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.国際  投稿日:2025/12/25

右傾化への政治潮流、さらに拡大するか【2026年を占う】中南米


山崎真二(時事通信社元外信部長)

【まとめ】

・2025年は中南米で左派から右派への政権交代が相次いだ。

・エクアドル、ボリビア、チリ、ホンジュラスでは今後、トランプ米政権との関係進展が確実視される。

・南米の大国ブラジルの大統領選の行方に大きな注目が集まる。

 左派政権が歴史的敗北-ボリビア   

 2026年の中南米は左派から右派政権への交代が引き続き起こるかどうかが注目点である。この地域では2025年に右派政権が相次いで誕生した。麻薬組織絡みの犯罪が急増していたエクアドルで4月、強硬な治安対策をとなえる右派のノボア大統領が左派候補の追撃をかわし、再選された。ノボア大統領はトランプ米大統領と親密な関係にあるといわれる。

 未曾有の経済危機に見舞われたボリビアでは20年間続いた左派政権に終止符が打たれるという「南米史上に記憶される歴史的転換」が起きた。8月の大統領選第1回投票で左派候補は早々に敗退し、10月の決選投票には中道右派と右派の2人の候補が進出。中道右派のパス氏が当選した。パス政権は経済再建を目指し11月スタートしたが、外交面で対米関係改善に向かうのは確実と見られる。

 チリは長らく政治・経済が安定し「南米優等生」といわれていたが、最近は不法移民の流入や治安悪化に苦しんでいる。12月の大統領選決選投票では右派野党のカスト候補が与党左派連合の対立候補を破った。カスト政権は2026年3月に発足する。カスト氏は「チリのトランプ」との異名を持つ。

 11月末行われた中米ホンジュラスの大統領選では右派野党のアスフラ前テグシガルパ市長(67)が当選した。アスフラ氏はトランプ大統領から支持されており、2023年にホンジュラスが断交した台湾との外交関係復活を主張している。1月に大統領に正式就任する予定で、ホンジュラスでも左派から右派政権へのシフトが実現する。

 コロンビアでは依然、左派が優勢

 こうした右傾化への”ドミノ “現象の背景としては、左派政権が治安悪化や経済不振への有効策を打ち出せなかったことに加え、汚職スキャンダルや移民流への有権者反発が挙げられる。26年も中南米でこの現象が続くかは数カ国で行われる大統領選の行方次第だろう。

 2月コスタリカで大統領選が行われる。中南米で最も安定した民主主義体制を持つとされてきた同国だが、このところ犯罪増加による治安対策が課題になっているほか、政権の汚職疑惑も浮上するなど不安材料も目立つ。最新の世論調査では中道右派の現政権の路線を継ぐとされる女性候補が支持率でトップだが、第1回投票では決まらず4月の決選投票に進む見込み。

 また、4月にはペルーで大統領選が行われる。40人前後の大統領候補による混戦が予想されるが、現地メディアによれば、保守系右派のアリアガ前リマ市長と中道右派で故フジモリ元大統領長女ケイコ氏の二人が有力候補。ペルー大統領選は第1回投票で有効投票の過半数を獲得した候補がいなければ上位2者による決選投票が6月行われる。

 コロンビアでは2022年、元左翼ゲリラのペトロ氏が同国史上初の左派大統領として政権の座につき、国内改革に意欲的に取り組んだものの、政権内の政治スキャンダルや治安情勢の悪化で失速。コロンビア人移民の強制送還などをめぐりトランプ米政権との対立が激化し、内外に波紋を広げた。いまのところ、5月に予定される大統領選はペトロ大統領の後を継ぐセペダ上院議員が優勢とされている。ただ、右派候補との決選投票に持ち込まれる公算大との見方もある。

 米は西半球重視で積極介入との見方も

 中南米の政治潮流を占ううえで最も注目されるのは南米の大国ブラジルで26年10月に予定される大統領選。焦点はルラ左派政権の路線が継承されるか否か。ルラ大統領は社会福祉拡充、環境保護政策に力を入れるとともに親中外交を進めてきた。ルラ氏は大統領選への出馬はまだ公式には表明していないが、4回目の大統領職への意欲は強いとみられる。

 右派陣営ではクーデターを企てた罪で有罪判決を受け服役中のボルソナロ前大統領から後継指名を受けた長男のフラビオ・ボルソナロ氏やフレイタス・サンパウロ州知事らの出馬が予想される。いずれの右派候補に対してもルラ大統領が勝利するとの世論調査もあるが、決選投票に持ち込まれ右派陣営が結束すれば勝負は互角と予想する見方もある。

 一方、ルラ大統領が再選されれば、すでに緊張関係にあるブラジルと米国との関係が対立激化へと向かう可能性が指摘されている。トランプ政権が外交・安全保障政策で西半球重視の方針を打ち出したことからブラジルだけでなく、他の中南米諸国にも介入してくるとの見方が、中南米専門家の間で広がっている。周知の通り、トランプ政権は麻薬密輸対策を理由にベネズエラ沖に空母などを派遣し、反米左派のマドゥロ政権に対する軍事的圧力を強めている。トランプ政権の中南米対応も26年の同地域の政治潮流を左右することになるだろう。

(了)

写真)ブラジル・ルラ大統領 2025 年12月10日 プラナルト宮殿

出典)Ton Molina/Getty Images




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