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.国際  投稿日:2026/1/30

日中関係、真実の時(上)高市発言は貴重だった


古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授) 

古森義久の内外透視」 

 

【まとめ】

・日中関係の悪化は、高市氏の発言が原因ではなく、日本の政策表明に対する中国側の理不尽な行動によるものである。

・中国は、自らの支配の正統性のために「抗日」を名目とした構造的な反日政策を一貫して続けている。

・中国は、日本が基盤とするアメリカ主導の国際秩序を否定し、中国が主体となる新たな世界秩序の構築を目指している。

 

日本と中国との関係はついに「真実の時」を迎えた。中国が日本に対して、共産党政権の本質といえる対日敵性をむき出しにしたと同時に、日本側も高市政権を主軸に官民ともにその中国の反日の敵性を客観的に認識したようだからだ。つまりは日中関係を両国が本音で語るようになった。だから高市首相の台湾有事の日本への影響についての発言は貴重だった。中国側の年来の日本への敵性をわかりやすく陽光の下にさらけだしたからだ。

 

 中国側はまず大阪駐在の総領事が高市首相を指して、「その汚い首を斬ってやる」という暴言を発した。その直後から中国は日本の国のあり方への悪口雑言を洪水のようにぶつけてきた。日本はまだ軍国主義だとか、中国を侵略するとか、さらに中国人の日本訪問を抑え、レアアースなどの戦略関連物資の対日輸出を制限するとも宣言した。中国は日本の国家や国民の根幹を敵視し、否定するというふうなのだ。

 

 私はこの認識を過去30年ほどの北京、東京、ワシントンの三拠点での考察からまとめている。その考察では日本側で中国と深くかかわる人たちこそ、その中国の反日敵性についての明言を避けてきた。だがその敵性がいまや日本国民の多数派にとって、きわめて明白となったのだ。この変化は日本の対外政策という点からみれば、健全きわまる現象である。日本側では大手メディアも含めて「高市発言によって日中関係が悪化した」と評する向きがあるが、とんでもない。日本の首相の日本国の従来の政策表明に対して中国が理不尽な行動をとったからこそ両国関係に荒波が立ったのだ。

 

 では中国側の日本に対する敵性とはなにか。具体例を五本の柱にまとめて報告しよう。

 

 第一は中国共産党の抗日の名の下での構造的な反日政策である。

 

 中国共産党政権は建国宣言の1949年から77年後の現在にいたるまで日本の軍国主義勢力を打倒し、中国人民全体を解放したという「歴史的な実績」を最大の偉業としてきた。2025年9月の天安門広場での「抗日戦争勝利記念集会」はその象徴だった。中国共産党こそが戦前の日本が代表した世界のファシズム勢力を打倒して、中国人民の勝利をもたらしたと主張する。歴史上の事実とは異なる主張である。だが中国共産党はこの偉業のために中国人民を永遠に統治する資格を有するという政治誇示と一体になった主張なのだ。

 

 だから中国共産党のその永遠の統治の正統性のために、日本はいつまでも悪者でなければならない。そのための反日政治宣伝を党是、国是として一貫して続けるのだ。中国の国定教科書では日本については小学生の段階から「南京大虐殺」といった戦時の残虐行為だけを教える。中学、高校でも同様である。戦後の日本の平和主義志向や対中友好の巨額の経済援助などにはまったく触れない。

 

 中国共産党政権は国内各地に日本軍の残虐行為を過大に誇示する巨大な博物館や陳列場を保持し、毎年、盛大な記念行事を催す。盧溝橋、柳条湖、南京などでの毎年の反日の記念行事には国家首脳級の要人が出て、共産党の日本打倒の業績を祝う。実際には中国共産党勢力が中国内部で日本軍と戦ったという実績はきわめて少ないのである。

 

 だが中国の一般向けの映画やテレビでも日本軍の残虐行為を主題にした作品ばかりがこれでもか、これでもかと放映される。米欧の専門家たちは中国共産党の反日を「中国人民を日本の軍国主義から解放し、全国を統一したという誇りを独裁支配の永遠の継続の正統性とする」と分析する。だから中国共産党政権のDNAには反日が刷り込まれていると述べても過言ではないのだ。

 

 中国の日本への敵性の第二は日本が帰属する国際秩序の否定である。

 

 日本は戦後のアメリカ主導の国際秩序の中で平和と繁栄を享受してきた。自由民主主義や個人の人権尊重、法の支配という理念に始まり、国際連合、さらにはアメリカ主体の欧州やアジアでの安全保障同盟などが柱である。具体的には北大西洋条約機構(NATO)や日米同盟である。

 

 だが中国は習近平国家主席がアメリカ主導の国際秩序の打破を目指す。つまり日本が生存してきた秩序に反対するのだ。習氏は国家主席に就任後まもない2013年4月に排除すべきイデオロギーとして「西側の民主主義の宣伝」や「人権の普遍的な価値の宣伝」をあげた。「九号文件」と呼ばれる重要声明だった。日本を含む西側の国際秩序の否定だった。

 

 中国共産党政権がどのような国際秩序、つまりグローバル統治を目指すのかの確定は難しい。だが米国や日本が帰属してきた国際秩序の打倒という方針は確実である。習近平主席はより明確な形で中国が志向する国際秩序について語った。2018年6月、外交関連の主要人物をすべて北京に集めての「中央外事工作会議」だった。

 

 習主席はこの会議で主要演説で以下の骨子を述べた。

 

 「中国はグローバルな統治を刷新するための道を指導していかねばならない。同時に中国は全世界における影響力をさらに増していく」

 「中国は近代的で強力な社会主義国として国際社会の責任ある一員となり、多くの開発途上国を天然の同盟軍として、新時代の中国の特色ある社会主義外交思想を作りあげてきた。この路線をさらに継続し、強化する」 

 「新たな国際秩序の構築のために中国主導の巨大な経済圏構想『一帯一路』や『アジアインフラ投資銀行(AIIB)』をさらに発展させる」

 

 上記の趣旨をみただけでも、日本が参加してきた国際秩序の否定であることが明白となる。つまり中国が求める国際秩序とはま中国が主体となり、社会主義を基調とすると宣言しているからだ、しかも「一帯一路」構想などは日本が明確に参加を拒否してきた対象なのである。

 

(下につづく)

 

#この記事は日本戦略研究フォーラムのサイトに寄稿した古森義久氏の論文の転載です。

 

写真)習近平主席

出典)GettyImages/ Pool

 




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