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.国際,.政治  投稿日:2026/2/4

総選挙が問う戦後日本の針路:3つの結末の可能性と有権者の政治的重心


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表

外交・安保カレンダー 2026#05

2026年2月2-8日

【まとめ】

・今回の総選挙は、戦後日本の進路を決める重要な分岐点と見なされる一方、「大義名分なき選挙」や「政治とカネ」問題隠蔽といった解散理由への批判も多く存在する。

・選挙の結末として、保守系による「新保守連立」、中道リベラル系を中心とした「非自民連立」、またはどちらも過半数を占めない「政治の不安定化」という3つの可能性が挙げられる。

・有権者の政治的重心がセンターライトへ移動しているため「新保守連立」が有力と筆者は推測しているが、不測の事態により「政権不安定化」が長期化する可能性も排除できない。

総選挙投票日は今週末の筈なのに、巷では既に大胆な結果予測が飛び交っている。先週は誰に聞いても「今回ばかりは予測困難」という答えばかりと書いたが、今週は誰に聞いても「●●党圧勝」という予測ばかり。うーん、どれが本当なのかね。こういう時は、選挙について何も書かないのが外交評論家の「定石」かもしれない。

だが、そうは言っても、「何も書かないというのも、如何なものか」と思う。さればここでは一言だけ・・・。今回の解散理由には多くの疑問が投げかけられた。首相の支持率が高いうちに圧勝を狙った「大義名分」なき選挙、「政治とカネ」問題の隠蔽、予算早期成立の先送り、などといった批判である。

だが、筆者は今回の選挙が、個々の政策をめぐる論争というよりも、戦後80年を経て、日本という国家の歩むべき方向性を決める、極めて重要な分岐点となる選挙だと思っている。選挙後に日本内政を取り巻く環境がどう変わるかは、ある程度推測可能だ。この点を今週JapanTimesに書いたので、ご一読願いたい。

選挙の結末には3つの可能性がある。第一は、保守系諸政党のみによる連立や部分的協力による「新保守連立」政権が成立する可能性、第二は、その逆で、中道リベラル系諸政党を中心とした、非自民の、特に高市首相を排除するための新たな政治勢力による連立政権が成立する可能性、である。

勿論、これ以外にも、自民・維新と中道改革という二つの勢力がいずれも総議席の過半数を占めることができず、新政権の樹立が遅れ、安定した政権基盤を確立できず、日本政治全体が不安定化していく可能性も排除できない。

ここでは、JapanTimesで書けなかったことを書こう。近年日本の「有権者の政治的重心」はレフトからセンターライトに移りつつある。されば、最終的には第一のシナリオに収斂していくのだろう。だが、政治は決して甘くない。不測の事態が生ずれば、いずれ第三のシナリオが長期化してしまう可能性も排除できないからだ。

もう一つ、先週に続き、今週も気になったのが中国人民解放軍高官の失脚人事だ。先週は、現時点での筆者の仮説として、次の4点を挙げた。

1 「不正・腐敗」は今回の失脚人事の真の原因ではない。

2 習近平主席権力は今も絶対に近く、現時点で「揺らいでいる」とは思えない。

3 注目するのは「台湾解放」をめぐる軍内の「世代間緊張」だ。

4 野心ある若手将軍たちと現実派の最上層幹部達との間に確執はないのか。

この続きを今週の産経新聞WorldWatchに書いた。以上の仮説を前提にすれば、「今中国の最高指導部は『解放軍』をどう『強軍化』するか迷っている」としか思えないからだ。いや・・・、「迷う」どころか、「どうして良いか分からない」のではないか、とすら思っている。詳しくは、木曜日の産経新聞をご一読願いたい。

続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

2月3日 火曜日 コロンビア大統領訪米、ホワイトハウスで首脳会談

2月4日 水曜日 米露ウクライナ高官の三者会合(アラブ首長国連邦、2日間)

2月5日 木曜日 米露「新戦略兵器削減条約(新START)」の失効期限

2月6日 金曜日 冬季オリンピック開幕(イタリア)

2月7日 土曜日 ハイチの「暫定大統領評議会」の権限失効

2月8日 日曜日 タイと日本で総選挙、ポルトガルで大統領選挙決選投票、イスラエル大統領、訪豪(5日間)

最後はガザ・中東情勢だが、今週は先週に続きイラン情勢を取り上げる。米大統領は「ベネズエラと同じように、さらに(イラン周辺に)大規模な軍を派遣しており、まもなく到着する」「実現するかわからないが、交渉による合意を望んでいる。現時点でイランと協議中で、合意できなければ悪いことが起こるだろう」などと述べた。だが、現在も交渉による解決に向けた努力は水面下で続いている。

一部報道によれば、米中東担当特使とイラン外相による協議が6日にイスタンブールで開かれる見通し、だそうだ。トルコ、カタール、エジプトが調整しているらしいが、現時点では未確認という。イラン側は米国に制裁解除を求めるだろうが、米側はイランにウラン濃縮活動の停止や弾道ミサイルの保有数制限などを求めている筈。

当然、イランがこうした米国の要求を受け入れる筈はなく、今は協議開催そのものが不透明なのかもしれない。また、米中東特使はイスラエルを訪問し同国首相ともイラン情勢を協議するそうだ。イスラエルと米国はあの手この手でイランに圧力をかけているが、先週書いた通り、対イラン攻撃は最「悪手」であり、あまりお勧めしない。

結論は簡単。イランが本気で核開発を断念することはない。他方、今イランを攻撃しても、何の政治的成果も得られない、ということだ。こうして、米イラン間の直接戦闘の事例が「過去の実績」として積み上がっていき、誤算による悲劇の可能性は高まるばかり・・。でも、今筆者が最も懸念するのは日本国内の「感度」である。

先週は「トランプが言うことや、トランプ政権による意図的情報リークを、「真に受ける」必要はない」と書いたが、よ〜く考えてほしい。万が一、米国が大規模攻撃を行い、イランが本格的な報復攻撃を始めれば、ペルシャ湾内で戦闘が長期化する可能性がある。そうなれば、一瞬にして原油・天然ガスの流れは一時的にせよ止まる恐れが高いのに・・・。

日本はその準備が出来ているのか。総選挙ばかりが大ニュースとは限らない。日本の平和ボケは相変わらずである。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

写真)衆院選で街頭演説を聞く有権者たち 東京都新宿駅東口

出典)ⓒJapan In-depth編集部





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