[植木安弘]【外国人テロ戦闘員2万人?】~ISIL(イスラム国)に引きつけられる人々 1~
植木安弘 (上智大学総合グローバル学部教授)
「植木安弘のグローバルイシュー考察」
「ISIL(イスラム国)」に加わっている外国人戦闘員の数が以前推測されていた1万5千人から2万人を超えたとの分析がイギリスのシンクタンク、「過激化と極端な暴力研究センター(ICSR)」から1月末に発表された。外国人戦闘員が一番多く出ている地域は中東だが、西欧やロシアからもかなりの数の戦闘員が参加している。中東では、チュニジアが一番多く1,500人から3,000人、続いてサウジアラビアが1,500人から2,500人、モロッコとヨルダンが1,500人、レバノンが900人で、中東全体では約1万1千人と過半数を超える。ロシアからは800人から1,500人、中央アジアのウズベキスタンが500人、トルクメニスタンが360人で、他の旧ソ連の共和国も含めると総数約3,000人となる。中国からも300人と推定されている。
西欧の中ではフランスが最も多く1,200人、英国とドイツが500人から600人、ベルギーが440人、オランダが200人から250人で続いている。米国とカナダはそれぞれ約100人と見られており、欧米合わせると約4,000人で、全体の5分の1を占める。
戦闘員の数は各国政府の統計を基にしているが、明確にシリアやイラクに渡ったとの確証がない場合もあるため、統計にはかなりの幅があるところも多い。また、外国人戦闘員の総数は通算であって、そのうち死亡者が全体の5%から10%あり、自国に戻った人が10%から30%いることから、実際にシリアとイラクで戦闘に従事している総数は15%から40%少ないことになる。
戦闘員の宗教的背景までは公表されていないが、イスラム教徒が多いことは用意に推測される。ただ、イスラム教徒以外でも「イスラム国」のプロパガンダに共鳴して参加している戦闘員もいることは知られている。
シリア紛争では多くの外国人戦闘員がシリア政府側と反政府側双方に加わっている。政府側の場合は例えばレバノンのヒズボラがシリア内にいるシーア派支援を目的として義勇軍を送ったが、アサド政権維持が目的であることは明白である。そして、その背後にはイランがいることも知られている。
反政府勢力の場合には、特にアルカイダと連携しているヌスラ戦線やイラク・シリア・イスラム国(ISIS)といった過激組織に外国人戦闘員が多くみられる。2014年6月にISISがイラクの第二の都市モスールを占領し、バグダッド近郊までその支配を拡大して「イスラム国」を樹立宣言して以来、中東地域や中央アジア、東南アジア、ヨーローッパの過激化組織や個人が公に「イスラム国」に忠誠を誓うケースが多くみられるようになった。3月12日にはナイジェリアのボコ・ハラムの忠誠を受け入れている。そして、多くの外国人戦闘員が「イスラム国」に引き付けられ参加している。
(本稿は、【外国人テロ戦闘員の3分類】~ISIL(イスラム国)に引きつけられる人々 2~に続く。このシリーズ全2回)