[千野境子]【総選挙2回連続勝利の落とし穴】~自民若手議員による報道圧力問題~
千野境子(ジャーナリスト)
物議を醸した自民党若手・中堅議員たちによる勉強会「文化芸術懇話会」の「報道圧力」発言。言論の自由云々以前の内容で、発言者がただの人なら、無視すればよいだけの話だったかもしれない。しかし国会議員だからこそ問題となり、処分もされた。谷垣禎一幹事長が「与党政治家は言いたいことを言いつのればいいという責任の浅いものではない」と述べたのは正鵠を射ていたし、本当は野党政治家だって言いたいことを言いつのればいいものではない。
やっぱり、と思ったのは出席者に2年生議員が多かったことである。昨年12月とその2年前の平成24年の総選挙で自民党が2回とも290議席を超す大勝をした結果で、それまで選挙と言えば風まかせ、大勝の次は大敗で2年生議員の誕生が難しかった。
今年3月に「内外ニュース東京懇談会」の講演で谷垣幹事長はそのことに触れ、郵政解散で大量に誕生した新人は自民党が政権を失った時には11%以下しか残らず、一方、この時大量に誕生した民主党新人は、政権を失った時にはさらに低い6%を切る残留率だったと語っていた。これをもってしても、そもそも政治家が腰を据えて政治に取り組めるような状況でなかったことが良く分かる。
しかし連続勝利で状況は変わり、自民党は1年生議員の約89%が2年生になった。あぶくのように出来ては消えるチルドレン状況にようやく歯止めがかかり始めたわけだ。
先の講演で谷垣氏が「(結果を)大事にして、きちっと選挙区に根を張り、根を下ろし、選挙区の声をしっかり吸い上げることができるように、若い議員たちが努力し、われわれは彼らを成長させていかなければならないと思っているわけです」と語ったのは、従って至極当然のことだった。しかし「自民党は時々悪い癖を出します。大勝利した後は時々、中が緩んでくることがあるのです」とも自戒していた。
案の定、不安は的中した形だ。連続勝利は有権者が振り子のような政治を終わらせたく、それには自民党以外に選択肢がなかったという民意を、谷垣氏は長年の経験で分かっていたからこその自戒だっただろう。
ここは、若手議員は気を引き締め研鑽し、国政に精進して支持を固めなくてはいけないのに、親の心子知らずの「勉強会」だった。もっとも親も子育ての責任を免れない。
マスコミは勉強会の一部を取り上げているとか、実際は中身のある議論も行われたとの反論はあるかもしれない。また「平和安全法制」論議の報道が、あまり褒められたものでないことことに私も同意する。しかしだからこそ一層丁寧な議論が必要で、軽率な一言は結局、すべてを台無しにしてしまう。
「メディアを懲らしめる」ために「不買運動」や「広告締め付け」するのは、言い古された安易なマスコミ論であり、それ自体がメディアに関する自らの勉強不足を物語る。同好の士が集まって溜飲を下げるだけの勉強会になっては、知的後退を招くだけだろう。