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.経済  投稿日:2020/12/6

第3波も「ものかは」の人たち


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・年末のかき入れ時、コロナ自粛で飲食店の客足が落ち始める。

・それでも集団で大声で話す人達が後を絶たない。

・結局、個々人が「消毒・ディスタンス・マスクで小声」守るしかない。

新型コロナ感染症拡大が止まらない。そして「Go To キャンペーン」が標的にされている。そんな中、私たちがすべき事は他にもあるのではないだろうか。

都内の飲食店に聞くと、12月に入ってからキャンセルが相次いでいるという。「Go To Eat」で少し弾みがついてきたかな、と思っていたところに冷水をかけられた状態で、レストランオーナーの顔は暗い。心から応援したいと思うが、かといって現下の状況で大人数で会食するわけにも行かないし・・・と思っていたらすごい場面に遭遇した。

先週金曜日、東京港区赤坂の和食店でのことだ。知人と午後7時に待ち合わせをし、カウンターに座った。長いカウンターには我々ともう一組の4人のみ。口コミ点数も高い店なのでそれなりに静かかかな、と思い予約したのだ。

しかし、席に付いて直ぐに気づいた。妙に騒がしい団体がいる。振り返ると、後ろのテーブル席コーナーに12人ほどの女性ばかりの団体客がいた。このご時世、忘年会かなにかなのだろうか、10人以上の宴会というのも珍しいが、既にアルコールが入っているのか、まだ7時だというのにとんでもないボリュームで嬌声を上げている。もちろんマスクなどしていない。

カウンターから直線距離で2メートル、筆者の席までは4,5メートルは離れていたとは言うものの、あまりの笑い声に何度か振り返ったが、全く気にする気配もない。その大宴会は延々1時間は続き、8時過ぎた。カウンターの中の総料理長とおぼしき男性は全く気にする気がない。

とうとう知人がたまりかね、自分が直接言いに行く、と言いだした。それもどうかと思ったので、筆者が料理長に「いくら何でもこれでは他のお客さんも気になって仕方が無い。少し声を抑えて、くらい言っていいのでは?」とやんわり頼んだ。料理長が厨房の裏に消えた後、フロアの若い男性がその団体に何か言いに行った。そして聞こえてきたのは笑い声と「しーっ!しーっ!」とお互いに大声を注意し合う声だった。8時半を回ったころ、その集団は店を後にし、ようやく店内に静寂がもとった。

▲写真 イメージ 出典:Pxhere

果たして彼らは感染が怖くないのだろうか?もしくは自分だけは絶対感染しないと信じているのだろうか?

新型コロナ感染症のやっかいなところは、無症状陽性者がいることだ。自覚症状がなくとも、感染しているということは、他人に感染させる可能性もあるということだ。

厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」にも以下の記述がある。

問3 無症状病原体保有者(症状はないが検査が陽性だった者)から感染しますか。

 一般的に、肺炎などを起こすウイルス感染症の場合は、症状が最も強く現れる時期に、他者へウイルスを感染させる可能性も最も高くなると考えられています。

 しかし、新型コロナウイルスでは、症状が明らかになる前から、感染が広がるおそれがあるとの専門家の指摘や研究結果も示されており、例えば、台湾における研究では、新型コロナウイルス感染症は、発症前も含めて、発症前後の時期に最も感染力が高いとの報告がされています。

  したがって、人と人との距離をとること(Social distancing: 社会的距離)、外出の際のマスク着用、咳エチケット、石けんによる手洗い、アルコールによる手指消毒、換気といった一般的な感染症対策や、十分な睡眠をとる等の健康管理を心がけるとともに、地域における状況(緊急事態宣言が出されているかどうかやお住まいの自治体の出している情報を参考にしてください)も踏まえて、予防に[1] 取り組んでください(予防法のQ&Aを参照ください)。

自分自身と自分の大切な人の健康を守るため、そして感染を拡げないためにやるべき事を私たちは第1波、第2波で学んだはずだ。しかし、人間というのは忘却の生き物なのか、もうそんな記憶はどこかに飛んで行ってしまったようだ。

▲写真 イメージ 出典:Pixabay

感染が怖ければ外に出るな、という極論は意味がない。というより、経済活動が完全に止まれば、どのみち全員、生活に窮することになる。それを防がねばならないから政府もロックダウンをしないのだ。

結局、私たちが外食する際の選択肢は、1つしかない。

「手指を清潔にし、距離を保ち、静かに食べる」

お店側もせっかく来ているお客さんに「静かにして」とは言いにくいだろう。しかし、上記のことが守れない人達は、間接的に営業妨害していることに等しい。「金を払っているんだから何をしてもいいだろう」ということにはならないのだ。

新型コロナに限らず、ウイルスと人類との戦いは続く。私たちはある意味、試されている。

トップ写真:イメージ 出典:Pxhere




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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