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.政治  投稿日:2026/9/10

「日本版ブロッキング規制を」山尾志桜里氏 米のICC制裁への対抗策を提言


本稿のポイント

・米国による赤根智子ICC所長への制裁は、一個人の問題ではなく、日本国内の企業活動や決済、さらには主権に関わる問題だ。

・山尾志桜里氏は、日本政府が米国の制裁に従わない国内企業を支えると明言し、「日本版ブロッキング規制」を検討すべきだと提言した。

・日本は沈黙を続けるのではなく、ICC締約国会議の安全な開催などで主導的な役割を担うべきだと訴えた。

米国から制裁を受けた国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長は、ハーグでいま何に直面しているのか。赤根氏と面会し、イスラエル、パレスチナを訪問した弁護士・元衆議院議員の山尾志桜里氏が、 2026-09-08 のJapan In-depthチャンネルで帰朝報告した。山尾氏が提起したのは、赤根氏個人の生活上の不便にとどまらない。外国政府の制裁を、日本国内でどこまで効かせるのかという、日本の主権そのものの問題だった。

▶本編動画はこちら:「帰朝報告 ICC赤根所長面会・中東訪問」

赤根所長の様子、制裁下でも続くICCの裁判、現地で働く日本人職員との対話は、本編冒頭からご覧いただきたい。

米国の制裁は日本国内にも及ぶのか

 

米国は 2026-08-18 、赤根所長とアブドライ・セイ上級法廷弁護士を制裁対象に追加した。日本政府は 2026-08-19 、「今回の措置は大変残念」とする外務報道官談話を発表。 2026-08-28 には茂木敏充外相が赤根氏と電話会談した。

 

制裁対象者は米国の資産を凍結され、米国の金融システムから遮断される。問題は、その影響が米国内で終わらないことだ。ドル決済や米企業との取引を抱える日本の銀行や事業者が、二次制裁を恐れ、制裁対象者との日本国内の取引まで停止する可能性がある。

 

山尾氏は、少なくともドルを介さない国内取引を守れるかが問われると指摘した。その上で日本政府は、「米大統領の制裁に日本企業が従わないことは、日本国内では違法ではない」と明言すべきだと主張する。政府が法的立場を示さなければ、企業だけに米国との摩擦や二次制裁のリスクを背負わせることになるからだ。

 

この議論は9分08秒ごろから急速に具体化する。日本の銀行は何を守れるのか。政府は企業の「後ろ盾」になれるのか。山尾氏と安倍宏行編集長のやり取りは、制裁が日常の決済に入り込む構造を浮かび上がらせていく。

「日本版ブロッキング規制」という提案

 

山尾氏がさらに提案したのが、「日本版ブロッキング規制」だ。外国法や外国政府による制裁の域外適用から、国内の企業や個人を守るための制度である。

 

EUには、第三国法の域外適用からEU域内の事業者を保護する「ブロッキング規則」がある。山尾氏は、その制度をそのまま移植する必要はないとしながらも、「自分の国の主権を守るツールとして、まず持っておきませんか」と問いかけた。

 

制度を持てば、実際に使うかどうかという外交判断を迫られる。それでも、使う場面が難しいことと、制度そのものが不要であることは別問題だ。米国だけでなく、中国などの大国が自国の法律や制裁の効果を国境の外へ及ぼそうとする時代に、日本は何を根拠に拒むのか。13分台からの議論には、制度の必要性と現実的な難しさの双方が凝縮されている。

「沈黙」は赤根氏を守らなかった

 

山尾氏は、日本政府がこれまで米国によるICC関係者への制裁に強い態度を示さなかったことも批判した。 2025-02-07 、多数のICC締約国が共同声明でICCへの揺るぎない支持を表明したが、その署名国に日本は入っていない。

 

赤根氏を制裁から守るために対米批判を控えたのだとしても、結果として赤根氏は制裁対象となった。山尾氏は「極めて外交判断の失敗だった」と述べる。他国のICC関係者が制裁された時に声を上げず、自国民が対象になってから協力を求めても、説得力を持ちにくいという指摘だ。

 

では、失われた信頼をどう取り戻すのか。山尾氏が挙げた一つが、ニューヨークで予定される第25回ICC締約国会議への対応である。制裁対象のICC関係者が米国に入国できない事態も想定し、日本が安全な開催に向けた調整の「まとめ役」を担うべきだと訴えた。

 

そして議論は、赤根氏をどう支えるかという問いから、日本が国際社会でどう生き残るかという問いへ進む。

 

「国際法を倫理だけで語るのではなく、日本の生存の中に位置付けて語る政党が欲しい」

 

日本は、力だけで生き延びられる超大国ではない。だからこそ法の支配は、きれいごとでも理想主義でもなく、現実的な国家戦略になる――。この結論に至るまでの山尾氏と安倍編集長の応酬は、文字だけでは伝わりにくい。赤根所長との面会で何を感じ、なぜ日本政府の対応を「失敗」とまで断じたのか。ぜひ本編で確かめてほしい。

▶本編動画はこちら:「帰朝報告 ICC赤根所長面会・中東訪問」

 

主な該当箇所

  • 9分08秒~ 制裁が日本国内の金融取引に及ぼす影響
  • 11分03秒~ 政府が国内企業を支えるために示すべき法的立場
  • 12分18秒~ 域外適用を遮断する制度の必要性
  • 14分16秒~ 「日本版ブロッキング規制」の提案
  • 15分51秒~ 日本政府の対応を「外交判断の失敗」と批判
  • 19分53秒~ 制裁下のICCと締約国会議
  • 21分25秒~ 日本が「まとめ役」を担うべき理由
  • 1時間08分23秒~ 「国際法は日本の生存戦略」

 

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FAQ

Q1.ブロッキング規制とは何ですか?

A.外国政府が自国の法律や制裁を国外の企業・個人にも事実上従わせようとする「域外適用」に対し、その効果を国内で遮断・抑制するための制度です。EUには第三国法の域外適用からEU事業者を保護する規則があります。

 

Q2.日本政府は赤根所長への制裁にどう対応しましたか?

A. 2026-08-19 、外務省は制裁を「大変残念」とする談話を発表しました。 2026-08-28 には茂木外相が赤根所長と電話会談し、ICCをめぐる状況について意見交換しました。

 

Q3.なぜICC締約国会議が問題になるのですか?

A.第25回締約国会議は 2026-12-07 から 2026-12-17 まで、ニューヨークの国連本部で予定されています。制裁対象者の入国や活動に支障が出る可能性があり、山尾氏は日本が安全な開催に向けて調整を主導すべきだと述べました。

 

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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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