参議院選挙で問われない日本の問題①「日本病」解決と経済再生

西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
【まとめ】
・参議院議員選挙の問題は、日本経済の再生について「どうやって再生する」の議論がないこと。
・「日本病」は先送りした「重度の適応障害」だっ。
・解決のために雇用の流動化と産業構造改革、雇用規制についての緩和検討が必須。
参議院選挙、外国人問題が争点化している。不満を抱える多くの日本人にとっては、我慢の限界だということだろう。正確には、ルールを守らないでいいと思っている一部の外国人がメリットを享受し、結果的に優遇されている。外国人富裕層や企業が土地やマンションを買い占めること、消費税や健康保険などルールの穴をついて得をすること、観光地で我が物顔に振る舞うこと、日本人が苦しいのに一部エリートに恩恵をあたえること、集団で暴れているのに抑制できないことなど、一部の人たちの行動ではあるが、日本人の感情に火が付いたというところだ。ただし、外国人問題、減税、物価高問題にしても、対症療法的な政策であり、大事なのは日本経済の再生について「どうやって再生する」の議論がないというのが参議院議員選挙の問題なのだ。
第一に、減税・給付金、物価高対策、賃上げにしても、前提となる経済が再生しないと持続的にできない。第二に、経済政策としても、AI推進、産業振興など、どの党も代り映えがない政策提案しか出せていない。本当の問題は「日本病」の解決策を見いだせないことだ。
■日本病とは?
日本経済が抱えているのは「日本病」である。低所得・低物価・低金利・低成長、海外からは「日本化」、Japanificationと呼ばれている。ああはなりたくないという恐れから、日本の不況は世界の研究テーマになっている。1人当たりGDP、平均賃金、労働生産性、仕事の満足度、やりがい、企業の競争力など世界をリードどころか、OECD各国の中でも劣っている現状にある。技術レベルは世界でも有数だが、IT、DX、人材育成、イノベーションにも完全に出遅れ、権威主義的組織風土がまだ企業競争力やイノベーションを阻害している。本来議論され、実行されるべきなのは、個人の創造性を促し・デザイン思考を進めイノベーションをどう起こすのか、起業をどのように推進していくのか、失われた30年間の変わらない大企業優先・業界団体の企業風土をどう変革し、公平公正な競争環境を作るのか、業法の規制緩和をどう進めるのか、雇用の流動化で産業構造改革をどう促すのか、海外のプラットフォーム企業の寡占化をどう防止するのかなどなど、このあたりが明確にされてこなかったし、取り組みが不十分であった。
日本病は、過去の経済的成功体験から抜け出せないまま過度に失敗を恐れて現状変更を嫌い、先送りした「重度の適応障害」だったといえる。政治レベルでは、超長期的な戦略と方針を決められないまま進んでしまった。既得権益で過度に優遇された人たちを説得してある程度我慢してもらう、行動変更してもらうべきなのに、それができず、空気を読みすぎて、改革の先送りを続けてきた。企業団体献金をする企業、いわば既得権益の業界利益のいうことを聞くだけ、それに沿った政策を進めるだけで、業界の再編などには手を付けられない、どん詰まりの状況だ。具体的な政策運営では、金融緩和と円安政策を進めたことが、日本企業の技術革新力を喪失してしまった。こうした状況の中、社会と国民のほうはどうだったのか個人レベルでは、組織に滅私奉公するトップダウン型の関係性の中で染みついた受け身体質・自己犠牲体質が変えられず、意識改革できず、未来への不安で思考停止状態が続いてしまった。

【参照】筆者作成
別に責任を追及したわけでもないが、「失われた30年」の責任ある立場にあった政治家、政策担当者はその場において合理的な選択をとったのだろうか。疑問だらけである。
■日本病解決のためのターンアラウンド
競争力はもちろん、SDGsランキングも、社会の指標もすべてが低い。企業がしっかり賃上げを行い、それを政府がバックアップする、法人税を上げるなど、まっとうな政策をとることが大事だろう。そして、国際競争力のあるビジネスを育成しないといけないということに尽きる。自動車産業もトヨタはまだしも日産はああいった状態だ。家電は見る影もない。モノづくり産業も。世界に競争力のある企業や産業支援しか道はない。そのためには、旧態依然とした産業構造改革をしていく、補助金や助成金の見直し、法人税増税を進めていくべきだろう。

【参照】筆者作成
日本経済をターンアラウンドする、再生の視点として、多くの人たちが言わないこととしては第一に大企業への法人税増税である。国民に減税を実行するなら、財源確保のため法人税や富裕層への増税は避けられないだろう。これまで株高が続いて優遇されて過ぎたのだからそこは仕方ない。ちなみに、今回の公約において明確に共産党やれいわ新選組は提案している。
第二に、雇用の流動化と産業構造改革だろう。雇用規制についての緩和検討も必須だ。小泉さんが問題提起して世論の反発を食らったこともあり、あまり議論がされなくなった。セイフティーネットをしっかり作って、新しい産業に雇用を移動させていくことに向き合わないといけない。
トップ写真)参議院選挙の街頭演説を聞く人々
©︎Japan In-depth編集部




























