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.社会  投稿日:2015/3/4

[芳賀由明] 【「NHK受信料ネットにも」日経報道の裏事情】~総務大臣が完全否定した理由~


芳賀由明(産経新聞社経済本部 編集委員)

執筆記事プロフィール

 

2月21日付日経新聞1面で報じられた「NHK受信料 ネットにも 総務省が見直しに着手」の記事に対して、高市早苗総務相が3日後の閣議後会見で、強い口調で「(あの記事には)びっくりした。有識者会議を立ち上げるということも含めて、何も決まっておらず、指摘のような事実はない」と完全否定した。

記事には、総務省がNHKのネットサービス拡大を踏まえ、パソコンなどネット端末を持つ世帯に納付義務を課す案や、テレビの有無に関わらず全世帯から徴収する案を検討しており、年内をめどに有識者会議を立ち上げると書かれていた。

NHKの受信料制度見直しは、NHKのインターネット番組配信サービスの課金問題が浮上して以来、課題となっており、総務省も見直しの検討に入っている。しかし、ネット利用者にも幅広く課金するかのような方向性は決まっておらず、情報提供者の意図が透けて見える内容だった。

同省幹部は「テレビを持たないネット利用者にも課金することはありえない」と記事内容を批判。高市総務相は「むしろ受信料の徴収が100%できていないことが問題だ。徴収率はいま74.5%で、まじめに受信料を負担している人と負担していない人の公平性に問題がある」と指摘。そのうえで、受信料制度を見直す方向性について「皆から公平に徴収ができて、受信料も結果的に下がるような方法がないか、という問題意識を持っている」と話した。

今後どう検討を進めていくかについては、「NHKの受信料は、国民の皆さんの幅広いコンセンサスが必要で、それを得ながら議論を進めていくべきだ」とし、拙速な〝情報戦〟を暗に批判した。

NHKの籾井勝人会長は昨年、テレビ放送のネット同時配信に向けて、ネット視聴者からも受信料を徴収したい考えを、新聞各社のインタビューなどで明らかにしていたが、徴収状況が不公平なままで、テレビを持たずにネット検索をする人にも受信料を課すことが受け入れられるとは考えにくく、総務省が火消しに躍起になるもの当然かもしれない。

まるで籾井会長の意を汲んだような記事だが、裏読みすれば「早めにつぶすためにアドバルーンをあげた」との声も霞が関で聞こえてくる。

 

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