身近に忍び寄る帯状疱疹の恐怖

福澤善文 (コンサルタント/元早稲田大学講師)
【まとめ】
・帯状疱疹の患者が若年層でも急増している。
・とにかく発症から72時間以内の早期発見、早期治療が重要。
・接種制度対象者に限らず、若年層もワクチン接種で予防を願う。
帯状疱疹の患者が急増している。子供時代に水疱瘡にかかり、治癒後、体内にそのウィルスが潜み、大人になって免疫力が弱くなり、そのウィルスが暴れだして帯状疱疹が発症すると言われている。その際、神経に沿ってウィルスは移動し、皮膚に達して、痛痒さを起こし発症する。
50歳以上の発症率が高いと言われているが、20代から30代の働きざかりの若年層で発症するケースもこの数年は増えているそうだ。10年くらい前から水疱瘡にかかる。子どもが減少したため、おとなが自然な免疫強化を得る機会が減少したこと、ストレスや生活習慣の乱れなどが原因としてあげられている。
特に、コロナワクチン接種開始後やコロナ罹患後、免疫力が低下し、症状が現れ、皮膚科を訪れて帯状疱疹の診断を受ける人が多いようだ。医師によれば、コロナワクチンによる発症も多いと思うが、公には言えないそうだ。
この数年、テレビでも帯状疱疹のワクチンのCMが増え、65歳以上に限定した帯状疱疹の定期ワクチン接種制度が2025年4月に始まった。この対象者は年度末年齢が65歳以上で区分年齢に該当する人、並びに免疫不全の機能障害のある60~64歳の人だ。妙な話ではあるが、自治体により助成額が違う。また、任意接種者のうち、50~64歳の人に対する補助の有無も自治体により違うので、居住地区管轄の自治体のホームページも参考願いたい。
筆者の家内も2011年に発症した。親の自宅介護、そして、仕事を抱えながら介護関連の手続きで厚労省、東京都とのやりとりなどのストレス、過労からの発症であった。不運にも、某大学病院の皮膚科医の「帯状疱疹ではない」との誤診により、その後、痛みが長引く結果となった。帯状疱疹の診断を受け、72時間以内に治療薬を服用するなり、治療を開始すれば1週間ほどで治癒できたはずだが、知らずに放置したために症状が悪化、帯状疱疹後神経痛を発症して、その痛みは実に10年にも及んだ。
更に近年、コロナ罹患後に再発したが、その時は間に合って治療薬を飲んで比較的短期間で治癒した。
帯状疱疹が厄介なのは、発疹が出た場所で症状が違うことだ。最初はお腹周りに出たことで肋間神経痛に悩まされた家内は、数年後、顔に発疹が出て、この時はひどい頭痛と目の痛みを訴え、救急搬送された。いわゆる三叉神経痛で、治ってからも視力が弱まり、しばらく神経眼科とペインクリニックのお世話になった。顔に発疹の跡が残ってしまったのもかなり気にしていた。その数年後、コロナワクチン接種後に太ももに発疹が出たときは仙腸神経がやられ、腰痛や膀胱炎に悩まされて泌尿器科、整形外科にもかかっていた。この帯状疱疹後神経痛は実に厄介だ。治療薬が無い。神経ブロックで一時的に痛みは緩和されるが、痛みが完全に収まることはなく、直すまでに時間と忍耐が必要となる。
帯状疱疹は皮膚科か内科の管轄だが、これまで書いたとおり、発疹の出た場所、症状によっては他の科にもかからなければならず、痛みを抱えながらの通院も大変になる。
「痛みがあったらすぐに医療機関を受診しましょう」とか、「発症したら安静に」とか言われているが、痛みが出るころには最初の3日間を過ぎてしまっている場合が多いし、帯状疱疹かどうかわからないことも多い。発症が2回目、3回目ともなると片側だけの前駆痛(発疹が出る前に神経に沿って痛みや痒み、ぴりぴり感がでる)で気づく場合もあるらしいが、3日以内に受診する人は少ないと皮膚科の医師は言われる。とにかく早期発見、早期治療が重要なのだ。
予防接種があるのだから、ワクチン接種制度対象者に限らず、特に働きざかりの若手の方々も是非受けて予防願いたいものだ。これも1回の接種で5~7年間有効の比較的安価な生ワクチンと、2か月間隔で2回接種する必要がある10年持続する不活化ワクチンの2種類がある。後者は少々高価だが、長期間痛みに苦しんだり、さまざまな医療機関にかかったりすることを考えたらかえって安上がりなのではないだろうか。もし体に痛痒さが出たら、とにかく迷わず皮膚科へ飛び込むことだ。
トップ写真:帯状疱疹の写真素材




























