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.政治,.社会  投稿日:2015/8/3

[相川俊英]【茨城県つくば市、スポーツ施設建設にノー】~住民投票で反対圧倒的多数~


相川俊英(ジャーナリスト)

「相川俊英の地方取材行脚録」

執筆記事プロフィール

こんなに大差がつくことを誰が予想していただろうか。8月2日に実施された茨城県つくば市の住民投票である。市が計画する総合運動公園事業の賛否を問う住民投票は、誰もがビックリ仰天の結果となった。賛成が1万5101人に対し、反対はその4倍以上の6万3482人にのぼった。いずれにしても僅差になるものと思われていたが、ふたを開けてみたら有効投票の8割以上が市の計画にノーを突き付けたのである。

この結果に衝撃を受けたのがつくば市である。なかでも計画を主導してきた市原健一市長は「このような結果になるとは思ってもいなかった」とがっくり。そして、「正確な情報が市民に届いていなかったと感じる」と無念そうに語っていたが、認識がズレているのではないか。行政側が市民ニーズをきちんと受け止めずに計画を進めてきたことのあらわれとみるべきだ。

住民投票の結果に法的拘束力はないが、あまりの大差に市原市長は「計画の白紙撤回も考えざるを得ない」と述べた。だが、計画を引っ込めたとしてもそれで首長としての責任をクリアすることにはならないのではないか。

つくば市の総合運動公園の整備計画は、約46へクタールの土地に総合体育館や第二種公認陸上競技場など11のスポーツ施設を10年かけて集中整備するものだった。総事業費は約305億円にのぼり、市民の間から「施設や事業費があまりにも大きすぎる」といった不安や批判の声が上がった。住民投票の実施を求める市民グループが結成され、署名集めとなった。住民投票条例制定の直接請求を受けた市議会が今年5月、賛成反対の二者択一での住民投票の実施を決定して現在に至ったという次第だ。

住民投票の実施の前に地区ごとに懇談会が開催されることになった。市側が計画の内容や意義などを説明し、市民グループも見解を述べることになった。一般の市民が賛否双方の主張を直接聞ける場を設定したのである。

懇談会の場で双方の考え方の違いが鮮明になった。例えば、事業の財源についての捉え方だ。市側は、総事業費305億円のうち補助金が46%、地方債が49%、残りが一般財源だと内訳を説明し、市の年間の負担額は一般会計の1%未満にすぎないと訴えた。大きな負担ではないので心配無用という主張だ。これに対し、市民グル―プは「補助金はあてにならないし、将来に借金を残すのは少子高齢化時代に大きな負担となる」と主張した。

また市民グープは他市の運動公園との比較資料を作成し、つくば市の計画の問題点をあぶり出した。観客席の多さなどから「高いレベルの競技の観戦の場」の提供になっており、市民が望む「手軽にスポーツを行える場」の提供になっていないと本質を突いたのである。

こうした双方の主張のどちらに説得力があったかは、賛否の票数に如実にあらわれている。住民から遊離した政治・行政が自信満々で打ち出す施策ほど、住民ニーズから遠く離れたものになりがちなのである。

(この記事は【茨城県つくば市、スポーツ施設建設で住民投票】~総合運動公園計画総事業費305億円、一般会計の約4割相当~ の続きです)

※トップ画像:出典  つくば市総合運動公園を考える市民の会 facebook 

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