非主流派の直言、安倍首相に届くか?
山田厚俊(ジャーナリスト)
【まとめ】
・“四国三銃士”中谷元前防衛省、村上誠一郎元行革相、後藤田正純副幹事長が安倍自民を痛烈批判。
・強行採決、説明不足、暴言・失言に「危機感」抱いての行動。
・「党内での激論」、「人心一新」無くして自民の未来はない。
誰が言ったか、“四国三銃士”。自民党衆院議員の中谷元前防衛相(高知1区)、村上誠一郎元行政改革担当相(愛媛2区)、後藤田正純副幹事長(徳島1区)の3人のことだ。
中谷氏は、7月9日のTBS「時事放談」(7日収録)で、東京都議選の大敗を受けた安倍晋三首相に対し「政治家は人の意見を聞く耳を持つことが大事だ」と述べ、耳を傾けるべき5項目を「かきくけこ」で、「家内の言うこと」「厳しい意見」「苦情」「見解の異なる人」「こんな人たち」だと表現した。とりわけ、「こんな人たち」は、安倍首相が東京都議選の街頭演説で「やめろ」コールした聴衆を指さして言い放った言葉で、痛烈な批判として話題となった。
村上氏は、月刊『文藝春秋』のインタビューに応じ、8月号に掲載された。強引な国会運営や改憲提案を批判し、「人心を一新するしかない」と断じている。また、加計学園問題の舞台となっている愛媛・今治市は村上氏の地元。この問題についても疑問を呈している。
後藤田氏は3日、自身のホームページ(HP)で都議選で自民党惨敗について「民心が離れた党に都民が反応した。今の執行部を見ると仕方ない」と指摘。その執行部については、「私の安倍政権の反省についての街頭演説が、安倍批判をしたと、党幹部に伝わり私にクレームがきたこと」だと記した。
後藤田氏は「反省すべきは反省し、謙虚になるべきだとした上で、これまでの実績もみてほしいと訴えた。にもかかわらず、単なる批判として伝わった」と語った。
各氏が語る内容で共通している点は「危機感」だ。強行採決や不信への説明不足、そして暴言、失言といった稚拙なエラー。それが積もり積もって政権不信や安倍首相の信頼失墜を招き、直近の世論調査での支持率低下につながっているからだ。
かつて、自由闊達な議論を戦わせた自民党。その片りんをわずかながら見せている“四国三銃士”。彼らが単なる非主流の戯言で片付けられるなら、自民党の行く末は真っ暗だ。彼らの発言を機に、党内での激論を期待したい。
*Photo by Wiiii
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この記事を書いた人
山田厚俊ジャーナリスト
1961年、栃木県生れ。東京工芸大学短期大学部卒業後、建設業界紙、タウン紙の記者を経て95年4月、元大阪読売社会部長の黒田清氏が代表を務める「黒田ジャーナル」に入社。阪神・淡路大震災の取材に加わる。震災取材後、事務所から出向する形でテレビ制作に携わる。黒田氏死去後、大谷昭宏事務所に転籍。2002年から週刊誌で活動を始める。2009年2月、大谷昭宏事務所を退社。フリー活動を開始。週刊誌をはじめ、ビジネス誌、月刊誌で執筆活動中。