[安倍宏行]【第1志望にこだわるな】~就活生への応援メッセージ~
安倍宏行(Japan In-depth編集長/ジャーナリスト)
「編集長の眼」
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この時期、就職に関する相談も多い。自分の半生を振り返り、幾つかのアドバイスを書いてみた。まず、第一に「志望にこだわらない」ということだ。よく学生は「第一志望はxxxです。」などと気軽に皆言うが、会社にしろNPOにしろ、組織なんて入ってみないとわからない。結婚と一緒で、相手と一緒になってみて初めて分かることの方が多いのだ。実際、ここ20年近く毎年大卒新入社員の3割が入社3年以内に辞めている(厚労省調べ)。
3年どころか、筆者の周りにも大企業に就職して半年で辞めた者や、内定をもらっていたがインターンの時期に何かが違う、と入社すらしなかった人もいる。“3年以内辞職“は確かに多い。翻って自分と同世代の友人らも2回どころか4回も5回も転職している者や自営になった者はざらである。つまり、就職して嫌だったら転職するか、起業すればいいのだ。そう考えれば、ある意味どこに入ったって今後の人生、そう変わりやしない。入るところより、入って何をするかが大事なのだ。
ただ、どこでもいいといっているのではない。少なくとも自分が身につけたいスキルがその会社で得られるかどうか、はじっくり考えたほうがいい。後は親が何をごちゃごちゃ言おうが気にしないことだ。
そう考えると次のアドバイスは「受ける企業を絞りすぎないこと」だ。どうせ入る前にその業界のことなんて100%わかりっこないのだ。先入観を持ってあの業界は自分に向きません、とか傲慢にもほどがある。とりあえず、食わず嫌いにならずに幅広いジャンルの会社を受ければよい。内定を取ったらどこに行くか、考えればいいのだ。絞りすぎはリスクが大きいので注意したほうがいい。
簡単すぎるアドバイスと思われるだろうが、要はあまり考えすぎないことだ。向き不向きなどということにとらわれず、入ったら自分がその会社や組織を変えてやる、くらいの気概を持って欲しい。相手もそれを期待しているのだ。ミスマッチなら、さっさとおさらばすればいい。会社なんて、自分がもっと大きくなるための力を得る場、もしくは技を磨く場と捉えればよい。
ちなみに筆者の場合、最初に入った自動車メーカーは第1志望でも何でもなかった。本当は商社マンになりたかったのだがそもそも第2次オイルショックの世の中でほとんどの企業が採用数を極端に絞り、どこを回っても鼻にも引っかけてもらえなかったというのが実際のところだ。釈然としない気持ちで入社したが、輸出部門に配属され、貿易に携われたことはラッキーだった。
その後会社が傾き、転職先を探した時も特に深く考えず、メディアに行こうかと思って尊敬する先輩の勧めで某テレビ局だけ受け、転職した。これも、会社が順風満帆なら転職しなかったかもしれないし、たまたまテレビ局が中途募集をしていたからこうなったまで、その先輩の勧めがなければ受けもしなかったかもしれない。人生なんてどんな偶然が作用するか予測不能だ。
そして気づいたら定年直前に起業している。今後のことも正直どうなるかわからない。だから人生は面白い。みんなも硬直的に考えないことだ。肩の力を抜いて、「明日は明日の風が吹く」もしくは“C’est la vie! (人生なんてこんなもんさ)”の精神でこの時期を乗り切ってほしい。
あなたの素晴らしい魅力とパワーは誰よりもあなた自身がわかっているはずだから。