「未利用魚」が地域の名物に 勝浦発「ブルーバーガー」が紡ぐ藻場再生ストーリー
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【本稿のポイント】
・千葉県勝浦市では、海水温の上昇で活発化した未利用魚「ブダイ」などの食害により、局所的に藻場が消失する「磯焼けの兆候」が見られている。
・勝浦市藻場保全対策協議会が発足し、ブダイの駆除やドローンによる調査を実施。藻場の回復が確認され、0.4トンのCO₂吸収量でJブルークレジット認証を取得した。
・駆除したブダイを「勝浦ブルーバーガー」として商品化することで、藻場保全と未利用魚の有効活用、地域経済をつなぐ循環モデルの構築が進められている。
千葉県勝浦市の海で今、静かな異変が起きている。海水温の上昇とともに、近海に生息するブダイが活発化し、海藻を食べ尽くしてしまう「磯焼け」が局所的に発生しているのだ。藻場は海のCO₂を「ブルーカーボン」として吸収・固定化する機能を持つため注目される存在であり、その減少は日本が目指すカーボンニュートラルの実現にも影を落としかねない。東急不動産ホールディングスと勝浦市は包括連携協定を結び、駆除したブダイを廃棄せず「勝浦ブルーバーガー」として商品化、地元ゴルフ場のレストランで提供する取り組みを進めている。磯焼けの現場とブルーバーガーが生まれるまでを取材した。
■活発化した「ブダイ」が海藻を食い尽くす
千葉県勝浦市は、暖流と寒流の潮境に位置し、水深のある岩礁に海藻が根付くことで多様な海洋生物を育んできた海域だ。近年、その一部で、海水温の上昇により活発化したブダイなど植食性魚類の食害による藻場の消失が目立つようになっている。
ただし、勝浦地域全体で長期的かつ広範囲な磯焼けが発生しているわけではない。現時点では短期的かつ局所的な藻場の消失が見られる「磯焼けの兆候が見られている地域」という段階だという。

写真)健全な藻場(2026年2月、勝浦地先)
提供)千葉県

写真)磯焼けの兆候が見られる藻場(2025年12月、勝浦地先)
提供)千葉県
この課題に対応するため、2025年5月には新勝浦市漁業協同組合や勝浦漁業協同組合、勝浦市、千葉県関係機関、東急不動産などが参加する「勝浦市藻場保全対策協議会」が設立された。協議会は、新勝浦市漁協が管轄する興津海域に100m×100mの調査区画を活動区・対照区の2カ所設け、活動区でブダイなどの駆除を実施。ドローンによる空中・水中調査でカジメの分布や密度の変化を定量的に把握してきた(東急不動産プレスリリース)。
■藻場は「海の温暖化対策」、失えばCO₂吸収力も低下
勝浦でのブダイの駆除とモニタリング活動の結果、藻場の回復効果が確認され、0.4トンのCO₂吸収量として「Jブルークレジット認証」を2025年12月19日付で取得した。不動産会社が参画するプロジェクトとしては初の認証だという。

写真)全国で見られる藻場の衰退
(勝浦水産事務所に掲示されていたものを撮影)

写真)ブダイなどによる食害の痕跡が残る藻場(2025年12月、勝浦地先)
提供)千葉県
■勝浦に半世紀、地域事業者としての東急不動産の参画
東急不動産は勝浦で会員制ホテルやゴルフ場、別荘地を長年運営してきた地域事業者でもある。2026年1月29日には勝浦市と包括連携協定を締結。海業の推進や藻場の再生・保全のほか、観光活性化、移住定住促進、生物多様性保全・環境教育、防災・災害時支援など5つの分野で連携することで合意した(勝浦市との包括連携協定リリース)。
同社は2014年から太陽光や風力等による再生可能エネルギー事業「ReENE」を展開し、2024年には国内事業会社で初めてRE100(事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的な枠組み)を達成するなど、デベロッパーとしては珍しく発電事業に力を入れてきた実績がある。今回の藻場保全への参画も、その環境経営の延長線上にあると位置づけられる。
■廃棄されていた「未利用魚」が地元名物バーガーに変身

