日本メディアのトランプ叩きの錯誤とは(中)朝日新聞のひん曲げ報道
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
【まとめ】
・日本主要メディアによるトランプ批判は、同氏が米国内で一般の支持を失っているという「大誤審」に基づく。
・朝日新聞は、トランプ氏批判の論調のために、高市氏とメローニ伊首相の会談における「トランプ政権との連携強化」の合意を歪曲して報道。
・日本の一部で散布される「トランプ大統領が対中政策を大変更し、台湾防衛を放棄する」という説は、ワシントンでの考察の結果、事実ではない。
朝日新聞のトランプ大統領への悪口雑言はいうまでもない。ニュース記事、社説、コラムを総動員して、「トランプは独裁者」という調子の断定を繰り返す。朝日新聞ご用達の左傾論者の藤原帰一氏のような人物に「トランプは人種差別主義者だ」と断じる寄稿をさせる。その基調はトランプ大統領が肝心のアメリカでもう一般の支持を得ていないという大誤審である。ここ十年ほどの朝日新聞の主張が正しければ、ドナルド・トランプという人物はとっくにアメリカの国政舞台から消えているはずなのだ。
朝日新聞がトランプ叩きの意図のために一般のニュース報道をここまでゆがめるのかと、苦笑させられる実例がこの1月17日朝刊でも目についた。自分たちの偏見のために目前の事実をこれほどまでにひん曲げるのか、という驚嘆でもあった。その実例は前日のイタリアのメロー二首相の来日にともなう高市首相との首脳会談の報道だった。
周知のように、高市、メローニ両首脳ともトランプ大統領とは強い絆を保持している。この会談でも両首脳はアメリカとの同盟の強化を中国への警戒とともに強調した。だが朝日新聞の記事は冒頭から「トランプ大統領の強権的な言動や中国による経済的圧力などで国際情勢不透明化する中、欧州と日本は経済や安全保障分野での連携を深めてきた」と書く。まるでイタリアと日本がともに「トランプ大統領の強権的な言動」への不満を表明しあったような記事なのだ。
ところが実際の高市、メローニ会談ではトランプ政権との連携の強化を合意しあっているのだ。そして中国の高圧的な言動を批判的に認識し、共同の対処の連携をうたっていたのだ。
だが、朝日新聞は日本とイタリアの首脳がその中国よりもトランプ大統領を批判の対象としたかのような記事構成をしているのだ。これまた捏造に近い事実のゆがめだった。
アメリカでは保守とリベラルの政策の衝突、意見の離反の歴史は長い。とくに現在の対立は険しい。共和党と民主党、トランプ陣営と民主党リベラル派との対決である。だがアメリカ国民の多数派は民主的な大統領選挙で二回にわたり、トランプ陣営を支持した。国民はトランプ氏という指導者に政治の信託を与えたのだ。その圧勝ぶりは連邦議会の上下両院でトランプ支持の共和党が多数派を占める事実でも立証された。
しかし当然ながら敗者側の民主党、リベラル派はトランプ政権の政策にはほぼすべて反対する。二大政党制の本質でもあろう。その対決の構図でユニークなのは大手メディアのニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、CNNなどが民主党を全面支持して、トランプ叩きを続ける点である。
日本側のメディアや識者は米側のこの民主党支持の大手メディアの報道や評論に影響される度合いが高い。そしてトランプ大統領に対して「独裁者」、「帝国主義者」、「価値観なし」、「ディールだけ」、「孤立主義」、「ナルシスト」というような実態不明の口汚いレッテル言葉を浴びせるのだ。トランプ陣営の政策の内容や国民多数派がその政策を支持する実態はほとんど無視する。
幸い日本国政府を運営する高市政権はこんな姿勢とはまったくの反対である。だが日本側の多くがトランプ政権をけなし続けることの負の帰結を考えると、深刻な懸念も覚えてしまう。中国の巨大な軍事脅威に直面したいまの日本にとって同盟国のアメリカの対中軍事抑止力は不可欠である。しかも、トランプ政権は日米同盟の強化を求めている。そんな貴重な存在を根拠のない断定でけなし続けることの政治リスクは真剣に考えるべきだろう。
ここで「根拠のない断定」という直截な言葉をあえて再び使ったが、その危険な実例として「トランプ大統領の対中政策が変わった」とする推測について検証しておきたい。
日本側の一部では「トランプ大統領は中国に対してこれまでの対決を止めて、ディールをし、共存政策をとるのだ」という骨子の主張が語られるようになった。多くの場合、その主張は「トランプ氏はもう台湾を防衛しないのだ」という示唆をも伴っている。もしこれらの主張が事実だとすれば、日本への負の影響も重大となる。
しかし私のワシントンでの考察では、このトランプ対中政策大変更論は事実ではない。トランプ大統領が中国に対する政策を根幹から変えた、あるいは変えつつあるとする断定は間違っていると、あえて強調しておこう。
日本側での「トランプ対中政策改変論」の根拠とされるのは、以下のような要因とされる。
▽トランプ政権が昨年12月に発表した国家安全保障戦略のなかで中国への厳しい批判がなかった。
▽トランプ大統領自身が最近、米中関係について両国が太平洋の半分ずつを仕切り、共存するという意味の「G2」という用語を使った。
▽トランプ大統領自身が最近は中国の台湾への武力攻撃への反対や台湾防衛の意思を明確にする発言をしない。
以上のような要素から日本側の一部の識者や主要メディアでは「米中両国の日本の頭越しの和解」とか「アメリカの台湾防衛の放棄」という説が散布されているのだ。
(下につづく)
#この記事は月刊雑誌WILLの2026年3月号に掲載された古森義久氏の論文の転載です。
写真)メローニ伊首相と会談する高市首相 2026年1月16日 首相官邸
出典)首相官邸




























