自民惨敗の夜にフレンチ。安倍首相の感覚に?
山田厚俊(ジャーナリスト)
「あの人の感覚を疑うね。今後の政権運営について意見交換するなら、もっと目立たない場所ですればいい。こういうことからして、国民感情と乖離していると指摘されるんだ」
こう語るのは、自民党関係者。かつて、ご意見番として鳴らした重鎮議員の秘書を長く務めてきた方だ。この関係者が憤慨する相手は、安倍晋三首相である。
7月2日、東京都議会議員選挙の投開票日。午後8時を回るとマスコミ各社は一斉に自民党惨敗、小池百合子都知事率いる都民ファーストの会圧勝を報じ始めた。
その中、安倍首相は、麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官、さらに甘利明前経済再生担当相とともに都内のレストランでフランス料理を食事しながら、会談したというのだ。
「食事を楽しんだ、というわけじゃない。メシを食うな、とは言わない。しかし、そんな悠長な感じで打ち合わせなんて、何も分かっていないと国民から見られても仕方ない」(前出・自民党関係者)
というのも、都議選最終日の1日、安倍首相はJR秋葉原駅前で街頭演説した際、「安倍辞めろ」コールが鳴り響いた。それに対し安倍首相は「こんな人たちに負けるわけにはいかない!」と叫んだのだ。騒然とする秋葉原。
聴衆の一人は、「とても一国のリーダーとしての演説とは思えない。有権者に向かって、あの言い方はあまりにも不遜。これじゃ、誰も自民党に投票しようなんて気にならないのでは」と、憤った。
結果はその通りとなったわけだ。豊田真由子氏の暴言・暴行問題、稲田朋美防衛相の「自衛隊としてお願い」発言問題、下村博文幹事長代行の「加計学園闇献金」問題といった国会議員の度重なる“オウンゴール”とともに、国会で安倍首相の加計学園問題に対する説明、共謀罪法案をめぐる拙速で強引な審議に有権者は疑問を抱いていた。にもかかわらず、さらに自ら聴衆に逆ギレしてみせたのだから、党内でも目を覆いたくなる「最終日」となり、結果は予想を超える惨敗となった。
それをフランス料理でのんびりと会合では、「もう政権末期どころの話じゃない。自民党自体が壊滅の危機だよ」(前出・自民党関係者)との嘆き節も無理からぬ話。いよいよ政局の季節到来ということか。
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この記事を書いた人
山田厚俊ジャーナリスト
1961年、栃木県生れ。東京工芸大学短期大学部卒業後、建設業界紙、タウン紙の記者を経て95年4月、元大阪読売社会部長の黒田清氏が代表を務める「黒田ジャーナル」に入社。阪神・淡路大震災の取材に加わる。震災取材後、事務所から出向する形でテレビ制作に携わる。黒田氏死去後、大谷昭宏事務所に転籍。2002年から週刊誌で活動を始める。2009年2月、大谷昭宏事務所を退社。フリー活動を開始。週刊誌をはじめ、ビジネス誌、月刊誌で執筆活動中。