写真)駆除されたブダイ(2026年6月12日、浜行川漁港)
提供)千葉県
駆除したブダイは、これまで廃棄されるケースが多かった。東急不動産はこれを買い取り、食材として活用する仕組みを構築。開発されたのが、フィッシュバーガー「勝浦ブルーバーガー」だ。2025年10月1日から、東急不動産が運営する勝浦東急ゴルフコース内のレストランで提供が始まった。てりやき味と勝浦の郷土料理「さんが焼き」味の2種類があり、私は、てりやき味を食してみた。臭みなどは全くなくおいしくいただけた。食感はハンバーガーチェーンのフィッシュバーガーのパティとは少し異なるものだった。柔らかく食べやすいので、年配者や小さな子どもにもおすすめだ。
勝浦東急ゴルフコース支配人の坂本修一さんに聞くと、レストランに納入されるブダイのフィレをパティにする際、どのくらい細かくミンチにするかどうか、試行錯誤したという。ふわっとした食感を持たせるために少し粗いミンチにしているとのこと。昨年秋に提供開始してからお客さんの評判は上々だそうで、月110食出たこともあるという。
「売れ行きは上々です。今後はもっとメニューを増やしていきたいですね」と坂本氏は話した。

写真)勝浦ブルーバーガー
撮影)Japan-In depth編集部
■地元漁協とホテルが語る「駆除から消費へ」の好循環
漁協関係者にも話を聞いた。新勝浦市漁業協同組合の渡辺さんは、駆除したブダイが地域のホテルなどでフィッシュバーガーとして消費されることについて歓迎の立場だ。

写真)新勝浦市漁業協同組合 参事 渡辺浩則氏(2026年7月)
撮影)Japan-In depth編集部
「ブダイを駆除して、それが地域のホテルなどでフィッシュバーガーという形で消費されるのは嬉しいですね」
一方で、本業ではないブダイ漁にどこまで時間を割けるかという課題も残る。現時点では提供先が地元ホテルなどに限られているが、将来的に外部への販売を増やしていければ、より良い循環が生まれる可能性もあるという。
■磯焼け対策のモデルケースへ、広がる期待
磯焼けを防ぎながら、地域経済も回していく。ブダイの駆除から商品化、消費までを地域で完結させる勝浦の取り組みは、藻場減少に悩む他の沿岸地域にとっても一つのモデルになり得る。今後、東急不動産と勝浦市、地元漁協らがこの好循環をどこまで広げていけるかが焦点となる。

写真)ブダイを駆除する漁業者(2026年6月、浜行川沖)
提供)千葉県
よくある質問(FAQ)
Q.ブダイとはどんな魚ですか?
A.ブダイは暖かい海域を好む雑食性の魚で、海藻やエビ・カニ類を主なエサとする。近年の海水温上昇に伴い勝浦沿岸でも活発化。海藻を食べることで藻場減少(磯焼け)の一因になっているとされる。
Q.Jブルークレジット認証とは何ですか?
A.海藻など海の生態系によるCO₂の吸収・固定化効果をクレジットとして認証する制度。勝浦市藻場保全対策協議会の活動は、0.4トンのCO₂吸収量分の認証を2025年12月19日付で取得した。
Q.勝浦ブルーバーガーはどこで食べられますか?
A.2025年10月1日から、東急不動産が運営する勝浦東急ゴルフコース内のレストランで提供されている。1日10食程度の限定販売。
関連リンク
・不動産会社参画初の「Jブルークレジット認証」取得(東急不動産/PR TIMES、2026年1月27日)
・勝浦市と東急不動産株式会社の包括連携協定締結について(東急不動産ニュースリリース)
トップ写真)勝浦ブルーバーガー
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。












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