[山田厚俊]【通常国会、順風満帆な運営に暗雲】~鍵はアベノミクスと人質事件~
山田厚俊(ジャーナリスト)
「山田厚俊の永田町ミザルイワザルキカザル」
執筆記事|プロフィール|Twitter|Facebook|Blog
1月26日、第189通常国会が召集された。会期は6月24日までの150日間だ。「緊張感を持って成果を出していく“改革断行国会”にしていきたい」
安倍晋三首相はこう語り、昨年末の衆院選で信任を得たアベノミクスの継続を強く推進していくことを宣言した格好だ。まずは、経済再生や地方創生対策を盛り込んだ平成26年度補正予算案と、27年度予算案の早期成立を目指すことになる。
与党は3分の2以上に当たる317議席を超える326議席を獲得し、さらに無所属の山口壮氏(兵庫12区)が自民会派に所属し、今後は同じく長崎幸太郎氏(山梨2区)も自民党入りは時間の問題だとされている。数の論理でみれば、順風満帆な国会運営が期待できるところだ。
しかし、自民党内では不安がうっ積しているという。自民党中堅衆院議員は語る。
「アベノミクスのメッキが剥がれてしまえば、支持率は急落し、安倍政権は一気に行き詰る。かといって、カンフル剤になるような施策は現時点で何も見えてこない」
有権者は、アベノミクスの継続を信任したとはいうものの、生活実感として上向いたという調査結果は皆無に近い。信任したというより、また政権を変えて混乱してしまうことを怖れた結果との見方だ。株価が下がり、不況に突入でもしたら、一気に安倍政権にノーが突きつけられるだろうと、前出の議員は不安を口にする。そして、イスラム国の邦人人質事件が暗い影を落とす。
「後半国会は集団的自衛権行使を可能とする安全保障関連法案の整備が焦点となるが、この事件を引き合いに出し、愛国心をてこに強引に進めようとすれば、さまざまなリバウンドが予想される。強気に攻める安倍首相だけに、それが“落とし穴”にならなければいいが……」(前出の議員)
慎重で丁寧な議論が求められている。