[イ・スミン]【韓国“MERSとの戦い”、終息はいつ?】~超一流病院のお粗末な対応~
李受玟(イ・スミン/韓国大手経済誌記者)
目に見えないウイルスとの戦いがいつの間にか1ヵ月をはるかに上回った。ソウルの近くの小都市、平澤(ピョンテク)のある病院でスタートしたMERSは韓国の最高の病院といわれる三星(サムスン)ソウル病院を拠点として、ここだけで、91人を新たな患者リストに追加した。
遅くて不十分だった初期の防疫でおよそ20人が亡くなった後、世論の強い非難を受けた政府はコントロールタワー(編集部注:管理本部)を整備して患者が出た病院を緊急に閉鎖するなどの強力な措置を行った。
そして新たに就任した黄教安(ファン・ギョアン)首相がMERSとの戦争の指揮を務めた。 最近はMERSの防疫費用を含め、閉鎖された病院に支給する緊急資金に至るまで、予算を急いで編成する対応にも乗り出した。
そのおかげだろうか。6月28日から7月1日までに新たな患者は発生しなかった。マスコミは嬉しい気持ちを隠せず「MERSの終息」に関する予測を出した。182番の患者を最後に4日間患者が出ていないし、死亡者の数も増えなかったからだ。
しかし、シャンパンの栓をあまりにも早く開けてしまったかもしれない。今月2日から4日まで3日間に三星ソウル病院の看護士と医者など医療陣の感染が続いた。 5日には癌の治療のため、先月この病院を訪問した(患者132番の配偶者)まで患者リストに名を連ねた。「終わり」を叫びたくても不可能な状況だ。
MERSのような伝染病の場合、最大で潜伏期の二倍の期間に患者の発生がなければ終息を宣言する方式が主に活用される。だが、患者が新たに発生したらまた最初に戻る。
退屈な戦いが続きかねないという予測が出ると、政府は三星ソウル病院をMERS戦線から除外する強気の姿勢を置き始めた。その措置に従って現在、三星ソウル病院に入院していたMERSの患者12人たちは国立中央医療院とボラメ病院などの国で指定した隔離ベットに移された。
また政府はこの病院の感染管理者に医療陣が着用する個人の防護服の着用法を改めて教育した。これは先月に開かれた国会の緊急委員会に出席したこの病院の感染内科の課長が病院の責任を追及する質問に「三星じゃなく、国家がMERSの攻撃で破られた」という傲慢な答えをしたことを考えると、とても皮肉な状況だ。
政府の関係者は“三星ソウル病院の多くの医療陣がMERS患者に露出してから隔離され、残った人たちの業務の負担が重くなったため、患者たちを移すことにした。続いて弱点を示した三星ソウル病院を徹底的に管理することがMERSの終息を繰り上げる道”と語った。つまり終息のキーは三星ソウル病院が握っているという。
このように屈辱的な結果は三星ソウル病院が自ら招いた。感染管理レベルを最高に高めた6月13日以後もこの病院ではMERSウイルスの露出が続いた。政府は防具の着用がうまくいかなかったか、または脱衣の過程で感染された可能性があると見ている。
これに対して三星ソウル病院の側は患者数が急増し、医師と看護士の労働負担がエスカレートし、対応が十分できなかったという苦しい説明をした。はるかに多くの患者を診療してきた国立医療院などでは起きていないのに。
一方、この病院の責任者であるイ・ジェヨン三星電子の副会長は先月23日記者会見で「患者さんたちを最後まで責任を負って治療するつもりだ」と謝罪した。結局、彼のこの言葉は守れない約束となってしまった。「MERSの終息」とともに超一流を自称してきた病院のこれからが気になる。
トップ画像/出処:サムスンソウル病院HP