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.経済  投稿日:2015/1/25

[遠藤功治]【熾烈!軽自動車“自社登録”合戦】~軽自動車“S-D戦争”の真実 2~


遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)

「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」

執筆記事プロフィール

 

この軽自動車に於ける販売競争、スズキ対ダイハツの一騎打ちの様相で、その頭文字を取って、“S-D戦争”とも言われます。即ち、軽自動車市場1位の座を巡っての販売合戦です。軽自動車の販売合戦は今に始まったことではありませんが、少なくとも近年では、それほど目に見えての乱売合戦はありませんでした。

収益を第一として考える、シェアは2の次という姿勢が各社に存在していました。これは、2000年台前半に、やはりスズキとダイハツの販売競争が激化し、市場が乱売状態となり、台数だけが独り歩きをして、収益が全く伴わず、ただ疲弊しきった状況に追い込まれた経験があるからです。

スズキの鈴木会長はその当時、“お行儀の良い売り方”に変更すると宣言、1位シェアにはこだわらず、結果として、ダイハツに1位の座を明け渡した、しかし収益はしっかりと頂く、これで市場は一時的に正常化の方向に向かった訳です。

ところが7年を経て以前の状況に逆戻り、再度のS-D戦争が勃発した模様です。鈴木会長は、11月の中間決算発表時に、何が何でも今年はシェア1位を獲得する、今年はシェア1位が優先順位のトップ、と宣言しました。

収益を犠牲にしても1位の座を獲得すべく、販売促進をすると発表したようなものです。宣戦布告とも取れる発言で、これを受け、スズキの国内販売の前線に勢いがついたように見受けられます。一方のダイハツも負ける訳にはいかない、7年間維持し続けた1位の座を何が何でも守る、という姿勢です。ここに第2次のS-D戦争が実質的に始まったと言っても良いでしょう。

さて、この販売合戦の手段ですが、その常套手段が“自社登録”となる訳です。自社登録とは、各自動車販社が、自分の名前で車を登録すること、つまり自分が売っている車を自分が買う訳です。

何故そんなことをするかと言えば、販売のノルマを達成するため、ということになります。各販社は常に、自動車メーカーの国内営業本部から販売台数のノルマ達成を要求されます。この月、ないしはこの半年で何台販売して下さい、というものです。

例えば、ある販社は今月20台の販売目標をメーカーから課せられたとする。20台の販売をめでたく達成出来れば、メーカーから販売奨励金を得ることが出来る訳ですが、これを1台でも下回れば、メーカーからの販売奨励金は一切交付されないという訳です。

もし1台(ないしは数台)の未達ならば、一切販売奨励金は出ないということを避けるため、販社はその1台、ないしはその未達分を自前で買い、自社登録をすることで、めでたくノルマ達成、販売奨励金獲得となる訳です。

国内の自動車市場は長期低迷で激烈な競争が起きています。このような自社登録は珍しいことではありません。ただ、ここで問題なのは、この自社登録した車をどうするのかということです。この自社登録した車を一般には“新古車”、正式には“未使用車”といいますが、これが問題の種となります。

 

(3に続く。本シリーズは全6回です)

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