朝鮮半島情勢ー金正恩の真の狙いとはー
.経済  投稿日:2015/4/25

[田村秀男] 【財政主導の経済拡大路線に転換せよ】~円安・株高で日本の地位低下、防げず~


 

田村秀男(産経新聞特別記者・編集委員)

「田村秀男の“経済が告げる”」

執筆記事プロフィール

 

日銀の異次元金融緩和による最大の成果は円安・株高だが、アベノミクスはそれでよいはずはない。円安が進む中で、日本経済は国際的に見れば凋落(ちょうらく)に歯止めがかからないどころか、拍車がかかる。株高では実体経済が大きくならない。

日本の2014年の国内総生産(GDP)成長率は実質でマイナス0.025%に落ち込んだ。名目では1.6%のプラスだが、2%の消費者物価上昇をもたらす消費税率の3%引き上げ期間は9カ月であることを勘案すれば、消費税増税による物価値上がり分だけが名目GDPを増やしただけである。

ドル建てで名目GDPの国際比較してみたら、もっと愕然(がくぜん)とさせられる。

14年では米国の17.4兆ドルに対し、日本は4.04兆ドル、中国は10.4兆ドル、ドイツは3.5兆ドルである。10年にわずかながら日本を上回った中国は、4年後には日本の2.2倍と大きく水をあけた。東日本大震災があった11年、日本は6.04兆ドルだったが、実に2兆ドルも減少したことになる。経済がほとんど成長せず、円相場が55%も安くなったためである。

党中央の成長目標に合わせて各地の党幹部が鉛筆をなめて集計する中国のGDP統計はでたらめに違いないが、ドルベースの数値は国際社会で独り歩きする。

6月末設立が予定されるアジアインフラ投資銀行(AIIB)は中国共産党主導であり、運営は不透明きわまりないにもかかわらず、欧州主要国を含め57カ国が創設メンバーに名を連ねた。背景には、いずれGDP(名目値、ドル建て)で米国を抜くかもしれないという中国のイメージがある。「膨張する中国」と「萎縮」する日本の構図のもとでは、日本と同様、AIIB参加に慎重な米国だっていつ中国に籠絡されるか分からない。

中国を取り巻く国際社会の現実を直視すれば、アベノミクスがとるべき今後の選択は明らかだ。ともかく名目GDPを伸ばさなければならないが、名目成長率が円安の進行速度に追いつけないなら何にもならない。現行水準以上の円安進行をやめ、成長促進策に全力を挙げる。

つまり、円安をもたらす金融量的緩和に偏したアベノミクスを立て直す必要がある。黒田東彦日銀総裁はインフレ目標2%達成に向け、追加緩和のカードを温存しているが、もう一段の円安によって物価を上げるというなら、日銀の自己目的達成のためでしかない。

ただし、GDPを大きくする責任は日本の場合、中央銀行よりも政府にある。米国の場合、連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和で株価を引き上げると、消費と設備投資が増えるし、物価も上がるので、GDP名目値は増える。日本の場合は株価によるGDP押し上げ効果はないわけではないが、極めて弱い。

金融政策以上に財政の役割が重要になるのだが、政府は消費税増税という緊縮策をとったあとも、円安・株高をよいことに、財政面からの経済拡大策の論議を怠っている感がある。メディアも相変わらず財務省の財政再建論法に乗せられている。

円安・株高だけでは中国に太刀打ちできない。AIIB問題を機に、日本は目覚め、財政主導の経済拡大路線を打ち出すべきだ。

 

 


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