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.政治  投稿日:2026/9/12

「国際法は日本の生存戦略」山尾志桜里氏 「理想主義ではない」


本稿のポイント

  • 山尾志桜里氏は、国際法と法の支配を「日本が現実的に生き延びるための戦略」と位置付けた。
  • 日本は力だけで生き残れる超大国ではなく、法の支配を掲げることが国力とソフトパワーになると指摘した。
  • 防衛力の強化と国際法の擁護は二者択一ではなく、両方を語る政治が必要だと訴えた。

 

国際法は、余裕のある国が掲げる理想論なのか。それとも、力だけでは自国を守れない日本にとって、現実的な安全保障戦略なのか。ICCの赤根智子所長と面会し、中東を訪れた山尾志桜里氏は「日本が現実的に生き延びるために、国際法は手放せない」と語った。「法の支配は理想論」という見方が、どの瞬間に「日本の生存戦略」へ反転するのか。赤根所長への制裁、日本政府の沈黙、二人の日本人所長――別々に見える論点が一本につながる22分台から、ぜひ本編で見てほしい。

▶本編動画はこちら:「帰朝報告 ICC赤根所長面会・中東訪問」

法の支配は「きれいごと」ではない

「力だけで生き延びていけるスーパーパワーではない日本を、どう生存させるのか」。22分18秒ごろ、山尾氏はそう問い、法の支配を「生存のパーツ」の一つと表現した。

軍事力や経済力を持つことは当然必要だ。しかし、巨大な力を単独で行使できない日本が、大国の意思だけで国際秩序が動く世界を受け入れれば、自らも不利益を受ける側になり得る。国の大小にかかわらず共通のルールが適用される環境を守ることは、日本を守ることでもある――これが山尾氏の論理だ。

この主張は、日本政府の国家安全保障戦略とも無関係ではない。同戦略は、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値を維持・擁護する形で安全保障政策を進めるとしている。法の支配は外交上の装飾ではなく、すでに日本の安全保障政策の柱に置かれている。

国際法には、国内法のような単一の警察権力があるわけではない。それでも、条約、国際機関、裁判手続き、各国の外交を積み重ね、大国にも共通ルールを守らせようとする。山尾氏が語る「生存戦略」とは、理念を唱えるだけでなく、日本がルールを維持する側に立ち続けることを意味する。

ICCとICJ、二人の日本人所長

番組では、ICCの赤根智子所長に加え、国際司法裁判所(ICJ)の岩沢雄司所長も日本人であることが話題になった。赤根氏は2024年にICC所長に、岩沢氏は2025年にICJ所長に選出された。

ICCは、集団殺害犯罪や人道に対する犯罪、戦争犯罪などについて個人の刑事責任を問う常設裁判所だ。一方、ICJは国家間の法的紛争を国際法に基づいて解決し、国連機関などから求められた法律問題に勧告的意見を示す。役割は異なるが、いずれも力ではなく法で重大な問題に向き合う国際秩序の中核である。

二つの国際司法機関のトップを日本人が務めていることを、山尾氏は偶然ではなく、日本が敵をつくらず、法の支配を重視してきたことへの国際社会の期待の表れだと見る。日本には、米国を国際秩序につなぎ留めながら、力では大国にかなわない「ミドルパワー」と連携し、法の支配を支える役割があるという。

山尾氏が重視したのは、日本と同じく、力だけでは大国に対抗できない国々との連携だ。米国との同盟関係を保ちながら、ミドルパワーの国々をつなぎ、米国も法の支配の枠内にとどめる。単に大国を批判するのではなく、国際秩序を持続させる調整役になることが、日本のソフトパワーと国力につながるという。

この場面では、赤根氏個人を守るべきかという問いが、日本は国際社会でどんな国として存在するのか、という問いへ変わる。

米国への沈黙は日本を守るか

山尾氏は、日本政府が米国による他国のICC関係者への制裁に明確な反対を示さなかった一方、結果として赤根氏も制裁対象になったと指摘し、「極めて外交判断の失敗だった」と批判した。

摩擦を避け、同盟国に合わせ続けることは、短期的には安全に見える。しかし、その姿勢が国際法秩序を弱めれば、長期的には日本自身を脆弱な立場に置く。番組終盤、山尾氏は「国際法を倫理だけで語るのではなく、日本の生存の中に位置付けて語る政党が欲しい」と訴えた。

反米論ではない。日米同盟を基軸にしながら、米国に国際法と法の支配の側へ踏みとどまるよう働きかける。その役割こそ、日本の存在意義になり得るという提案である。

山尾氏は、制裁対象のICC関係者が締約国会議に参加できない事態を見据え、日本が安全な開催へ向けた調整の「まとめ役」を担うべきだと訴えた。制度が機能し続ける条件を整えるために、日本が具体的に動く。それこそが、法の支配を掲げる国の存在感になる。

防衛力と国際法は二者択一ではない

国際法を語れば理想主義、防衛力を語れば現実主義――その二分法を、山尾氏は退ける。「国際法を語りながら防衛力強化も語る。力がなければ、倫理も語れない」。防衛力と法の支配を同じ生存戦略の中に置くところに、議論の核心がある。

赤根所長への制裁から始まった対話が、なぜ日本の国家像と政党政治の話にまでたどり着いたのか。山尾氏が「国際法は手放せない」と結論づける1時間は、この対談の核心だ。

「力だけで生き延びられる超大国ではない日本」。防衛力と法の支配を一つの生存戦略として語る真意とは。安倍編集長との応酬を、ぜひ本編で確かめてほしい。

本編で見てほしい論点

  • 17分21秒~ 国連の場で日本の価値をどう語るか
  • 18分51秒~ ICCとICJの所長がともに日本人である意味
  • 21分13秒~ 制裁下でICC締約国会議をどう開くのか
  • 22分18秒~ 法の支配は日本の「生存のパーツ」
  • 1時間8分23秒~ 「国際法は手放せない」という結論

▶本編動画はこちら:「帰朝報告 ICC赤根所長面会・中東訪問」

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よくある質問(FAQ)

Q1.「法の支配」とは何ですか。

国家間の関係でも、力や威圧ではなく、合意された国際法やルールに基づいて問題を処理するという考え方です。

Q2.国際法を重視すれば、防衛力は不要になりますか。

なりません。山尾氏は、防衛力の強化と国際法の擁護を同時に語る必要があると主張しています。

Q3.なぜ国際法が日本の「生存戦略」になるのですか。

日本は単独の力で国際秩序を決められる超大国ではないため、大国にも共通ルールを適用させる国際秩序を維持することが、自国の安全と利益につながるという考え方です。

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写真)山尾志桜里氏

ⒸJapan In-depth編集部




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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