2017総選挙ファクトチェックプロジェクト
国際  投稿日:2015/3/17

[植木安弘]【外国人テロ戦闘員の3分類】~ISIL (イスラム国)に引きつけられる人々 2~

file0001066060124
Pocket

植木安弘 (上智大学総合グローバル学部教授)

「植木安弘のグローバルイシュー考察」

プロフィール執筆記事

 米国当局の推計によると、「イスラム国」は月平均1,000人程度の外国人戦闘員を引き付けているという。では、どうして「イスラム国」は多くの外国人戦闘員を引き付けるのであろうか。

先ず、国家樹立宣言がある。イラク北部からシリア西部にまたがる国家の樹立宣言は領土を持つ国の誕生となり、「イスラム圏」の拡大の基礎となる。7-8世紀にイスラム圏が東はインダス河畔まで、北はトルクメニスタンまで、西は北アフリカを経てスペインまで延び、大帝国が設立された。そのような征服の歴史を再現するベースが出来たことになる。コーランでもイスラム教の宣揚と拡大が述べられていることから、領土の拡大がイスラム圏の拡大にも繋がることになる。

コーランには、「不信仰者たちには力でもって臨み、神の道のために戦い….」といったくだりがある。これを文字通り解釈すると、不信仰者を敵とし、武力をもって戦うということになる。預言者ムハンマドの言葉は神の言葉であり、その神の言葉を布教するために領土を拡大するということになる。「イスラム国」は異教徒とシーア派を敵としており、異教徒、特にキリスト教徒つまり欧米諸国を「クルーセーダー」と位置づけ、「クルーセーダー」からの侵略に対抗し「イスラム国」を守るために戦闘員が必要だとの論理になる。

コーランの教義やシャリーア法に忠実なイスラム原理主義国家建設を目指すことを標榜していることも引き付ける要因となる。グローバリゼーションの急速な拡大の中で、西側的価値観に対抗する価値体系を再構築することが目的となる。イスラム教自体は歴史の変化に合わせてコーランやその解釈書であるハディースなどを通じてより現実的な教義体系を形造ってきたが、そのような世俗主義を排し、イスラム教の原理主義に立ち戻ろうというアピールである。

さらに、テロ行為や捕虜や人質の殺害をマスメディアやソーシャルメディアなどを通じて公開することにより、力の誇示を行い、西側世界に対抗する勢力としての力を持つことをアピールする材料としている。アルカイーダによる9・11の同時テロ事件はテロ組織の力の誇示の典型的なものだったが、「イスラム国」による公開処刑や殺害の残虐性は恐怖を植え付けることにより、自らの力の優位性を保つ効果を狙っている。

ISIS、そして「イスラム国」はソーシャルメディアを巧みにプロパガンダだけでなく外国人戦闘員をリクルートするツールとして巧みに使っている。米国当局の分析によると、毎日9万に及ぶツイッターや他のソーシャルメディアを使ったコミュニケーションが行われているという。「ダビーク」という70-80ページにおよぶ雑誌もこれまで7冊オンラインで出している。外国人で広報技能を持つ人達が増えたせいか、最近の出版物は以前のものと比べてかなり巧妙なものになっている。

外国人戦闘員の動機を体系的に分析したものは無いが、各種事例から読み取れるものは幾つかある。「イスラムを守る」という教条主義的タイプや勢力拡大に乗じようとする機会主義的タイプ、さらに、自国での社会的差別観や孤立感からの解放をイスラム原理主義に求める個人解放主義的タイプや失業や貧困のため誘惑される誘惑的タイプなどが考えられる。「イスラム国」の勢力が維持あるいは拡大されればされるほど、外国人戦闘員を引き付ける力も強くなる図式である。

(本稿は【外国人テロ戦闘員、2万人?】~ISIL(イスラム国)に引きつけられる人々 1~の続きです。このシリーズ全2回)

 

 

Pocket

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."