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.政治  投稿日:2026/1/30

勝利ばかりではない新首相の早期解散・総選挙


 樫山幸夫(ジャーナリスト、元産経新聞論説委員長)

 

 

【まとめ】

・総選挙が公示され、舌戦がスタートした。衆院解散から投票まで異例の短期決戦だ。

・高市首相就任からかぞえても投票まで、わずか3か月余りだった。

・新首相が時を置かず解散・総選挙を断行した前例は、与党の勝利ばかりではなかった。

 

 

■ 就任8日後の解散、石破内閣は過半数割れ

 昨年10月21日に就任した高市首相にとって衆院解散、総選挙投票日まではそれぞれ95、111日。

 高市内閣発足に先立つこと1年あまり、2024(令和6)年10月1日に就任した石破茂首相が解散したのは同月9日。投票日は27日という短期間だったが、結果は自民が一挙に67議席を失い、衆参両院で過半数を失う結果となった。

 石破首相は野党の協力で綱渡りの政局運営を強いられ、2025年7月の参院選でも過半数に届かず退陣に追い込まれたのは記憶に新しい。

 その2年前に明るみに出た自民党の政治資金不記載問題などでの逆風が収まらなかったことが敗北の大きな原因のひとつだった。本人にとっては無念な結果だったろう。

 石破首相の前任、2021(令和3)年10月4日に指名を受けた岸田文雄首相は就任10日後、衆院の任期満了が1週間後に迫っているにも関わらず、解散を強行した。

前任の菅義偉内閣が不人気だったこともあって、自民党の議席大幅減が予想されたが、結果は15議席減で安定多数を維持。勝利とは言えないにせよ、敗北を最小限に食い止めた。

 この結果が幸いして、一時は岸田長期政権を予測する向きが少なくなかった。

 

■ 鳩山ブームで与党大勝

 鳩山由紀夫首相ではない。

古い話だが、いまも語り草になっているのはその祖父、鳩山一郎首相よる解散・総選挙だ。

 保守合同前の1954(昭和29)年12月10日に官邸入りした一郎氏は翌年1月24日、衆院を解散、総選挙に打って出た。結果は与党、日本民主党(当時)が61議席増の185議席で勝利。

吉田茂前首相率いる自由党は68議席減の112議席で、民主党とそのまま議席数が入れ替わった格好となった。

 就任直前の公職追放、吉田茂氏との確執などで宰相ポストに就くのが遅れに遅れたことへの同情もブームにつながった。

 筆者は後年、この選挙で社会党右派から出馬した元候補(落選)の話を聞く機会があった。

 「私は三重の選挙区から立った。首相が遊説に来ると、こちらの運動員までもが〝鳩山が来た〟と言って見に行ってしまってね。街頭演説ができなくて困った。鳩山ブームは大変なものだった」―。

 このときの民主党勝利が契機となって同年、保守合同が実現、自由民主党が誕生した。 

 

 安保騒動、テロに関わらず勝利

 混乱した社会情勢、テロの横行のなかで、新政権が勝利したのは1960(昭和35)年の選挙だ。

 〝革命前夜〟を思わせた日米安保条約改定をめぐる騒乱のあと、7月に登場した池田勇人内閣は、経済中心の新政策で国民の信を問い、国内の空気を一新しようと3か月後の10月、衆院を解散した。

 その直前、野党第一党、日本社会党(現在の社民党)委員長で国民に人気のあった浅沼稲次郎氏が東京・日比谷公会堂で演説中、演壇に駆け上った右翼青年に刺殺されるという衝撃的な事件が起きた。

 警備の不備など政府への批判が出るかと予想されたが、選挙結果は自民は13議席増。弔い合戦の社会党も23議席と大きく議席を伸ばした

 池田内閣はそれ以後、首相が病を得て退陣するまでの4年間、「所得倍増」「高度成長」路線を推進、経済大国の基礎を築いた。

 

■ うわすべりに終わった角栄人気

 新首相による衆院解散が意外な結果に終わったのは1972(昭和47)年12月の総選挙だ。

 この年7月、〝今太閤〟などといわれ大衆人気が高かった田中角栄首相が「日本列島改造論」を掲げて登場。

9月には懸案だった日中国交正常化を成し遂げ、意気揚々と選挙戦に臨んだが、ふたを開けてみれば自民が26議席減の大敗。

大勝した前回をさらに上回る強気の候補者擁立が裏目に出た。社会党、共産党が躍進した。

 田中内閣は2年余りの短命に終わり、退陣後に角栄首相が世界を震撼させたロッキード事件に連座したのは周知のとおりだ。 

 

■ 今回と惨敗の前回との共通点「解散の大義

 政治状況が異なるこれら過去の解散・総選挙を一律に比較するはできないが、今回の選挙と前回の総選挙の共通点がひとつ。

 石破前首相は、就任直後は、衆参の予算委員会などの場で野党と論戦を交わした後、国民の審判を仰ぐと言明していたが、それ実行しないうちに解散してしまった。

 今回、高市首相は、予算審議などの日程を考えれば解散・総選挙で政治空白を作ることはできないと繰り返していた。

 解散については首相のウソが許されるというのは永田町の暗黙の了解だが、永田町政治の打破がいまの永田町の課題であることを考えれば、

解散の大義をめぐって批判された前内閣の敗北は、同様に解散の大義を問われている高市首相にとって気になるところだろう。

 

写真)衆議院選挙

出典)GettyImages/ Tomohiro Ohsumi

 

 




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