[遠藤功治]【スズキ、8年振りシェア1位のわけ】~軽自動車“S-D戦争”の真実 1~
遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)
「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」
2014暦年の国内自動車販売台数は、前年比3.5%増の556万台となり、3年振りの高水準となりました。2014年は1-3月が消費増税前の駆け込みで急増したのに対し、4-12月は予想以上の反動減となり、2つの違った顔を持った市場となりましたが、結果的には1-3月の駆け込み増が勝ったと言うことでしょう。
その中で、排気量が660cc以上の所謂、登録車の販売は0.8%増の329万台であったのに対し、660cc以下の軽自動車の販売は、7.6%増の227万台となり過去最高を記録、国内自動車販売全体に占める軽自動車の比率は40.1%と、これも歴史上初めて40%の大台を超えました。メディア等では、軽自動車への市場シフトを声高に報道しています。ただ、本当に日本の自動車市場はここまで軽自動車に傾いているのでしょうか。
販売台数の推移を見てみますと、軽自動車販売は、2013年までダイハツが7年間に渡って首位を獲得して来ました。ただ、ダイハツが首位になる前は、永らくスズキがトップに君臨していました。その王者スズキを、トヨタグループのダイハツが引きずり落としたのが2007年でした。以来、7年間に渡ってダイハツが1位の座を維持していたのですが、2014年暦年でスズキが8年振りに1位の座に復帰しました。今年3月までの年度ベースでも1位の座を狙っていることは確実でしょう。
しかしそれにしても、2014年12月の数値には違和感を覚えます。スズキの軽自動車販売台数は前年同月比何と51.8%増加、ダイハツも39.6%増となりました。2014年3月末の消費増税以来、想定以上に落ち込んだ登録車の販売に比べ、軽自動車の販売は相対的には堅調に推移していましたが、それでも前年同月比狭いレンジでプラス・マイナスを繰り返してきました。
それが12月に突然40-50%増とはおかしな動きです。スズキ・ダイハツ以外のメーカー、例えばNシリーズで頑張っているホンダの軽自動車販売は、12月は27%減、日産も3%減でした。いかにスズキとダイハツが突出しているかがわかります。
当然この数値は、2014年末にスズキとダイハツが1位の座を争って、販売競争を繰り広げた結果です。2014年暦年のスズキの軽自動車販売合計は13.9%増の709,083台、ダイハツは7%増の706,288台、その差僅か2,795台の僅差。最後の最後まで販売競争を繰り広げた結果であるのは明らかです。勿論、自然体で争った訳ではありません。所謂、“自社登録”による台数の嵩上げです。
(2に続く。本シリーズは全6回です)