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.国際  投稿日:2026/9/17

「米州の盾」に積極協力の中南米右派政権-メキシコとブラジルは不参加


執筆者:山崎真二(元時事通信社外信部長)

【本稿のポイント】

・中南米の麻薬組織壊滅を目指す米国主導の「米州の盾」連合が一層強化される見通し。

・中南米の右派政権の間では自国領内での米軍との合同作戦を受け入れるケースが増えている。

・中南米の2大国ブラジルとメキシコは米国による介入を警戒し、「米州の盾」には参加していない。

米国主導の対麻薬軍事連合「米州の盾」への協力が、中南米の右派政権に広がっている。8月に発足したコロンビアのデラエスプリエジャ政権は直後に参加を表明し、国内での米軍との合同作戦を認めた。ホンジュラスやグアテマラも容認したと伝えられる。一方、ブラジルとメキシコは米国の介入を警戒し、参加していない。元時事通信社外信部長の山崎真二氏が解説する。(Japan In-depth編集部)

米南方軍に「西半球統合任務部隊」

 トランプ政権は今年3月、中南米の麻薬カルテルの壊滅を目指す軍事・政治連合「米州の盾」を設立した。米軍が中南米各国との間で麻薬組織に関する情報を共有し、作戦面で連携しようという構想である。現在の構成国は米国を含め19カ国。アルゼンチン、チリ、エクアドル、エルサルバドル、ホンジュラスといった親米右派政権の国が中心メンバー。中南米の2大国であるブラジルとメキシコは入っていない。この「米州の盾」の下で米軍が参加国と軍事協力を一層強化する計画が先ごろ公になった。パナマ市での会合でへグセス米国防長官は米軍と参加国による軍事訓練と演習がパナマ国内で行われたと述べるととも、双方の軍事訓練や作戦を一層強化するため、米南方軍に「西半球統合任務部隊」が創設されたことを明らかにした。

米軍との合同作戦実施へ-コロンビア

 これまで米軍はカリブ海や太平洋沿岸で麻薬組織に属するとみられる船舶を攻撃しているが、へグセス長官の発言からは今後、米軍が中南米各国の領内でも、それらの国々の治安部隊と合同作戦を行い、海上から陸上へと作戦を拡大する意図がうかがえる。同長官の意向に最も積極的に応じたのは8月に発足したばかりのコロンビアのデラエスプリエジャ右派政権。同国は左派のペトロ前政権がしばしばトランプ政権対立したこともあり、3月の「米州の盾」設立会合にも招かれなかったが、デラエスプリエジャ政権は発足直後に「米州の盾」への参加を表明、国内で米軍との合同軍事作戦を実施することを決定した。

コロンビアはコカインの一大生産地である上、米国がテロ組織に指定し、麻薬密売関与も疑われる左翼ゲリラ「民族解放軍」(ELN)が暗躍していることから、へグセス長官はデラエスプリエジャ政権の決定を高く評価したもようだ。コロンビアだけでなく、ホンジュラスやグアテマラも自国内で米軍が合同作戦を行うことを容認したと伝えられる。エクアドルでは既に3月から国内の麻薬組織に対する米軍との合同作戦が進んでいる。

メキシコへの圧力強まるか

 ブラジルのルラ左派政権が「米州の盾」に参加しない理由としては米国による中南米支配を強く懸念していることが挙げられる。ブラジルでは昨年、ボルソナロ前大統領がクーデターを企てた罪などで起訴されたが、盟友といわれるトランプ大統領が「魔女狩り」と非難、ブラジルに対し50%の関税を課したことなどから、ルラ政権はこれまで以上に米国によるブラジルへの介入を警戒している。

一方、同じく「米州の盾」に参加していないメキシコは「麻薬組織対策で米国と情報共有や訓練などで協力はするが、領土と主権は不可侵という立場は絶対譲れない」(メキシコ外務省高官)とし、メキシコ領内への米軍の駐留は容認しないと主張している。やはり米国の介入を警戒していることがうかがえる。実際、トランプ大統領はメキシコの麻薬カルテルを取り締まるため米軍の派遣を提案したものの、シェインバウム同国大統領から直ちに拒否されたといわれる。だが、駐メキシコ外交筋は「米国への麻薬流入で最大の供給地となっているメキシコに対し、トランプ政権がこのまま引き下がることは考えられない」と述べる。メキシコの有力紙「レフォルマ」も「『米州の盾』の主要な対象はメキシコだ」とし、今後、米国からの圧力が増すだろう」と警告している。

【よくある質問(FAQ)】

Q.「米州の盾」はいつ、どこで設立されたのですか。

 A.2026年3月7日、トランプ大統領がフロリダ州ドラル(マイアミ)に中南米12カ国の首脳を招いて開いたサミットで設立が決まりました。軍事面の実務を担う下部組織として「米州反カルテル連合(A3C)」が置かれ、首脳級の出席がなかった5カ国を含め、米国と中南米17カ国で発足しています(ジェトロ)。

Q.「西半球統合任務部隊」とはどんな組織ですか。

 A.米南方軍が2026年8月4日に発足させた統合任務部隊で、英語名はJoint Task Force Western Hemisphere(JTF-WHEM)です。フランシス・L・ドノバン南方軍司令官の指示による設置で、指揮官はケビン・ジャラード海兵隊少将。米州反カルテル連合のパートナー18カ国と軍事能力を統合し、作戦の指揮統制を一元化する役割を担います(米戦争省、2026年8月5日)。

Q.パナマで行われた演習「PANAMAX」とは何ですか。

 A.パナマ運河の防護を主眼に、パナマが主催国、米南方軍が主管して行う多国間演習です。2026年は11日間の日程で、19のパートナー国が参加しました。海上での小型艇の運用訓練やヘリコプターの習熟訓練などが行われています(米南方軍、2026年8月5日)。

(本稿のリード、FAQの文責:Japan In-depth編集部)

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出典:Gabriel Aponte / 特派員/ GettyImages




この記事を書いた人
山崎真二時事通信社元外信部長

 

南米特派員(ペルー駐在)、ニューデリー特派員、ニューヨーク支局長などを歴任。2008年2月から2017年3月まで山形大教授、現在は山形大客員教授。

山崎真二

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