の帰結かもしれません。
洗濯は洗濯機がするもの、掃除はルンバのような掃除ロボットがするもの、リニア新幹線も遠隔操作による自動運転、宅配は人ではなくドローンが運ぶ。それなら車の運転は車自体がするもの、何が違うの・・・勿論as long as it is 100% safeの環境下であること、が絶対条件なのですが。
(【ZMP上場前夜、自動運転元年 その2】~特集「2016年を占う!」自動車業界~ に続く。本シリーズ全4回)
※トップ画像:©ZMP、ARJ